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春の西旅・九州へ①

どうもナトリウムです。
これまで旅行記はTwitterにスレッド形式で投稿していましたが、昨今のTwitter情勢の諸々を鑑みて、今後(少なくとも今回)はnoteに上げることにします。過去のnote旅行記とは異なり筆者が書きやすいよう写真多めでシンプル淡々に書いていきますので、よろしくお願いします。では。


旅の始まりは3月31日、金曜夜の東京駅。一旦帰宅してシャワーを済ませてから来たのは20時半ごろ。この時間はまだ新幹線もあるため、せわしく歩く通勤客に混じって自分と同じように大荷物を持った旅の人たちが行き交っているのが旅情をそそる。予約していたきっぷの発券などを済ませ、東京駅構内の商業施設グランスタに向かいスクエア・ゼロへ。往年の西への寝台特急たちを称えるこの展示を一目「詣でる」のが定番となっている。
さて、グランスタに来たのはもう一つ大事な目的がある。

「STATION RESTAURANT THE CENTRAL」で夕食を。“中央停車場”を旅立つ夜には、やはりこの店が好い。質の高い洋食を味わい、時間に余裕があったのでもう一杯。ハレの日としての気分が高まる。程よく酔ったところで店を後にし、この先の酒とツマミを買いそろえたら荷物を持っていよいよ9番線ホームへ。

さあ、東海道線9番線ホームに佇むのは日本最後の定期寝台特急・サンライズエクスプレスだ。既に何度も乗ってきた列車だが、やはり西への旅立ちはこれが至高だ。旅情だけでなく実用面でも、早朝に向こうに着けるのは実際便利で、金曜夜発のプレミアチケットを何とか押さえた次第だ。

今回取れたのは階下シングル。眺望は劣るが、春休みの金曜という日取りで取れただけでも幸運と見るべきだろう。階下シングルは初めての乗車だったが、実際に乗ってみると上階の個室よりも天井が高く窓の天地寸法も大きいことから、圧迫感は全く無かった。木目調と暖色系の内装が非日常感を演出してくれる。

さあさあ夜はこれから。買い込んだ酒を並べて準備は万全。
21時50分、定刻通り列車は東京駅を発車。同時に、ビールのプルトップを開けて煽る。この瞬間がたまらないのだ。

プラットホームを離れ、列車は夜へ飛び込んでいく。サンライズの個室乗車では部屋の明かりを消すのが乙な愉しみ方。東京を発つ夜景が視界に溢れる。この車窓があればツマミなんか無くてもいくらでも飲めそうだ。
今回は右側の個室。下りサンライズの場合、左側だと相模湾や瀬戸内海といった車窓を得られるが、右側もいくつもの線路が並走し列車が走る東京都市圏を感じられこれはこれで趣がある。窓一枚隔てた日常を非日常の客として眺める、というのが在来線長距離列車の醍醐味だ。

列車は最初の停車駅横浜に。東京と横浜の両駅でほとんどの乗客を乗せ、次の熱海までは1時間以上停まらない「特別急行」らしい区間に入る。ただ、以前東京22時00分発だった頃と比べて熱海までのダイヤに10分の余裕が出来たことから、だいぶゆったりとした走りになっていた。

熱海、沼津…と静岡県内の停車駅を着実に進んでいく。ワインの空いた頃には時刻はまもなく0時。明朝も早いのでここらで仕舞いにしよう。洗面台で歯磨きを済ませ、東海道線の線路に揺られながら眠りについた。


4月1日、朝5時。早くも目が覚めてしまった。寝台列車というのは熟睡できないものなので、5時間も寝られれば良い方だろう。ブラインドを上げると、車窓はようやく空が白んできたころで、街はまだ眠っている。

朝最初の停車駅、姫路は関西圏の西端だ。ここを過ぎると、車窓には田畑と集落と山並みが連なる。―京阪神も遠ざかった山陽本線らしい車窓に迎えられる朝、これがサンライズエクスプレスの味わいだ。

車窓にはときおり桜が流れて行った。ちょうど桜の開花時期である。見頃の短いこの花が日本中に咲くこのタイミングで旅に出られたことは幸運であった。

6時半、最初の目的地岡山に到着した。夜行列車を降り、眠たい肺に吸い込む朝の冷たい空気は、他に代えがたい美味しさがある。
サンライズはここで出雲号と瀬戸号に分かれる。切り離し作業を大勢の乗客が見物しており、人気さがうかがえる。

朱色のキハ40を見ると西日本の地方部に来たことを実感する。ちなみに写っている津山線快速ことぶきは、旅程を立てている際に乗車を検討した列車だ(単純往復になるため見送ったが)。「急行列車」概念を追い求めるオタクとしてはいつか乗っておきたいところだ。

駅構内の麺処でうどんを朝食に。以前サンライズで岡山に来たときもこの店を利用したが、夜行列車明けの気怠い身体に西日本らしい優しい出汁が沁み入る。

というわけで岡山の街に降り立った。今回の主目的は九州だが、その前にこの街で見ておきたいものがあるのだ。この日の午前中はここ岡山を見物する。

②へつづく


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