毎日新聞デジタルアカウントが生活保護統計に関して難癖
毎日新聞デジタルアカウントのこのツイートですが、生活保護統計を悪用して難癖をつけています。
毎日新聞デジタルの生活保護に関する菅官房長官発言の「ふぁくとちぇっく」記事
実は増えていた 「アベノミクスで生活保護世帯は減少」菅長官発言は不正確 会員限定有料記事 毎日新聞2020年9月12日 10時00分(最終更新 9月12日 22時10分) 吉井理記
自民党総裁選まっただ中である。首相の椅子を争う3氏の一人、菅義偉官房長官が力説したあるセリフが引っかかった。「アベノミクスが始まって、明らかに生活保護世帯は減った」。何せ次期宰相最有力とされる菅長官である。言葉の重みが違う。見逃せない。そこで統計を調べてみたところ、生活保護世帯は逆に増えており、不正確な発言だった。生活保護を受けている実人数は近年減っているが、高齢化の影響との見方もあり、アベノミクスの効果といえるかどうかは不明だ。【吉井理記/統合デジタル取材センター】
まず、元の毎日新聞の記事は吉井理記記者による毎日新聞デジタル上のもので、紙面には存在していません。
その主張は「生活保護を受けている「実人数」は近年減っているがアベノミクスの効果と言えるかは不明で、生活保護「世帯」は逆に増えており、不正確な発言だ」というものですが、言いがかりでしょう。
厚労省の生活保護統計
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図表4-1-1 被保護世帯数、被保護人員、保護率の年次推移|平成30年版厚生労働白書-障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に-|厚生労働省
平成30年版厚生労働白書-障害や病気などと向き合い、全ての人が活躍できる社会に-(本文)|厚生労働省
菅義偉議員は上昇トレンドから下落に転じたことを指摘している
厚労省の生活保護統計を見ると、2012年12月に発足した第二次安倍内閣の当初の時点から比べると、確かに生活保護受給世帯数は増えています。(受給者数は当初より減っている)
しかし、それまで急激な上昇トレンドであったものが、2016年と比べて2018年は下落に転じています。
菅義偉議員は、そのことを指して「(生活保護世帯数は)アベノミクスが始まって減り始めた」「少なくなり始めてます」「数字で明らかに生活保護世帯が減ってます」と言っています。
「上昇トレンドから下落に転じた」と言ってるのです。
経済政策というのはタイムラグがあるものというのは常識であって、ある一時点でのみ効果が発生しているのではなく、政策実行後はずっと実行状態が継続し、その途中で内容も変遷していくものです。
そしてこのような統計というのは「トレンド」で読むべきものです。
そうでなければ、政策実行前の「マイナスの勢い」が非常に激しいものであった場合に政策評価が不当なことになります。
たとえば「増加」が悪いものだとして、急増トレンド=増加率が高いものであったのを低い増加率に抑えた場合であっても、「実数は増えている」ことになります。この場合に「政策の効果が無かった」と即断するのは不合理です。
動画の後半から生活保護世帯数について言及がありますが、菅義偉議員は統計グラフの動きを意識して左手でトレンドの動きを表しています。決して「第二次安倍内閣発足当初よりも減っている」という意味では言っていないのが明らかです。
アベノミクスと生活保護受給の因果関係が本質
本質的な問いは【アベノミクスと生活保護受給の因果関係は本当にあるのか?】というものです。
経済状況が良い時期には生活保護受給者数は減る傾向がこの統計からは伺えるため、生活保護受給者数が減ったことによって経済状況が良くなった=経済政策が成功していると評価するのは一応は正当でしょう。
また、生活保護受給世帯数も近年はそれまでよりもより受給者数に近い動きをしている(単身世帯の受給者が増えている)ため、同じように言えるでしょう。
ただ、果たして本当にそうなのか?アベノミクスによって景気がよくなり、その結果として生活保護受給者数・受給世帯数が減少傾向になったのか?という因果関係の問題については、多角的な検証が必要です。
受給者数・世帯数は行政側の「絞り」=受給要件の実質的な厳格化あるいは緩和によっても変わりますし、人口動態でも変わり得る話ですし、予算規模によって枠づけられているかもしれませんからね。
そこは慎重に検討する必要があると言えますが、少なくとも毎日にあるような「高齢化の影響」というのは、高齢者世帯数の「増加率が減少」している結果などからは排除される考察でしょう。
毎日新聞デジタルの記事は(有料部分は見てないがおそらくは)単に厚労省統計のグラフを見ただけで「菅の言っていることは間違っている」と言っているだけであり、まったく本質的な議論に繋がりません。
以上
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