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春の西旅・九州へ④

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夜行列車で到着した早朝からたっぷり楽しんだ岡山の街を後にし、新幹線に乗り込んでさらに西へ。山陽新幹線内しか乗らないのであれば出来れば「のぞみ」ではなく指定席が2-2列の山陽区間単独列車を利用したいところだが、ここは行程上の速達性を優先した。新型で座席も改良されたN700Sなのでまだ良しとしよう。

路面電車から新幹線への乗換がかなりカツカツだったので、昼食となる駅弁は朝のうちに買っておいた。穴子を中心とした地のものらしいメニューに舌鼓。

新山口で後続のこだまに乗り換える。500系だったのでせっかくだからと6号車元グリーン車の指定席をチョイス。少しの時間ながらゆったり寛ぐ。JR西日本の車両ならではのいい日旅立ちチャイムが問答無用に旅情を煽る。

30分足らずで新下関にて下車。在来線に乗り換えて下関へ。

実のところここへ来るのは二度目だ。一度目は2021年9月の西日本一周旅行のときに、“本州の果て”として訪れここから山陰本線方面へ向かったのだった。しかし今回はここはゴールではなくむしろスタート側にある。

駅前からバスで来たのは唐津地区。関門海峡を望む観光スポットだが、それだけではなくちゃんと「実用」としても生きている場所でもある。

関門汽船、下関と門司を結ぶ航路が今なお現役で運航されているのだ。鉄道に道路、人道トンネルまである関門だが、なんだかんだ言って(入口が遠い人道トンネルよりも)アクセス性の良いこの航路は観光客を中心に多く利用されており本数も20分に1本と、関門航路は今も生きている。そして今回のこの後の旅程を考えた際、最も“正しい”関門超えは航路であると判断したのだった。

あっという間ながら非常に爽快で、関門橋を横目にまさに「関門海峡を渡って九州島に上陸した」と実感できる海峡越えであった。

さて、この日はこのまま門司港に1泊だ。時刻は午後3時半。日が暮れるまでしばし観光地・門司港レトロを散策する。

まずは前から気になっていた門司港レトロ観光線のトロッコに乗車。

貨車を改造した客車はよく揺れるが、低速で問題なく楽しい。
門司港レトロ観光線はれっきとした鉄道路線だ(日本初かつ現在唯一の鉄道事業法下における特殊目的鉄道)。廃線となった臨海鉄道を観光目的に活用した路線で、門司港レトロ地区の足であるとともに車窓を楽しめるアトラクションとしても機能している興味深い事例である。廃止された臨港貨物線を観光化するというのはかつて横浜みなとみらいでも試みられたが常設化には至らず、敦賀港でも惜しくも叶わなかったが、港湾地区の観光開発において今後同様の事例が出てくることを期待したい。

終点の関門海峡めかり駅は海峡の瀬戸内海側出入口にあたる。市街地からも離れのどかな雰囲気。

歩いて5分ほどで関門橋のたもとまで来た。こうして見上げると壮大な土木構造物だと感じさせられる。実は以前の九州行の際に「はかた号」で渡ったことがあるはずなのだが、二度寝していて全く車窓を見ていなかったという過去がある。
さて、ここまで歩いてきたのはもちろん目的あってのことだ。

オタクスポットとして有名な関門人道トンネル。関門海峡は海を挟んで一体の「関門都市圏」が形成されていることもあり、複数の渡海手段が用意されている。自分が使った昔ながらの船に加えて戦前に開業した在来線の関門鉄道トンネル、新幹線の新関門トンネル、一般道の関門道路トンネルに高速道路の関門橋、そしてこの関門人道トンネルだ。これは道路トンネルの余りスペースに併設されていて、自動車専用の道路部を補完するべく歩行者や二輪車用となっている。道路と一体のものなので人道トンネルも国道指定されており、先程乗ったエレベーターも「日本唯一のエレベーター国道」ということになるらしい。

ウォーキングコースとして利用している人がいて面白い。
せっかく“正しい”手段で渡って来たのをここで戻ってしまうと興ざめなので(単に遠いのもある)、最初から歩いていくつもりは無かったが一目見れて満足だ。

めかり駅まで戻り、最終のトロッコで門司港レトロ地区に戻った。

⑤へつづく


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