この道の続きに見える景色 ~Produce 101 Japanから3年

OWV(オウブ)というグループの7枚目のシングル「Let Go」のカップリング曲「Tararam」 と「Gonna Getcha」が10月31日へと日付が変わった瞬間デジタルリリースされた。



「Gonna Getcha」の作詞はKanata Nakamura(中村彼方)さん。

3年前、OWVのメンバーも練習生として出演していたオーディション番組 Produce 101 Japan(シーズン1)のテーマ曲である「ツカメ~It's Coming~」の作詞者でもある。
もちろんオーディションはまだOWVがグループを結成する以前の話だ。

このオーディション番組でデビューを掴んだ11人は今JO1として活躍している。
この番組でのデビューには至らなかった90人の練習生たちはやがて様々な道へと進むことになった。
別の芸能事務所からデビューをした人、事務所に所属せずフリーで芸能活動をしている人、別のオーディションをまた受ける人、学生や社会人に戻った人、アルバイトをしたりレッスンを受けながら次の道を模索している人。

現在OWVとして活動しているメンバーも、このオーディションではデビューを掴めず一旦は一般人へと戻った4人だった。

デビューを目指して練習生として芸能事務所にも所属していたことのある中川は最後のチャンスと思ってこのオーディションを受けたそうだ。前年に大学を卒業している年齢なこともあり脱落後には就職をしなければと考えながらも芸能への道を諦めきれずにいたという。

佐野もちょうど大学4年生という年だったこともあり、スーツを着て就活をしている同級生を見ながらアーティストを目指すかダンサーに戻るか就職をするべきかと迷っていたらしい。

小学生のころからいくつか芸能事務所に所属し芸能活動をしていた浦野と、やはりオーディション前からダンサーやアーティストとして活動していた本田はおそらくオーディション後もどうにか芸能活動できる道を模索していたのではないかと思う。

オーディション後、本田は番組で縁のあった吉本興業の社員に将来のことを相談していたそうだ。
アルバイトをしながら吉本興業の本社へと通い、デビューの交渉を重ね、一緒に活動したいと自ら中川、浦野、佐野に声を掛けて事務所への所属とグループ結成に至ったという。

オーディション番組で彼らが歌っていたテーマソング「ツカメ~It's Coming~」にはこんな歌詞がある。

『いつまでも 夢を見てる
お願い そう言って笑わないで?
この道の続き 見えるでしょ 君も
希望に染まった』

(作詞:中村彼方)


OWVというグループ名は「Our only Way to get Victory」という言葉の頭文字から来ている。
「勝利を掴む僕たちだけの道」という意味だ。
オーディションでは“ツカメ”なかったデビューだが、再び夢を掴むため、“道の続き”を進むことをグループの名に掲げている。

結成に至る経緯はそれまでもインタビューなどで多少語られてはいたが、結成から1年と少し経ったころにOWVの運営スタッフからファンに宛てられた手紙の中にこのOWVというグループが“大人”(事務所など)によって計画的に作られたものではなく、本当に本田と話を進めるうちに立ち上がったプロジェクトであろうことが伺える部分がある。

また最近の本田へのインタビュー(BoyAge vol.19/カドカワエンタメブック)の中でも本田が声をかけた3人のメンバーについて「(音楽のイメージが薄い)吉本興業所属になることに対してどんなグループになるかも分からず不安もあったと思うのに僕を信じてついてきてくれた」といったことを話している。


3枚目のシングル「Roar」でOWVは『道がないなら作れ』(作詞:Lauren kaori)と歌っている。

オーディション脱落で1度は閉ざされたように思えた“道”を本田が繋ぎ、中川、浦野、佐野が選び取り、自ら切り拓いているのだ。


そしてオーディション時代のシグナルソング「ツカメ~It's Coming~」の作詞者である中村彼方さんを招いて作ったOWV7枚目のシングル収録曲「Gonna Getcha」。

オーディションでは視聴者による投票でデビューが決まるシステムだったこともありテーマソングの「ツカメ~It's Coming~」では『僕を頂上(トップ)へ連れてって』と歌っていた彼らが今では

『君なら(中略)できるさ』
『羽ばたいてごらん』
(「Gonna Getcha」)

と励ます側にまわっている。

また「ツカメ」のタイトルにも入っていた『It's Coming』というフレーズも「Gonna Getcha」で再び使われているのが何とも素敵な演出だ。

『あの日 君が俺にくれたこのyellを
It's Coming, It'Coming now
今度は送る君へと』

かつて『忘れられるわけないよ 可能性が(中略)あるのなら』と「ツカメ~It's Coming~」で歌っていたのがOWVとなり『見せつけろ可能性を』と歌っている。

“もしも可能性があるのなら…”ではなく今度はOWVがそれをリスナーに対して“見せつけろ”と言っているのだ。
彼らは“道の続き”の可能性を信じ、繋いだ道を今まさに歩み、知っている人たちなのだ。

オーディション時代の「ツカメ~It's Coming~」から3年後のOWVとなった彼らの変化を見事に捉えた中村彼方さんにしか書けない詞だと感じた。



とは言え現実は甘いことばかりではなく、むしろ厳しいことの方が圧倒的で、必ずしも夢が叶うとは限らないし、いつか夢を諦めなければいけないこともあるかもしれない。
様々な事情で、あるいは自身の夢が変わって、必死に追っていた夢を手放すときがあるかもしれない。

あるいはそもそも夢を持たない人もいるだろう。
私自身がそうだ。
特にこれといってやりたいことも、夢中になれるものも持たぬまま大人になり社会人になり親になった。
夢を諦めることも夢を持たないことも決してダメなことでも恥じることでもないと私は思う。
日々生きているだけで、それだけでいい。
そもそも人生に意味を見いだせなくたっていいし立派である必要もない。
夢を諦めざるを得なかった人たちが、可能性を信じていなかったのかと言うと決してそんなこともないはずだ。

どれだけ必死で追いかけても、どれだけ可能性を信じていても、叶わないこともある。
努力が足りないわけでも、信じる力が足りなかったわけでもない。
ただ“そういうことはある”という現実がそこにあるだけだ。

だからこそ夢はどこまでも美しく、それを追いかける人は眩しく、夢中になれる時間は尊いのかもしれない。

ただ、以前にもnoteに書いた言葉だが少なくとも本人たちがそうなれると信じていないことには、ビジョンを描いて歩き出さないことには、夢へと道は繋がらないのではないかとは思っている。

OWVの本田はデビュー時のインタビュー(「ch FILES No.189」)で「夢を掴むために実践していたことは?」という質問に対して「常に目標は口に出す」と答えている。 
「恥ずかしくて言えないようなこともあると思うけれど、自分が目指したい道なのに恥ずかしがって言えないというのは自分の中でシャットアウトしていると思う」と答えている。


何かに夢中になり夢に一途に生きている人を見るとやはり憧れとも羨望ともつかぬ感情を抱くことがある。
眩しすぎてまっすぐ見ることができないこともあるし、もっと自分にも本気で頑張れたことがあったのではないかとふと自分の人生を振り返って思うこともある。

私自身、OWVというグループをどうして応援しているのかまだはっきりとは分からないが、自分では経験しなかった熱くまっすぐな情熱や、眩しくどこか甘酸っぱいきらきらとした青春のようなもの、尊い時間を彼らを通して代理体験させてもらっているからなのかもしれない。

可能性を信じた彼らが見つけ、切り拓き、歩み出した“道の続き”。

彼らがどんな道を辿り、どんな景色を見るのか私も見たいのだと思う。

願わくば、それが希望に染まったものでありますよに。


7枚目のシングル表題曲の「Let Go」も切なく美しい楽曲です。



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