見出し画像

再掲【詩】「酔い」

薄暗い風景の中
また少し氷が溶けて静かに鳴る

見つめる視線の先で繰り広げられる
人と人が織り成す喜劇

穏やかな微笑を交わしながら
言葉を積み重ねて
出口のドアをくぐるまでに
これからの行き先を探してる

頬杖つきながら聴こえない言葉に
耳を澄ませている僕の前を
通り過ぎていくいくつかの物語たち

窓の外の景色は
ネオンサインが映える暗さで輝いてる

何かから逃れたいために酔いにつかまる
言い訳を増やしたくて酔いの中に沈む

そして見つめる視線の先で揺れている
人と人とが燈す消えそうな灯り

窓際のテーブルでグラスを傾けている
その女優の頬を伝う涙も

隣のテーブルで手元に視線を落としながら呟く
その老優たちの人生を語る皺も

この世にあまねく在る全てはうたかた
それでもとこしえを信じたくなるから人はなおさら儚い

頬杖つきながら静かなざわめきに
耳を澄ませている僕の前を
今夜も通り過ぎていく物語たち

この記事が参加している募集

#今こんな気分

75,432件

#この街がすき

43,617件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?