見出し画像

【詩】「溺愛」

眠れないと言ってきた君に
あくび噛み殺しながら
「じゃぁ もっと話しようよ」と
メールを送ってた真夜中

案の定、次の日の仕事は散々で
ぼやけた視界で数字を見間違え
上司に「しっかりせぇ!」と怒鳴られた
外は晴れ 内は雷ゴロゴロ響く

出来合いの弁当をかきこみながら
左手の指で君に愛をつむいだ
思い返せば何て不恰好だったんだろう
君の寂しさの理由を分からずに
ただ君に溺れてるだけだった僕

行かせないと言い放ち
君を引き寄せて
他人の目を気にせずに
激しくキスをした夜もあった

それでも、君はどこかへと還る
押し切れない僕の弱さと言ったらそれまで
いつかは背中を向け合うことが分かってた
街は雨 君に差し出す傘はなかった

「できないの?」その言葉で僕は目ざめた
もう僕の指は君に何も綴れない
思い起こせば何て独り善がりだったんだろう
君の視線の行方を追うこともせずに
君に溺れてるという自分に酔っていた

目を開けて空を見上げた
もがいてた腕を脚を静かに止めた

思い返せば何て盲目だったんだろう
君の言い訳を全て疑いもしなかった
ただ誰かに溺れていたかった僕

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?