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キットカットと高校の思い出〜クラスの隠キャが歩く会クラスリーダーをやった話

お昼の大学のカフェテリア。量の割にリーズナブルな学食のお金を精算しに、レジへ向かったときに目が止まったものがあった。そう、キットカットである。「今日は思い切り勉強しよう」と朝早くから図書館にこもって勉強していたので、脳が悲鳴を上げていた。だから、反射的に買ってしまった。

キットカットは、1935年にイギリスで誕生したらしい。

イギリスのロントリ―社が、ウェハースをチョコレートで包んだ「チョコレート クリスプ」を発売。ロントリ―社の工場で働く男性から寄せられた「お弁当と一緒に、職場に持っていけるチョコレートバーを作ってはどうか」という提案から、初めて「キットカット」の元となる4フィンガー(バーが4本連なった形状)の製品が生まれました。

出典 (https://nestle.jp/brand/kit/about/history/ )

イギリスの大学のカフェテリアで買ったら、日本の2フィンガーとは違って4フィンガー(一番上の写真参照)だった。味は日本のキットカットと変わらない。あのサクッとした食感ととろける甘いミルクチョコレートの組み合わせは病みつきになる。

そんなキットカットのおいしさに浸っていたら、急に高校時代のクラスの記憶が蘇ってきた。

正直なところ、高校時代のクラスにあまり良い思い出はない。というのも、活動が盛んな吹奏楽部に所属していて朝も昼も練習、文化祭もステージ演奏や準備が忙しくて、クラスに殆ど貢献できない状態だったから、「クラスの中でクラスメートと何かをする時間」というのが圧倒的に少なかった。個人的に、3年生の時のクラスが苦手だった。目の前にある「受験」というものに集中したかった当時の自分にとって、クラスメートと関わるよりも「勉強」と、自分の殻に篭りまくった生活をしていた。誰とも喋らず、休み時間も勉強。教室には普通にいて、授業も普通に参加する。でも、それは「空間的に存在する」だけで「社会的に存在」することはほぼなかった。いわゆる「隠キャ」だった。「このまま早く卒業しちゃいたい」と思っていた。

しかし、転機があった。こんな隠キャが歩く会のクラスリーダーをやることになってしまったのだった。自分の母校には、2日間かけて約70kmを歩く「歩く会」という学校行事が毎年ある。恩田陸さんの『夜のピクニック』を読んでもらえればわかりやすいと思う。1日目は、約50kmをクラスごとに歩く。その取りまとめをするのが「クラスリーダー」であった。特に超大変な作業というものはない。しかし、クラスの決め事の中で1番人気のない役職だった。

学級活動で、一人一人の役職を決めていく時、隠キャだった自分は「余り物でいいや」と呑気にvintageをやっていた(今振り返るとクズい)。そして、気がつくと残りが「歩く会クラスリーダー」と「国語係」だった。そこでジャンケンをし、負ける。自然的に私は歩く会クラスリーダーになってしまった。運動音痴。その上、部活と勉強のやり過ぎで発症した腱鞘炎で、体育は見学ばかりだった。

そんな自分がクラスリーダー??!!!

まじありえないって感じだった。しぶしぶ自分の名前を黒板に書きにいった時、クラスの何人かが「マジかよ」って顔で私が名前を書くのを見ていたのを覚えている。隠キャは悲しい。でも、やるしかないのでやるべきこと(会議の参加、伝達事項の通達等)はちゃんとやっていた。

歩く会前日。身体が丈夫なはずなのに、発熱。マジかよって感じだった。(ちなみに、これで授業を欠席したせいで皆勤賞を逃してしまった。悔しい。) 受験勉強をしたいけど、休むしかない。でも、手持ち無沙汰だ。そんな中、あることを思いついた。

クラスメート全員にキットカットを贈ろう!

「キットカット=きっと勝つよ!」ということにちなんで、受験などの「頑張り時」に大活躍なキットカット。歩く会も「頑張り時」だ。珍しく仕事が休みだった母親に頼み込んで、お徳用のキットカットを買ってきてもらった。そして、クラスメート全員分のキットカットに「完歩!」とクラスの組を書いていった。

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歩く会当日。無事に熱が下がったので、参加できた。クラスリーダーの朝は早い。朝6時45分頃に高校集合し、打ち合わせ。そして、スタート地点に行くためのバスにクラスごとに乗り込む。その前日に用意したあのキットカットを、クラスメート一人一人に配っていった。「ありがとう!」と笑顔で言われた時は嬉しかった。前日休みだった自分を気遣って「大丈夫?」とか「参加できてよかったね☺️」と声をかけてくれたクラスメートの温かさに嬉しくなった。今まで話せなかったクラスメートとキットカットを通して繋がることができた。

そんな素敵な思い出があったことを、今日まで忘れていた。正直なところ、その後は受験の大詰めになって、本当の本当にクラスに行くことが辛くなって時々保健室生活になったり、卒業後のクラス会も凄くモヤモヤした状態で終わってしまった。いい子達ばかりだったはずなのに、一方的に拒絶してしまっていた。いろんなドラマがあった高校時代の1番の後悔だと思う。

もし、次に会う機会があるのなら...改めて、3年の時のクラスメートと話してみたい。「隠キャ」じゃなくて、「いろんなことに挑戦して今を全力で生きている」1人の人間として関わってみたい。

そんなくすんでいたようで輝いていた昔の思い出を懐かしみながら、甘いキットカットを食べた昼休みであった。

#エッセイ #高校時代の思い出 #夜のピクニック #キットカット #学校行事 #女子大生

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