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【エッセイ】 山の端

中央線から見える山の端がはっきりと見えてきたら、冬を感じずにはいられない。
夏の間は姿を消していた輪郭がまるで芸術の神様に描かれたかのようにくっきりと美しくなる。秋晴れした薄い水色の空に藍色の山の線。走りゆく建物の隙間から見えるその線を眺めては、一喜一憂する。あ、見えた!みたいな感じ。
幾つになってもこの習慣が抜けないので、きっと幾つになってもこうして走り去る車窓から山の端を眺めている気がした。お爺さんになってもお婆さんになっても。
電車から降りてふうっと深呼吸すると、少し冷たくて乾燥した空気が身体に流れ込む。どこからかパン屋のいい匂いがしたかと思えば、一瞬で走り去る電車の煽り風に吹き飛ばされる。ビューッと吹きつけた風の肌寒さを感じたらもう、冬はすぐそこ。

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