見出し画像

【小説】 w.or..d

連日の猛暑日から一点、雨が降った朝。今日も今日とて早起きした私は、久しぶりに雨音でホッとした。晴れの日も好きだけど、やっぱり雨の日も好き。植物たちもホッとしてる気がする。やっぱり暑すぎるのが苦手なのはどんな生き物でも共通らしい。
早起きは三文の徳なんてよく言われたけれど、早起きしすぎると徳がなくなるように思うのは私だけでしょうか。朝4時に起きて活動すると、いつの間にか9時頃には眠くて仕方ない。二度寝の誘惑に駆られながら、うつらうつらと書き物を進めていく。こんなことがあったとか、あんな風になりたいだとか。あれ、気がついたらお昼前になりそうで、どこか学校にいる。広いテラスガーデンでお茶をしましょうなんて言われるけれど、そんな時間はないと断っていたら戻ってきた。おかえり、現実。
12時を過ぎる頃にはあっという間にメールが飛び交うスピードが早くなる。ああだとかこうだとか。今日も元気に飛び回る。書いてきたものを見返してみたら、思わぬ誤植やら曲がり道やら文章が、踊ってる。夢を歩いた道筋のような文字がそこにはあった。
現実と夢との行き来を表す方法として、文字は最良の手段だと思う。でも、完全な形としては残らない。文字になる前の記号として羅列する蛇文字。蛇行する線が脳波の揺らぎを表しているかのような、不思議な形。「眠っていた時に書いた文字」展覧会、みたいなのがあれば面白いのに。どんな夢を見ていたのかとか、現実へ戻ってこようとする意思とのせめぎ合いとか、見てみたい。間違いなく、夢魔との戦いの痕跡がそこには残されているのだから。
「去年の過去問もらってきたよ」
唐突にピコンと光る携帯のロック画面に友人からのメッセージが踊る。そろそろ返信しなければ。
「やったーありがとう!明日図書館で会うのはどう?」
「OK」
「13時とか大丈夫そ?」
「うん、そうしよー」
怒涛のLINEを返信すると、携帯を裏に向けて机へ向かう。過去問解く前までに復習をしなければ。ポツポツと降り続く雨音を聴きながら、再び夢魔と戦った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?