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ドラマ【silent】名台詞集

2022年10月期 木曜ドラマ「silent」より、心に残った台詞をまとめました。


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●名台詞集



第1話

いやでも週5で好きな人に会える場所

「今思えば、学校っていうのはすごい場所だった。いやでも週5で行く場所で、いやでも週5で好きな人に会える場所だった。」

「silent」第1話-青羽紬

学校という場所を、約束しなくても好きな人に会える場所、と表現するって素敵だなと思いました。
卒業してからはずっと会えていない想。約束も出来ず、ただ想を世田谷代田駅の改札で探し続ける紬。
大人になると、約束なしに会える関係ってなかなかない。
学校という空間の特殊性と懐かしさを感じました。

好きだった人です

-穂田ゆかこ「あ、その彼氏がスピッツ好きなんだ?言ってたじゃん前に、好きな人が好きで的なこと。」
-青羽紬「違います、好きだった人です。昔、好きだった人。」
-穂田ゆかこ「あ、元カレ?」
-青羽紬「昔付き合ってた、好きだった人です。」

「silent」第1話-青羽紬

「元カレ」かと聞かれて、「昔付き合ってた、好きだった人」と答えた紬。
おそらく紬と想が付き合っていたのって、高3の秋とか?制服が長袖になる頃の季節からなはずなので、その後大学に進学してすぐに疎遠になったことを考えると、付き合っていた期間ってそんなに長くないと思われます。
後に分かりますが、大学進学後は遠距離恋愛だったようなので、実際に付き合っていた期間の中で、そこまで関係性を深めてはいなかったのかもしれません。
紬にとって想くんは、ずっと好きで憧れていた人で、やっと付き合ったと思ったらすぐに一方的に関係を断たれてしまって、もっと知りたかったことや、一緒にしたかったこと、行きたかったところとか、たくさんあったんだろうな。
今はもう時も流れて恋愛感情は薄れたけれど、想くんに恋していたこと自体を恋しく思うような、そんな思い出なのかな。
そんな風に感じさせる台詞でした。

へらへら生きてる聴者の皆さんは

「そういう刷り込みがあるんですよ。偏見っていうか。手話、耳が聞こえない、障害者、それに携わる仕事、奉仕の心、やさしい、思いやりがある。絶対いい人なんだろうなって勝手に思い込むんですよ。へらへら生きてる聴者の皆さんは。僕も聴者なんですけどね。」

「silent」第1話-春尾正輝

春尾が手話を教えていることを知った湊斗が「いい人そう」と言った際の、春尾の台詞です。
この台詞を放った春尾は、どこか影があり毒もありそうな印象でした。
ここまでで、想の身に起こったことを想像する視聴者は、「かわいそう、何があったの」と想に思いを馳せているはず。そう仕向けたはず。そこでこの春尾の言葉です。
わかったような気持ちになって、感情や立場を勝手に想像することは、時に人を傷つけることにもなる。
軽く頭を殴られたような衝撃でした。


第2話

好きになれてよかったって思います。思いたいです。

-春尾正輝「すごく好きな人と出会って、すごく好きな人います?いたことあります?すごく好きだけど両想いになれなかったり、なれても別れてしまったり、そういう時思いません?初めから出会わなければよかったって。この人に出会わなければこんなに悲しい思いしなくてすんだのにって思いません?」
-青羽紬「好きになれてよかったって思います。思いたいです。」

「silent」第2話-青羽紬

昔好きだった想と再会して、話しをするために手話を習い始めた紬。
手話教室の先生である春尾との会話の中での台詞です。

「出会わなければよかった」は、よく聞く台詞だと思います。
「出会わなければよかった」も、よく聞く台詞だと思います。
ここで、「好きになれてよかった」という台詞をあててくるところが、このシーンと台詞が好きな理由です。

ちょっとした言葉の違いですが、その人を好きになり、その人のことを想えたこと、その人のことを想って過ごした時間や、その人のためにつかった心。
どんなに辛いことがその後に訪れても、それが幸せだったということは紛れもない事実で、忘れたいことでも、なかったことにしたいことでもない。
そう言いきれるほど、誰かを好きになること。想うこと。その尊さを感じます。

約束すごすぎます

「約束が出来ました。日にちと時間と場所、すでに決まってて、決まってる通りに行けば会えるんです。約束すごすぎます。」

「silent」第2話-青羽紬

8年間ずっと会えなかった想。
久しぶりに姿を見かけて、話がしたくて毎日毎日駅で姿を探した想。
そんな想と久々の再会を果たし、また次に会う約束をした紬が、嬉しそうに言った言葉です。
会いたい人に当たり前のように会えることの尊さと、会いたい人と共通の約束がある未来の愛おしさを感じる台詞です。

すべては向こうの受け取り方です

-春尾正輝「極論言うと、手話、無い方がいいかもです。なんていうかその、覚えてやったぞっていう、こっちがお前の言葉をわざわざ覚えてやったっていう感じを感じさせちゃったら終わりです。」
-青羽紬「そんなつもりで覚えたんじゃないです。」
-春尾正輝「そんなつもりかどうかもこっちの都合でしかありませんから。すべては向こうの受け取り方です。でも、喜んでくれますよ普通は。好きな人が、自分の言葉、覚えてきてくれたら。」

「silent」第2話-春尾正輝

"相手のために何かをしたい"という善意が、してあげたという押しつけに変わってしまうことがあること、それは受け取る側がどう受け取るかによるということを考えさせられます。

この物語では、手話が、単なる言葉ではなく、人から人へ渡されるプレゼントのようにずっと描かれています。
どんなプレゼントも、渡す側の片想いで選んで渡したところで、喜んで受け取ってもらえない。
また、プレゼントなら、相手が何を送ったら喜んでくれるかを考えてから選んで渡すのに、言葉だとついつい一方的なこちらの想いで渡してしまって、相手を傷つけてしまったりする。
伝えることと、伝わることと、届くこと。その難しさを考えさせられます。


第3話

期待と圧力は違うよ

「無理なことってあるんだよ。無理してやったことって、無理なことなんだよ。無理すると、ほんとに全部無理になっちゃうんだよ。やれば出来るって、やらせるための呪文だよ。期待と圧力は、違うよ。」

「silent」第3話-戸川湊斗

膨大な仕事量、サービス残業、休日返上での仕事、上司からのセクハラ。
仕事なんて楽しくなんて当然、みんなそうだからと、自分の心を殺して働く紬に、湊斗がかけた言葉です。

少しだけ無理すれば出来る。
今が頑張り時。
期待されているから応えたい。
NOと言えない、言ってはいけない。

働いていると、それは確かに、自分のしたいことだけをして、楽しいことだけしていればいいっていうわけではないから、踏ん張り時っていうのは、少なからずあるけれど。
でも、生きるための仕事であって、仕事のための人生ではないから。
自分の心を置き去りにしてしまうと、何のために働いているのか、この先に何があるのか、わからなくなって、でももう抜け出す術も考えられなくなってしまう。
そんな時に思い出したい言葉です。


第4話

別れるまでに楽しいことがいっぱいあったらそれでいいのにね

-戸川湊斗「なんかぬるっと付き合い始めちゃったから。…もし別れても、別れたとしても、別れるまでに楽しいことがいっぱいあったら、それでいいのにね。」
-青羽紬「うん。別れないのが一番いいけどね。」
-戸川湊斗「そうだね。」

「silent」第4話-戸川湊斗

昔、「始めたら終わっちゃう」と付き合い始めた時に終わりを怖がっていた湊斗。
今は、たとえ別れても、別れるまでの時間の中に楽しいことがいっぱいあればそれでいいといえるようになった湊斗。

この台詞を言った時点での湊斗は、紬との別れを意識していた状態なので、この台詞には少し含みがあり、切なく響いた言葉でしたが、たとえ終わりがあるとしても、それを恐れて始めないのではなく、踏み出して楽しい思い出を増やしていくことの方が尊い。そう思わせる素敵な台詞でした。


想の横にいる時がいちばん可愛い

「紬、想の横にいる時がいちばん可愛いんだよね。知らなかったでしょ?いつでも自分が見てきたあの紬だと思ってるでしょ。」

「silent」第4話-戸川湊斗

湊斗が紬と別れることを決め、想に伝えた際の台詞です。

湊斗が好きだった紬は、想のことを好きな紬だった。
想の隣にいる紬は、いつも楽しそうで、可愛かった。
自分の隣にいる紬よりも、やっぱり想の隣にいる紬が、しっくりくる。
想の隣にいる方が、紬は可愛い。
湊斗が紬と別れるのは、"好きな人"がいるから。
湊斗は、紬が好きだから。
想の隣にいる、紬が好きだから。

とても切ない台詞でしたが、"お似合いだよ"といったありふれた言葉でなく、「一番可愛い」と表現した台詞に愛を感じて、印象的でした。


第5話

ポワポワさせる才能

「紬とごはん食べに行ってさ、それが美味しかった時、"あぁこれ湊斗に食べさせたいなぁ"とか。紬と服買いに行って、適当に私が"こっちがいいんじゃない"とか言うと、"湊斗はこういうのが好きなんだよなぁ"とか。そういう感じ。紬が、戸川くんのこと好きなの。そういう感じだった。嬉しいこと教えたくなる感じ。無意識に戸川くんが自分の基準になってる感じ。女の子をキラキラさせる男ってすげぇなって思ってたんだけど、うん、でも、ポワポワさせるのもね、なかなかの才能だと思うけどね。」

「silent」第5話-横井真子

紬と別れた湊斗に対して、湊斗付き合った3年間の紬がちゃんと幸せそうだったことを伝えた真子の言葉です。
いつもドキドキしてキャッキャするような恋ではなく、無意識に名前を呟いたり、思い浮かべたり、そんな恋。愛ですね。
穏やかな幸せ。そんな"好き"は、なかなか伝わらないものだけれど、なかなか出会えない、愛おしいものですよね。


第6話

ただ誰かに聞いてほしかった

「違うのに。ただ誰かに聞いてほしかった。静かに話だけ聞いてほしかったんです。ただ不安だってことを、言葉に出来ないのが苦しかっただけで。」

「silent」第6話-佐倉想

難聴になり一人で苦しんだ気持ちを、奈々に出会い初めて打ち明けられた想が言った言葉です。
答えがほしいとか、助けてほしいとかじゃなくて、ただ、不安だっていうことを誰かに言いたかった。誰かに聞いてほしかっただけだった。
そういう時ってあるし、それすらも出来ないことが、人を本当の孤独に追い込んでいく気がします。
話を聞いてくれる人がいるって、とても尊いこと。
そして、自分にとって大切な人の話を聞いてあげられる自分でいたいと思わされます。

私は生まれてからずっと悲しいわけじゃない

「私は生まれつき耳が聞こえない 。でも、幸せ。音がなくなることは悲しいことかもしれないけど、音のない世界は悲しい世界じゃない。私は生まれてからずっと悲しいわけじゃない。悲しいこともあったけど嬉しいこともいっぱいある。それは、聴者もろう者も同じ。あなたも同じ。」

「silent」第6話-桃野奈々

生まれつき難聴の奈々が、徐々に失聴していき苦しむ想にかけた言葉です。
何か障害があるからって、その人を可哀想と決めつけるのってとても失礼なこと。
それぞれの人生には、それぞれの喜びや悲しみがあって、障害は人生のすべてを語る言葉ではない。それは、みんな、同じ。
心に残った言葉でした。

適当に視界に入る場所にいてくれればいいんだよ

-青羽光「姉ちゃん、あの頃ほんと死んでて。3年くらい前?俺のせいなんだけどね。とにかく働かなきゃってなってて、周りも自分も視界に入ってなくて。その、こんなしかない狭い視界に、湊斗くんがチラって。ありがとね湊斗くん。視界に入り込んでくれて。」
-戸川湊斗「ほんと、入り込んだだけで、なんもしてないけど。」
-青羽光「なんもしなくていいんだよ。そのへんに適当に視界に入る場所にいてくれればいいんだよ、好きな人は。全部湊斗くんのおかげだから。この3年あっての姉ちゃんだから。」

「silent」第6話-青羽光

職場環境で紬が苦しかった時に、声をかけて紬を救い上げた湊斗。その後付き合った3年間に対して、紬の弟が湊斗にお礼を言うシーンの中での台詞です。
好きな人って、ただいてくれただけで救いになる。
何かをしてあげる、してもらう、といった関係でなく、ただいてくれる、それだけのことがとても尊くて、愛おしいこと。
忘れないでいたいです。

どんな人って聞かれた時

「どんな人って聞かれた時、好きな人のことだと、その人の好きなところ言っちゃうんだって。嫌いな人のことだと、嫌いなところ。どちらでもない知り合いとかだと、普通に関係性とかプロフィールとか説明しちゃうんだって。今みたいに。ま、全部に当てはまるとは思わないけどね。わかんないけどね。」

「silent」第6話-戸川湊斗

紬のことをどんな人かと聞かれて、「まっすぐ」と答えた想。
奈々のことはどんな人かと聞かれて、「友達」と答えた想。
湊斗がかけたこの言葉、確かにな、と、じんわり沁みました。
好きな人って、恋人だから好き、ってわけじゃないですもんね。
当たり前だけど、じんわりきた言葉でした。

プレゼント使いまわされた気持ち

「プレゼント使いまわされた気持ち。好きな人にあげたプレゼント、包み直して他人に渡された感じ。」

「silent」第6話-桃野奈々

奈々が想に教えた手話を、想が紬に教え、想と紬が手話で伝わり合っていく。
想への片想いが実らなかった奈々が言った台詞です。
自分が誰かのためにしたことが、また違う誰かのためになる。
それって嬉しい時もあるけれど、こんな風に切ないこともあって。
それが"プレゼント"という言葉で表現されたこの台詞には、相手を思う気持ちが込められているようで、とても好きです。


第7話

恋愛って自己満足のぶつかり合いでしょ

「恋愛って、自己満足のぶつかり合いでしょ?相手のためにって自己犠牲ばっかり払っても、バランスとれなくなってうまくいかないんだって。結婚とかなると違うのかもだけど、恋愛なんて一時の感情と口約束なんだからさ。自己中振りかざしても上手くいく相手といるのが正解なんだって。」

「silent」第7話-横井真子

どちらか一方だけが我慢したり相手に合わせようとするとうまくいかない。
自分の気持ちを押し殺して相手に合わせることが、愛とは言えない。
自分が苦しくなる恋は、うまくいかない。
恋愛における自己犠牲は自己満足。印象的な台詞でした。

好きって言うから好きなふりしてた

「想くんが好きって言うから、好きなふりしてた。」

「silent」第7話-桃野奈々

好きな想が貸してくれた本の内容がいまいちよくわからなかった奈々。
それでも、好きな人が好きって言うから、「面白い」と噓をついて、想から本を借り続けていた奈々でした。
好きな人が好きなものは、自分も好きになりたくなる。
よくわからなくても、合わせてしまう。
奈々の可愛らしい恋心が感じられて印象的な台詞でした。

好きな人とファミレスでごはんはデートだよ

「好きな人とファミレスでごはんはデートだよ。デートの基準は場所じゃないよ。相手だよ。」

「silent」第7話-横井真子

想とファミレスに行ったことを「デートじゃない、ごはんに行っただけだ」と否定する紬に、真子が言った言葉です。
好きな人とだったら、どんな場所でもデートになる。
大切なことは、どこへ行くかではなく、誰と過ごすかですね。

少ないっているってことだもんね

「多いってだけで、それが普通なんだって思い込んじゃって。それで…佐倉くんなんでなんだろうって気になって聞いちゃって。少ないっているってことだもんね。」

「silent」第7話-青羽紬

元々話せていた中途失聴者は、失聴後も声で話すことが多いと聞いた紬。
声で話さない想に理由を聞いてしまった後、それを反省しながら紬が呟いた言葉です。

世の中、あてはまる人が多い=「普通」と考えてしまうけれど、普通って、何?
数が少なかったとしても、いるってことは、あるってこと。
あるってことは、その数だけ、理由や物語があるとうこと。
自分が"多い"側にいる時は特に、無意識に否定してしまいがちな"少ない"を、否定しない人間でいたいものです。

気持ちを伝えようって必死になってくれる姿ってすごく愛おしい

「気持ちを伝えようって必死になってくれる姿ってすごく愛おしい。まっすぐにその人の言葉が自分にだけ飛んでくる。」

「silent」第7話-桃野奈々

一生懸命に手話を覚えて想いを伝えようとする紬を見た奈々が、紬のことを語った言葉です。
誰かが自分のために言葉を紡いで何かを伝えようとしてくれることって、当たり前のようで、とても尊いこと。
その言葉を受け取ることが出来るって、とても幸せなこと。
そんなことに気付かされます。

おすそ分けしたって気持ち

「この前、プレゼント使いまわされた気分って言っちゃった。私が想くんに教えた手話があの子に伝わっていくの。でも今は、おすそ分けしたって気持ち。あげて良かったって気持ち。」

「silent」第7話-桃野奈々

奈々が想に教えた手話を、想が紬に教え、想と紬が手話で伝わり合っていくことを、以前は「プレゼントを使いまわされた気分」と言った奈々。
その奈々が、あらためて言った言葉です。

自分が誰かのためにしたことが、また違う誰かのためになる。
それって嬉しい時もあるけれど、切ない時もある。
でもそれは、プレゼントを使いまわされたのではなくて、自分が渡したお裾分けで誰かが幸せになり、その幸せが伝染していくことなんだと今は思える。
少し言葉や考え方を変えることで、ほんの少し幸せになれるし、自分を好きになれる。
素敵な台詞で、とても印象に残っています。


第8話

一緒にいたくているだけだし手話だって話したくて覚えただけだし

「手話疲れるって思ったことありますか?なんか言われて。その、疲れるでしょって。一緒にいるの大変でしょって。全然そんなこと思ってないんですけど。どうすればいいんですかね。一緒にいたくているだけだし、手話だって話したくて覚えただけだし。」

「silent」第8話-青羽紬

想と会うようになった紬ですが、想は紬と一緒に過ごすほどに、自分がろう者であるがゆえに紬に負担をかけているのではないかと思ってしまう。
そんな想に気付き、迷う紬の言葉です。
何かをしてあげたいという思いではなく、ただ想のそばにいたいという、紬らしいフラットさが感じられる一方で、そんな思いでさえも相手の受け取り方によっては傲慢になってしまう、その難しさを感じる台詞でした。

彼女が笑うと本当にニコっと音が出そうだった

「ニコっと笑う子だった。彼女が笑うと本当にニコっと音が出そうだった。」

「silent」第8話-春尾正輝

奈々のことを言った春尾のモノローグです。
ニコっと笑うというのが本当に奈々のことをよく表していて、「笑うとニコっと音が出そう」という表現が可愛らしく、とても好きな台詞です。
誰かに印象を語られる時に、その人に浮かぶ自分が笑顔だったら素敵だなと思わされました。

ありがとうって使いまわしていいの?

「ありがとうって使いまわしていいの?」

「silent」第8話-桃野奈々

大学時代、奈々の授業のサポートでノートテイカーをボランティアで行っていた春尾。
授業の度に、「ありがとうございました」とノートに書いて見せてくる奈々に、「ひとつ書いておいてそれを毎回見せたら?」と言った春尾。
そんな春尾に奈々が驚いたように言ったのがこの言葉でした。
何かをしてもらったら、「ありがとう」。
謝りたいときには、「ごめんなさい」。
言うべき言葉に、きちんと心を込められているか。
ただ言葉として発する音と、心が込められた音は、違う。
はっとさせられる台詞でした。

善意は押し付けられたら偽善なの

-桃野奈々「遊び道具みたいにされてて不快だっただけ。あの人たち手話に興味があるんじゃない。良い人って思われたいだけ。」
-春尾正輝「そんなことないよ、みんな善意でやってることだよ。」
-桃野奈々「善意は押し付けられたら偽善なの。仕事にしてほしくて手話を教えたんじゃない。」
-春尾正輝「そんな怒る事?桃野さんのためになると思って」
-桃野奈々「いいよね。私といると無条件に良い人って思ってもらえるもんね。へらへら生きてる聴者からはさ。」
-春尾正輝「そんなつもりじゃないよ。」
-桃野奈々「どう受け取るかはこっちが決めることだから。」
-春尾正輝「めんどくさいな…」

「silent」第8話-桃野奈々

奈々と話がしたい。
その一心で手話を学び始め、手話サークルを立ち上げ、手話通訳士の資格取得を目指し始めた春尾。
そんな春尾に対して、奈々が感情的になり言い合いになった時の台詞です。
この出来事を経て、二人の関係はこじれてしまい、以降会うことはなかった。
春尾はその後も、この時に奈々に言われた言葉や、「じゃあどうすればよかったんだ」という思いを抱えながら、時間を過ごしてきました。
相手のために何かをしたい、自分がこうしたいからこうする、そういった気持ちが善意であったとしても、受け取る相手にとっては、傲慢に映ったり、偽善と思われてしまうかもしれない。
奈々は奈々で、ただ"普通"に、春尾と話しがしたかっただけなのに、二人の間にあればよかったコミュニケーション手段を使いまわされたような気になり、つい感情的になってしまった。
どうすればよかったのか。
答えは出ないけれど、考え続けることこそが向き合うことになる。
そう投げかけられるようなシーンでした。

押し付けた善意で終わった

「言葉は通じるようになったのに、顔を見て話せるようになったのに、押し付けた善意で終わった。」

「silent」第8話-春尾正輝

上記の奈々とのやりとりの後の、春尾のモノローグです。
共通の言葉を得ても、心が通じ合えるわけではない。
言葉は足りなくても、心が通じ合うことがある。
想と紬、春尾と奈々、想と奈々、紬と湊斗。
彼らの関係性を通じて描くこの物語のテーマです。

親のまごころ

-青羽紬「実家から帰る時荷物増える現象、そろそろ名前ほしいわ。」
-青羽和泉「親のまごころ。言葉じゃ伝えきれないからさ、物に託すの。」
-青羽紬「持って帰んなきゃじゃん。」
-青羽和泉「郵送する?」
-青羽紬「大丈夫。持てる。」
-青羽和泉「行ってらっしゃい。」
-青羽紬「行ってきます。」

「silent」第8話-青羽和泉

久しぶりに実家に帰った紬が、母・泉から手作りの総菜など大量の荷物を持たされた時の会話です。
親のまごころ。
込められた想いを知ることで、荷物の重さも価値も、変わってきますね。

第9話

湊斗くん出来ないもんね。でも仲良しだもんね。

-青羽光「手話、出来なくても大丈夫?」
-青羽紬「うん、大丈夫。」
-青羽光「湊斗くん出来ないもんね。でも、仲良しだもんね。」
-青羽紬「うん。」
-青羽光「じゃあ大丈夫か。
-青羽紬「大丈夫大丈夫。」

「silent」第9話-青羽光

想とのコミュニケーションについての紬と光の会話です。
想と湊斗は、手話や声では話すことが出来ないけれど、昔と変わらず友達でいられる。
コミュニケーションのツールは何であれ、しっかりと心が通っている大切な友人。
家族とも恋人とも違う、この二人の変わらない友情という絆は、確かな繋がりとして、私たち視聴者にとっても支えだった気がします。

話せなくなるって思ってたことが勘違いだった

「湊斗が部活のみんなにも会おうって誘ってくれた。隠したいなら黙ってるけどどうする?って。なんで隠してたんだろうって思った。忘れてもらうのがみんなにとって一番良いと思ってた。知られたら辛い思いさせるって思ってた。もっと辛い思いさせてたって話してやっとわかった。話せなくなるって思ってたことが勘違いだった。」

「silent」第9話-佐倉想

想が母・律子と話していた時の台詞です。
想は、高校卒業直後に耳のことが分かって以来、紬や湊斗を含めたすべての交友関係を断ち、ひっそりと孤独に生きてきた。
それは想なりの周りへの想いがあったからこその決断で、皆に幸せでいてほしいと願ってのこと。
それでも、時を経て再会し、また大切な人との関係性を再構築する中で、このことに気付いた想でした。
聞こえない=話せないではないということ。
長い時間がかかったけれど、少しずつ想に光が差し込みます。

困った時思い出したら相談してくれればいい

「親だからって、なんでも話さなきゃだめってことないし。親だから言いたくないこともあるだろうし。それでいいんだよ。困った時、思い出したら相談してくれればいいんだよ。でも、心配はする。心配されるの嫌なの知ってるけど。」

「silent」第9話-佐倉律子

想と母・律子。
耳のことがあって以来、どことなくお互いに気を遣いコミュニケーションが希薄になっていた親子関係でしたが、少しずつ話せるようになった時に、律子が想にかけた言葉です。
親の想いを、想も受け取り、久しぶりに二人で穏やかに笑い合いました。

3人揃うとうるさいんだよな

「昔から3人揃うとうるさいんだよな」

「silent」第9話-佐倉隆司

想が久しぶりに帰省して、華と萌と3人が揃い、想の部屋でCDを整理しながらわいわいと過ごしていた時、その気配をリビングで感じていた父・隆司が、笑いながら呟いた言葉です。
音として聞こえているのは、華と萌の笑い声だけ。
でも確かにそこに想がいて、かつてのように楽しげな子どもたちの気配がそこにある。
お父さんも、律子も、とても嬉しそうで、何気ない家族の日常が愛おしく思える、ぐっとくるシーンでした。

想みたいな子に育ってほしい

「想ともさ、血が繋がってるわけじゃん。想みたいになったらどうしようってずっと不安で、怖くて。でもさ、想に会う度、話す度、思っちゃうんだよね。想みたいな子に育ってほしいなあって。悔しい~。姉バカ。」

「silent」第9話-佐倉華

息子を授かり、息子が想のように遺伝性の聴覚障害になったらどうしようかという不安をどうしても抱えてしまいながらすごしていた華が、律子との会話の中で言った言葉です。
これを聞いた律子はこの後、「良い育て方のコツを教えてあげようか。もう手遅れか。いいお姉ちゃんが必要だから。」と、微笑みました。

第10話

優しくしてくれたのに受け入れられなくてごめんね。

「あの頃のこと謝ろうと思って会いに行ったのに、話せなかったから手紙にします。顔を見ないで話せたらよかったんだけど、手話ってこういう時不便んだね。聞こえる人に囲まれて、必死に目で文字を追いかける毎日で、春尾くんが私の顔を見て必死に手を動かしてくれることがすごく嬉しかった。早く手話だけで話せるようになりたかった。でも、間違えてるよって教えたいから、ちょっとだけ間違えててほしかった。春尾くんが手話を仕事にするのが嫌だったわけじゃない。自分とは違うと思い知って、辛くなってしまっただけ。私は手話が出来るけど、聞こえる人の通訳は出来ない。春尾くんは手話が出来て、聞こえない人の通訳が出来る。優しくしてくれたのに、受け入れられなくてごめんね。」

「silent」第10話-桃野奈々

学生時代の一件があって以降、時を経て久しぶりに再会をした奈々が、春尾に渡した手紙です。
当時は、春尾の優しさを偽善だと言い、悲しみ傷ついた奈々。
本当は、その優しさをまっすぐに受け取ることが出来ない自分に苦しんでいたのですね。
奈々もずっと抱えていた気持ちを、ようやく春尾に伝えることが出来ました。

言葉の意味を理解することと相手の想いが分かるってことは違った

-春尾正輝「手話はコミュニケーションの手段でしかなかった。言葉の意味を理解することと、相手の想いが分かるってことは違った。」
-桃野奈々「そうだね。」
-春尾正輝「聴者にいろんな人がいるように、ろう者にだっていろんな人がいたし、いろんなろう者と知り合ったけど、桃野さんみたいな人は桃野さんしかいなかった。結局は伝えたいとか受け取ろうとか、そういう気持ちがあるかどうかなんだと思う。」

「silent」第10話-春尾正輝

春尾と奈々の会話です。
この物語のテーマに通じるシーンです。

自分が変わったことを思い知る

「やっぱり辛かった。一緒にいたいだけって言ってくれて、顔を見て一生懸命手話で話しかけてくれて、嬉しかった。でも、一緒にいるほど、話すほど、好きになるほど辛くなっていく。青羽があの頃のままだってわかるほど、自分が変わったことを思い知る。」

「silent」第10話-佐倉想

紬と二人でいる時に想が打ち明けた本音です。
聞こえなくなって、離れて、再会して、手話で話せるようになった。
変わらない紬のことをやっぱり好きで、だけど想は、紬がどんな声をしていたのか思い出せない。
今後その声を聞くことはない。
想は高校の頃、紬から「佐倉くん」と呼ばれるのが好きで、嬉しくて、わざと呼ばれるように仕向けたりしていました。
紬が想の声を好きだったように、想だって、紬の声が好きだった。
好きな人が自分に向けて発する声を聞くことが出来ない。
その辛さが、痛いほど伝わってくるシーンでした。

第11話(最終話)

昔の似ている誰かじゃなくて今のその子をちゃんと見たほうがいい

「私と彼が上手くいかなかったのは、聴者とろう者だからじゃないよ。私がそう思い込もうとしてただけ。昔の似ている誰かじゃなくて、今のその子をちゃんと見たほうがいいよ。私たちはうつむいてたら、優しく声かけてもらっても気付けないんだよ。見ようとしないとダメだよ。」

「silent」第11話(最終話)-桃野奈々

想が紬との関係に迷う様子を見て、奈々がかけた言葉です。
昔の紬と自分を思い出すほど、今の自分が失ったものの大きさを実感してしまう想。
春尾とのことがあった奈々の言葉が、想に響きます。

可哀想とかって他人だから言えちゃうんだよ。

-戸川湊斗「ずっと考えてたんだけどさ。二人が再会してなかったら、そしたら今頃って。そしたら今頃、想とまた、ああやって普通に話せてなかったんだって。周りは勝手なこと言うけど、俺はよかったんだよね。可哀想とかって他人だから言えちゃうんだよ。」
-野本拓実「湊斗くん…絶対幸せになってね。」
-戸川湊斗「今幸せじゃないって決めつけんな。」

「silent」第11話(最終話)-戸川湊斗

想と再会し、紬と別れた湊斗。
視聴者目線でも"かわいそう"な立ち位置だった湊斗が言うからこそ、響いた言葉でした。
何が幸せか、何が大切か、そんなことは本人だけがわかって納得出来れば良いものです。
その後の拓実の「絶対幸せになってね」の台詞は、全視聴者が全力で願い頷いた一言でしたよね。

お別れする時こそね全部相手に渡さないとだめ

-青羽和泉「お別れする時こそね、全部相手に渡さないとだめ。中途半端にすると自分の中に残っちゃうから。」
-青羽紬「未練?」
-青羽和泉「思い出。思い出に残るとやっかいだから、投げつけてきな。」
-青羽紬「大切にとっとけとか言わない?」
-青羽和泉「いいのいいの。そのうち美化されて原型なくなるんだから、投げつけてきな。」
-青羽紬「できるかな…」
-青羽和泉「できなかったら、お別れしない方がいいってことだから。」
-青羽紬「そっか…。(母の方を見て、何か言いかけて、黙って前を向き直して) 死んじゃう前に、投げつけたの?」
-青羽和泉「ううん。とってある。すっごい美化されてるから、思い出す度、楽しい。」
-青羽紬「それはそれでいいね。」
-青羽和泉「(髪の毛を)縛ってく?」
-青羽紬「ううん。下ろしてく。ありがとう。行ってきます」
-青羽和泉「行ってらっしゃい」

「silent」第11話(最終話)-青羽和泉

想ともう一度だけ会うことを決めた紬が家を出発する前の、母・和泉との会話です。
和泉の登場シーンは決して多くはありませんでしたが、この母娘の会話にはいつも気付かされるものが多かったです。
この会話の後、紬は、高校時代のトレードマークで想も好きだと言っていたポニーテールではなく、髪を下ろし、待ち合わせ場所の高校へ、想に会いに行きました。
昔一緒に過ごした高校の教室で、昔の二人を取り戻すためではなく、今の二人で向き合うために。

それでも今は一緒にいたい

「一緒にいると辛いことがある。きっとこの先も一緒にいれば辛いと思うことが増えていくと思う。そのたびにこの前みたいに青羽に当たるかもしれないし、次は本当にもう会いたくないと思うかもしれない。長く一緒にいれば、青羽の周りの人も巻き込むことになるし、それで青羽が傷付くこともある。そういうこと、青羽と会って話すたびに考えて、悩むことが増えて、一緒にいていいのか、迷う。…それでも今は、一緒にいたい。」

「silent」第11話(最終話)-佐倉想

想が紬と向き合い、伝えた言葉です。
いつも一人で考えて、相手のことを思い過ぎて、自分の本音を押し殺してきたところがあった想。
そんな想が、今の自分の気持ちに正直になった瞬間でした。
一緒にいるということは、どちらかが一方的に相手を思うことではなく、こうやってきちんと伝え合って、向き合うということ。
この先どうなるかは、わからない。
今は、一緒にいたい。
シンプルな本音を、ちゃんと伝えられた想でした。

できるだけ分かり合えるようにたくさん話そうよ

「いつもゆっくり私に分かるように手話してくれるの、すごい嬉しかった。でも、本当に言いたいことちゃんと言えてるのかなって不安にもなる。佐倉くんが言いたいこと、全部言えるまで待つし、手話ももっと覚える。受け取れるように頑張るから、伝えるの諦めないでほしい。人それぞれ違う考え方があって、違う生き方してきたんだから、分かり合えないことは絶対ある。他人のこと可哀想に思ったり、間違ってるって否定したくもなる。それでも一緒にいたいと思う人と一緒にいるために、言葉があるんだと思う。たぶん全部は無理だけど、できるだけ分かり合えるように、たくさん話そうよ。言葉にできないときは、黙って泣いてもいいよ。私も黙って、背中さするから。」

「silent」第11話(最終話)-青羽紬

想の本音を受け取った紬が、想に伝えた言葉です。
たくさん話そう。一緒にいよう。二人が再び通じ合えたシーンでした。

「silent」のBlu-ray購入特典に、想が高校時代に読み上げた作文の原稿があるのですが、ここでのこの紬の言葉には、その作文に通じる部分があって、この物語のすべての答えがはじめから想の作文にあったのだということがわかります。
想にとって、聴覚を失い愛する人の声が聞こえなくなったこと、言葉で会話が出来なくなったことがどれほど辛いことだったのか。
作文をきっかけに想のことを好きになり、別れてからもずっとその作文を大切にとっておいた紬だからこそ、ここでこの言葉を想に贈ったのだということ。
そのすべてが、わかります。
ですが、その作文の全文はドラマの放送には乗っておらず、シナリオブックにもなく、Blu-ray購入者だけが分かるという、思わずうなってしまう仕掛け。
その作文を受け取ることが出来た時、「silent」ファンとしては、本当に幸せな気持ちになりました。

何かを楽しむことより、何かに傷つかないことを優先してほしかったの

-佐倉律子「あのね、何かを楽しむことより、何かに傷つかないことを優先してほしかったの。でも楽しそうなの見るのが、結局やっぱり、ほっとする。楽しそうでよかった。紬ちゃんは?」
-青羽紬「楽しいです。」
-佐倉律子「うん。ならよかった。」

「silent」第11話(最終話)-佐倉律子

想と紬が通じ合えた後、想の実家に立ち寄った際の、律子と紬の会話です。
想が心を閉ざしていく時間も、再び心に光が差してきた今も、ずっと見守っていた律子の、親としての素直な想いが感じられます。

青羽の言葉が見えるようになってよかった

「青羽の声、思い出せないし、もう聴けない。でも、青羽の言葉が見えるようになって、よかった。」

「silent」第11話(最終話)-佐倉想

ラストシーンのイルミネーションを見ながら歩く想と紬の会話の中での台詞です。
紬の声はもう聞こえないけれど、昔のように声では話すことが出来ないけれど、自分の思いを自分の"言葉"で一生懸命にまっすぐに伝えてくれる紬のその姿は変わらない。
声が手話に代わって、言葉が見えるようになって、ちゃんと自分に届く。
今の二人の関係がまた始まっていく、希望を抱くことが出来るラストシーンでした。



以上、ドラマ「silent」の名台詞集でした。

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