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北海道の森に残る小学校をアトリエに

四季を感じながら制作する時間

今井 今回から、北海道白老町で彫刻家として活動される国松希根太さんにお話を伺います。

村上 今日は自宅のある札幌から多分ご出演いただいてると思うんですけれども、国松さんは元小学校だったところをアトリエにしています。そこは周辺の森も含めていろんなアート作品が森の中にあるような場所です。僕も先月訪れさせていただいて、いろんなお話をさせていただいたんですけど、その場所というのは、国松さんの世代の前からいろんな方がアトリエとして使っていたのが今、オープンコミュニティーみたいな形でいろんな人がそこに集いながら森を作り芸術を楽しみ、でもそれが決して、芸術をずっとやってる人ではなくて一般の人たちも集まりながらっていうような場所の中心に国松さんはいる。
どうしてこれが成り立ってるんだろうと僕は不思議に思うし、その中で国松さんは作品作りもされて展覧会をされてたりしています。今日は何でこういうものが成り立っていくのかみたいな話を伺えればと思っています。

今井 国松さんが主に活動されている白老町のアトリエですけれども、この時期となるとどういう場所になるんでしょうか?

国松 元々小学校だった木造の校舎なんですけども、森に囲まれた小さな小学校だった場所なんですよね。
校舎の前にはグラウンドがあって、校舎の後ろに森があるような学校です。

村上 北海道は寒い印象がありますけれども、白老町だったり小学校のあたりは雪に関してはどうなんですか。


国松 そこの地域自体は札幌だったり新千歳空港なんかからいえば南にあるので、雪自体はそこまで多くはないんですけど、海沿いよりは6キロほど山に入るので、降るときは30~40センチぐらい降るような場所です。

村上 春とか夏とかそういった時期はどんな風景になるんですか。

国松 そうですね、特に校庭には元々植えられていた桜があって、グラウンドを桜が囲むような、すごくいい時期です。北海道だとちょうどゴールデンウィークぐらいに満開になるようなタイミングなんですけど。その辺がすごく過ごしやすくて、6月~7月あたりはちょっと雨が多い場所なんですよね。今ぐらいになると寒くなり始めて、校舎自体が木造で、木の窓枠だったりするので、ものすごい寒くて、ストーブをつけてもどんどん逃げていってしまうし、寒い空気が入ってくる。そんな場所です。

村上 夏と冬のメリハリという意味では、湿度とか気温も当然変わってくると、作る作品に何か春夏の作り方と、秋冬の作り方なんか、ちょっと変えたりっていう、そんな変化もあったりするんですか。

国松 やっぱり夏は材料を外に出して、おもいっきり外の太陽の下で大胆に作業したりする時間も割と好きなので、そういうことをするんですけど、やっぱり冬は雪があるので、なかなか外に物を出し入れっていうのが難しくて、どうしても内側にこもっていくような感じになるので、制作のスタイルはやっぱり違うなと思ってます。

村上 ちなみにどっちの季節、二つの季節だけではないと思うんですけど、作品がたくさんできる、作れるのはどっちですか。

国松 そうですね、集中してどんどん完成させていくようなのは、冬の方が多い気もするんですけど。ただちょっと大胆な制作だったりそういうのが夏はできるので、自分の場合、作っていく集中の仕方が少し違うような気がしています。

今井 自然に囲まれた場所だから、作品作りや作品にも季節が影響してくるっていうような感じなんでしょうかね。

国松 そうですね。やっぱりアトリエの中でしかできないというよりも、外も使えたりする場所なので、外の環境が影響してくるっていうのはあると思います。

土地とその名前の関係の面白さ

今井 私は白老町と聞くとやっぱりウポポイ、国立アイヌ民族博物館ができたっていうのが印象にあるんですけれども、白老という地域は、やはりアイヌ文化が色濃く残る場所なんでしょうか。どういう暮らしをしてる人たちが多い地域になるんでしょうか?

国松 地理的には海に面しているんですけども、町の大半が山林の面積が圧倒的に多くて、ただ人が住んでるのは海沿いの方に固まって住んでいるので、割と横長のイメージです。東側でいうと苫小牧っていう町と接していて、西側でいうと登別っていう町と接していて、漁業だったり卵とか白老牛っていう牛肉があったりとか、タラコが有名だったりとか、すごく特徴がある町で、その中でもちろんアイヌ文化っていうのがずっと培われている場所なので、実際に生活していて、アイヌの方と接することも多い町です。

国松 北海道は全般的に地名の中にアイヌ語をもとに漢字を当ててみたいな地名が多いんですけど、どんなふうにその地域の名前ってのを感じてらっしゃるんでしょうか。

村上 僕も小さい頃、例えば「札幌」だとかよく聞く地名が、そのアイヌの言葉が語源になってるっていうことを知らずに使ってきているんで、おそらく言葉の意味をすごく意識してるっていう人はもしかしたら少ないかもしれないんですけど。ただ最近、アイヌの言葉だったり、文化っていうのをより知りたいなっていう人はすごく増えている印象があって、そういう中で、地名の意味を知ることで、またその地域が違って見えてきたりとか、調べることが面白いっていうふうになってる人が多いんじゃないかなと思ってます。


村上 白老町の中にあるアイヌの名前がついてる地域が、例えばどんな意味があって、その名前とその実際の風景を見たときに国松さんご自身が「こう付けるのってちょっとセンスもあって昔の人っていいな」って思う名前とか、そんなのあったりしますか。

国松 そうですね。ちょっと白老の隣の町の登別っていうのが、ヌプルペッっていって、濁った川っていう意味があって、そこはよく考えてみたら登別の温泉が白く濁ったものだったりっていうところで、なるほどっていうところはあるんですけど、白老の中ですと、倶多楽湖っていう正円に近いきれいな湖があるんですけど、その倶多楽湖っていうのはイタドリの生えているところっていう意味で、そこの地元の虎杖浜っていうのも、イタドリが多いところっていう意味があって、実際に今も多く生えていたりするので、センスというよりもやっぱりそこに多くあったものとかを明確に表す言葉っていうのが多いのかなっていう印象はあります。

村上 国松さんご自身が作品を作られるときに、いろんな場所、風景を自分がご自身の足で歩いているっていうふうに伺っているんですけど、そうすると国松さんご自身がやっぱここすごいなって思うところだったりとか、そこはそんな名前ついたりとか、誰も気づいていなかった国松さんのとっておきの場所とか、そんなような場所って街の中にあったりするんでしょうか?

国松 そうですね。白老で暮らしてるうちに、なんとなくここの土地は力があるなとか、何か引かれる部分が出てきて、そんなときにアトリエの周辺を散歩してるときに、いつも冬とか春になると山の上に白く雪が積もって、すごく気になる山脈だなって思ってたんですけど、ただその山は何か名前がある場所なのかとか、そういうことをわからずにただ見ていて、想像でまだその山に登ったことはないんだけど登ったらもしかして上に湖があったらどうだろうなとか想像しながらこれを作品にできないかなとかって思い始めたことがあって、それを実際に作ってみて、その後で地図を見てみたら、ホロホロ山っていうかわいい名前がついていたとか、そういうように、最初に景色と出会って後で名前とか意味を知っていくみたいなことっていうのが自分の中では自然です。有名な山とかを見に行くのももちろんいいんですけど、ふとした瞬間に出会った風景をちょっと探っていったときに見えてくる背景や歴史みたいな、そういうものは自分しか感じられない景色みたいな部分なので、大事にしたいというところがあります。それから少しずつちょっと海のところを見ると、ポツンと岩がある場所があって、そこは特に名前がついてるとは聞いたことないんですけど、そこに行くのが自分は好きで、いろんな季節に行ったり、いろんな時間帯に行ったりっていうのが今、習慣的に行ってる場所ですね。

今井 多分、訪れる人によって気づくことがいろいろ違うのかなとも思いますが、もし自分が行ったらどんなところが見られるかなってちょっと楽しみになりました。
(文 ネイティブ編集長・今井尚、写真提供 国松希根太)

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次回のお知らせ

北海道白老町の飛生(とびう)という地区にある使われなくなった小学校をアトリエとして彫刻をつくり続ける国松希根太さんにお話を伺います。この土地との出会いや、そこから始まった地域との関係、作品が生まれる瞬間や使う素材の変化などについても聞きました。

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