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【詩】「ある幸せの記憶」

苦しかったけど

幸せだったんだ
そう 幸せだったんだ

君が微笑んでくれたことが
君が涙を流したことが

今、僕がここにいること
今、君がここにはいないこと

その痛みはもう本来の痛みじゃないけど
切なさは胸にずっと残ってる

君が最後に焼いた一葉の写真
誰も映っていないある部屋の写真
そして、君の言葉を伝え聞いて僕は泣いた

哀しいけど

僕も幸せだったよ
そう 幸せだったよ

君が微笑んでいてくれた
君が涙を流してくれた

いっぱいいっぱいだったけど
自分のどうしょうもなさに崩れそうだったけど

僕がそこにいたこと
君も一緒にそこにいたこと

その景色はもう僕の思い出の中にしかなくて
ずっと僕だけが持っていくのだけど

誰かを喪ってでも
誰かを傷つけてでも

君を抱きしめていたかった
君を守っていたかった

その想いだけがあの日々の中で頼りにしていた標だった

若かったがゆえの過ちと他人は笑うだろう
でも、その短い二人きりの記憶が
君の「それから」を支えていただろうし
僕も支えられていた

苦しい別れを選んだけど
哀しい別れを経たけれども

幸せだったんだ
そして、これからもずっと幸せだろう

静かにこの想いを深呼吸とともに吐き出して
冬が終わった空を見上げた

今、僕はここにいて
君もどこかにいてるはず

ねぇ 君に届くかな?
ねぇ 君に届くよね?

あの時、僕は確かに幸せだったよ
辛かったけど、二人でいることで幸せだったよ


Inspiration from 「swan song」

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