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【小説】 hazama

爆弾低気圧がやってきた。外は曇って雨がずっと降ったり止んだり。
数日前のいい天気が少し恋しい。家の中で引きこもっているのも好きだけど、やっぱり春は出かけたい。ちょうどこの前新調した春コートをふわりと羽織って公園をふらりと散歩したいし、ドーナッツを買ってから足を伸ばして土手の横を歩いてもいい。家でサンドウィッチを作ってからピクニック気分にお酒片手に花見もいいな。そんな妄想をベットの中でする。
ふと部屋を見渡すと、室内は冬と春が混在していた。まだ寒いだろうと思って出しっぱなしの毛布やヒーターがあちらこちらに散らばっている。冬と春の間と私。どう片付けるべきか悩んでいた。
今日片付ければ今度のお休みに思いっきり出かけられる気もするけれど、また寒さがやってきた時に対策が出来なくなると困る。暫く考えを行ったり来たり。手元で拭いている布巾も行ったり来たり。そうこうするうちに時間が過ぎてお昼になった。はたと時計を見て慌ててお昼の支度をする。
考える時間も、自分で期限を決めなければ永遠に考え続けてしまう。
考え過ぎたなと反省しつつ卵を溶いてフライパンに入れる。ジュワっと音がしたかと思うと卵液が広がってふんわりバターのいい香りがした。
今日のお昼はオムレツとトースターで焼いたフランスパンにチーズを乗せて生ハムとトマトのサラダを添える。外のジメジメとした空気を吹き飛ばすくらいのものを作りたくて、出来上がった時の出来栄えと来たらどれも美味しそうだった。我ながら完璧。
「いただきます」
一言添えてパクリと一口。カリッと焼いたトースターがいい音でオムレツも美味しい。
「ごちそうさまでした」
丁寧に手を合わせて口にした言葉が部屋に響く。もし言霊があるのだとしたら、私のお腹の間まで届けばいいな。美味しかったという気持ちとありがとうという心も。
結局1日、押し入れをゴソゴソ開けて冬物を片付けた。掃除されていない場所を見つけて掃除したり、冬物から春物を取り替える衣替えもついでにやってしまったり、布団の柄を新調したくてネットサーフィンしたり。手を動いかしていると自然と次これもやりたいという欲が出てきたりして、思いの外室内でも楽しめた1日だった。たまにはこういう時間の使い方も悪くない。
外は相変わらず雨が降り続いていたけれど、ふと庭先に目をやると冬に植えたチューリップがゆっくりと新芽を伸ばしていた。どこもかしこも準備は順調そうだった。

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