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FFXIV 僕らは久遠の絆を誓い合うことにした。(2)
短いような長いような四日間の話。
試される絆?
二年越しで漕ぎ着けたエターナルバンド・セレモニー挙式。
その申し込みや確認に大聖堂へやって来た私と相棒さん。
ところが突然『エタバンできないかも』と相棒さんに言われ、困惑する私。
『新たなパートナーとエターナルバンドを結ぶ為には、以前のリングを返納して下さいってNPCが…』
『そうですね、それで以前のエタバンは解消したと聞きましたが…』
『返納してないんです、棄てました』
『えっ!?』
最近『えっ』ばかり言っている私だが、この時はいつにも増してハッキリと『えっ』と言った。先ず落ち着いて状況を整理したい。
『ここにリングを返納する為に訪れたんですけど、何故か返納できなくて。だけど持っておきたくなくて、一刻も手離したくて捨てました。』
『そ、そのアイテムは捨てられるモノなんですか??』
『わからないけど、捨てることができたから、それは解消できたことなのかなって思って…』
『う、うーん、ゲームはプログラムで動いてますから、返納してくれと言われたら返納しなければ解消は完了できていないと思います』
『どうしよう…』
時は既に夜半を過ぎていた。
難航する確認作業。
先ず確認したいのは、以前の〝エターバンドが解消されているのかどうか〟だった。
相棒さんが以前の相手とのエターバンドを解消してから既に1年以上が経過しており、当時の記憶を詳細に辿って貰うのは困難だった。
習慣として、私は相棒さんから当時聞いた話のほぼ全てを議事録の様に記録していた。話に聞いた出来事のボリュームが大きかった為、記憶違いの防止や時系列の整理の為だった。
しかしこれも話しに聞いたままの記録なので、今の相棒さんに再度尋ねても内容に大差はない。
何か確認方法があるはずだとふたりで探すことにした。
真っ先に公式ページのエターナルバンドの項目を全て読んだ。
セレモニーの手順については詳細に説明されていたが、その解消についての記述は見つけられなかった。
公式サイト内にある各プレイヤーが利用できるページに、“エターナルバンドの公開範囲”について設定がある。この公開設定をデフォルトの非公開から公開にして貰えば、何か見つけられるだろうか。
相棒さんに公開設定にして貰ったが、変化はなかった。解消されているという事なのだろうか。不確実な結果だ。
非公式サイトでのエターナルバンドの記事もめぼしいものには全て目を通した。いずれも確認方法については書かれていなかった。
相棒さんが、Yahoo知恵袋に同じようなトラブルになってる人がいる、と言うので読むと。
「リングを紛失したらエターナルバンドは解消できない」との回答だった。
そんな馬鹿な。だとしたらそれはバグじゃないのか?と狼狽した。
そんな不完全なシステムでサービスがリリースされていたらおかしい。
そんなはずはない。
相棒さんはすっかりうろたえて、諦め始めている様子だった。
検索したところで、どれも公式の回答ではない。
わからないことはサポートを使って運営に問い合わせてみましょう、と相棒さんに提案した。
まだ「できない」と決まったわけじゃない。考えられる限りの方法を試めさなければ。
エターナルバンド解消の為に必要なリングを紛失したので再入手したい旨と経緯を書いて、相棒さんはゲーム内からサポートに送信した。
救済措置は何度も利用できない上に、遺失物は紛失から一週間以内でないと確認できないと公式サイトに明記されていた。
望み薄だが、一つずつ疑問を解消していくより他はなかった。
返事を受け取るまでエターナルバンドの申し込みは保留にした。
『諦めない』と言う望み。
解消されたかどうかを確認せずにスペシャルクエストを受注する、という確認方法もあるのかもしれない。
解消されていなければ、クエストそのものが受注されないはずだと相棒さんは言う。それでも、頭の堅い私は『確認ができていない』ことに固執し、運営の返事を待ちましょう、と試すことをしなかった。
試しにクエストを受注して、それが受けられるか否かで解消の確認可能かどうかも、どこにも記述がない。これも不確かだと、私は二の足を踏んだ。
なにもかもが情報不足だった。
スペシャルクエストを受注する為には、有料・無料いずれかのセレモニーを公式サイトで申し込んだ上で、ゲーム内で受注する形式だ。
一度無料プランで試して、okなら本来希望したプランで再度申し込みましょうと相棒さんに進言されたのだが、その確認方法を頑なに私は拒否した。
それはなんだか薄ら悲しい気持ちになるし、またそこで余分に手順を踏んでトラブルを重ねてしまっては収拾がつかなくなると警戒したからだ。
ふたりの性格の違いがハッキリと見えるエピソードだなと、後になって思うのだった。
その良し悪しではなく、違っているからこそ補い合えて楽しく過ごせているのだろうと私は信じている。例えそれが、お互いの思い込みで困った事態になろうともだ。
翌日夜、送信から一日経たないくらいで相棒さんの元へ運営から返事が送られてきた。
『調査可能な期限が過ぎている為、対応を承ることができません』
丁寧な文章の末尾には希望に添えないことへのお詫びの言葉が添えられていた。
リングを返納してエターナルバンドを(確実に)解消し、再度、新たなパートナーとエターナルバンドを結びたいが、その為のリングを再入手できない。
すっかり意気消沈している様子の相棒さんは、新規キャラクターを作ってでもエターナルバンドを実現したいと言う。気持ちはとても嬉しかった、けれどそれは最終手段だ。
二年近くふたりで共に遊んできたお互いのキャラクターには思い入れがある。
例え姿形が同じでも、中の人が同じでも、“以前のエターナルバンドが解消できなかったから”と言う理由での新規キャラクターで再スタートを、私は考えたくなかった。
同一ワールド内では同じ名前のキャラクターを作れないことから、もしそうなれば名前も変えなければならない。他の手立てを考える傍ら、ショックを和らげようとあれこれと別プランの話をした。
(※それまでのメインキャラクターの名前を有料の変更手続きをして少し変え、新規キャラクターに以前の名前を付けられたとしてもだ。)
楽しいはずのゲームが、今日は全く身が入らなかった。
私の問題としての問い合わせ。
相棒さんが受け取った返事からすると、我々のエターナルバンドは頓挫してしまう。しかしそれは『アイテムが再入手できない』点についてだけの話だった。『返納したかどうか』は未だ確認できていなかった。
ここをなんとかしたい。
私は自分の問題として公式サイトからログインして問い合わせた。
ゲーム内からでは字数の制限もあり、経緯をまとめるのが難しかったからだ。
私の方からは、エターナルバンドを行いたいが、相手が以前のリングを紛失している為、エターナルバンドを解消できているのかどうかわからず、相手からはエターナルバンドが出来ないと言われているが、この状態からエターナルバンドを行う方法があるのだろうか、と言った内容で書き送った。
なんともややこしい話だなと思いつつも、一縷の望みだった。
最初の回答では、我々の希望は叶わない。
返事を待つその日はまたゲームにも身が入らず、ふたりで釣りをして過ごした。
以前にも輪をかけて相棒さんは後悔している様子だった。
当時は仲違いしていなかったとは言え、実装されたからという興味本位でエターナルバンドをしたことを後悔している。
だけどその後、当時のふたりがプレイスタイルのあまりの違いから一緒に遊ばなくなるなどとは誰も予想していなかっただろうし、後悔よりもやるべきは解決方法の模索だと、私は思いたかった。
自らの視野狭窄も疑いたく、手掛かりになりそうなものは再読し続けていた。
その昔のエタバンのせいで全てを台無しにしない為に。
大聖堂にふたりで出かけてから、既に3日が経過していた。
再回答と光明。
ゲームはいつも22時頃スタートと活動時間の遅い私は、またも憂鬱な気持ちでFFXIVにログインしていた。一日経つも運営から返事がないからだ。
数日お時間を頂く場合がありますとは知らされていたが、早くこのモヤモヤした状態を脱したかった。
今日もゲームにイマイチ身が入らない。
しかしこんな時にこそ、いつも通りに過ごすことが精神衛生上は好ましいものだ。このままの状態が続くのなら、事をもう一度整理して、試しにスペシャルクエストを受注するのもいいかもしれないな、と思い始めていた時。
私のiPhoneからメールの受診を知らせる通知音が短く鳴った。
メールに目を通す前に、この時間でもサポート対応をしてくれているのだろうか?とありがたくて頭が下がる思いだった。
メールを開くなり、iPhone8plusの画面いっぱいが文字で埋め尽くされていた。
こんなにビッシリ書かれているなんて何事だろうかと、問い合わせておきながら他人事のように一歩引いて読み始める。
「大変恐縮ではございますが、ご相談の内容はゲーム内の窓口からのみ承っております。」
知ってる、知ってるけど、今回の様な問い合わせが該当する項目が一見判別できなかったので、敢えて通常の窓口から問い合わせました、申し訳ない。
「エターナルバンドを解消できないご本人様からの問い合わせが必要となります。」
知ってる、知ってるけど、以下同文。陳謝。
「また併せましてエターナルリングは破棄することができないアイテムとなります。」
えっ!?
「紛失しているのではなく所持していないのであれば、既にエターナルバンドは解消されているものとお見受けいたします。」
えっっ!?
全文に渡って丁寧な説明と、最後にエターナルバンドのスペシャルクエスト受注の手順が書き添えられていた。
運営がそう言うのなら間違いない。
では通常通りに申し込んでクエスト受注で良いのではないだろうか。
相棒さんは尚も、
『リングを捨てる時に“それでも捨てますか?”って警告文が出たので、捨てるを選んで捨てたんですけど…』
と言う。
お互い混乱が続く。
小1時間ほどゲーム内の自宅の庭でふたり、立ち話をしていたら門柱の辺りから視線を感じて二度見した。
新居を我々の自宅近くに構え、ご近所さんになったフレンドさんがコンテンツへお誘いしようと、門柱からポージングしながらこちらを伺っていた。
何というタイミング、昨年エタバンしたばかりの新婚さんじゃないか!!と、有無を言わさず庭に連れ込んだ。聞きたいことがあったからだ。
我々のいつもと違う様子がすぐに伝わったらしく、フレンドさんも神妙な面持ちだ。
単刀直入にエタバンをしている事が確認できる方法を尋ねた。
ことの次第を手短に伝えて、協力を仰ぐ。
ゲーム内のメニューや公式サイトのプレイヤー専用ページも調べて協力して下さったが、直ぐに確認可能な項目はなかった。
三人寄ればなんとやら、フレンドさんの提案で取り敢えずクエストを受注してみようという事に。
フレンドさんの訪問直前に同様のことを考えていた我々の元に、先程、公式ページで購入していたアイテムが届き、丁度受け取った。
日付も唐に跨いで、この混乱から4日が経過していた。
改めて僕らは久遠の絆を誓い合うことにした。
『行ってみましょう!』とフレンドさんと相棒さんに促され、頭の硬い私も今度こそはと重い腰を上げた。
私が慎重に慎重を重ねたのは、なにも有料プランの費用が惜しいからではない。またなにか頓挫することが起きて、これ以上お互いにショックを受けるようなことは極力避けたかった。
そうして3人で真夜中の大聖堂へと向かった。
こんな時間にフレンドさんを巻き込んでしまい申し訳ないと思いつつも、快く同伴して下さったことを感謝した。
公式ページで散々読み返した挙句、問い合わせ回答でも書かれていたお陰で、我々は間違いなく手順を踏んでエターナルバンドのスペシャルクエストを受注した。
ことがすんなり進んでしまい、逆にコレで大丈夫なのかと私は訝しんでいた。
4日も悩まずに、最初から試しに受注すべきだったのだろうか。
またクエストの途中で「進行できない」なんて言われやしないか。
拍子抜けと不安とで固まっている私を尻目に、相棒さんとフレンドさんは大喜びだった。ふたりが喜んでくれるのならそれでいい、と気を取り直して心底喜びを噛み締めた。
確認を取りたいばかりに考えまくって、寝付きが悪くなったり腹を壊したりしていた自分を情けなく思った。しかし親しいフレンドさんや相棒さんのおかげで困難をクリアできた。
そして運営さんからのアドバイスで“リングは破棄できないアイテム”と知ることができて、これが何よりスッキリした。
問い合わせて良かったと内心何度も胸を撫で下ろした。
後はクエストをふたりでコンプリートして、セレモニーを予約するだけだ。
☆
この日の深夜、再び相棒さんの元へ運営さんから『不足していた内容があった』と補足のメールが届いた。
自分では破棄できない特殊なアイテムである為、所持していない時点で正しく返納できていると思われますと記されていた。運営の方で念の為にと、相棒さんの情報を確認して『エターナルバンドができる』状態です、とわざわざメールを送ってくれたのだった。
運営から二度も念押しされ、ようやく私を覆っていた霧が晴れた。
仕事とは言えここまで丁寧に対応してくれるものなのだろうか、感謝の言葉が見つからなかった。
☆
後日、まだ疑り深い私はどこで躓いたのか??まだ何かを見落としている気がして、相棒さんに以前送ってもらった問題のシーンのスクリーンショットのログを目を皿にして読んでいた。
特に、相棒さんが「エタバンできない」と言っていたシーンのログを読んだ。
『腕輪を装備して下さい。以降は初めて受注した時と同じように進めることができます。』
初めて受注したときと同じように進めることができます!!
大事なことなので、二度書いた。
答えは最初のスクリーンショットにあったのだ。
相棒さんに『できない』と言われて、慎重だと思っていた私も相当に慌てたのがここに見て取れる。今頃になって、ふたりともどんだけ慌てたんだと赤面しているのだが、これを書いている今となっては良いエピソードだと思いたい。
(そういうことにしておきましょう)
確かに、このNPCの会話では「まだ返納されていませんので、返納してくださいね」と言われているように見えなくもない。
慌てた時にこそ状況確認を慎重にすること、そしてゲーム内の出来事についての相談はログウィンドウを最大に開いてログ全文を読んでからにしようと教訓を得た。
長い長いゲームライフで過去にもトラブルがあった時には、そうしてきたじゃないか!?と再度自分に言い聞かせた。
1ヶ月にも感じた4日間だったが収穫もあった。
ゲームとは言え、たくさん話し合って、そこへ注いでいる情熱をお互い確認できた。そうしたことで、やはり相棒さんとならこの先もきっと楽しく遊んでいけるだろうとの思いを強めた。
みんなでお祝いしたいのは。
私には初めてとなるエターナルバンドだけれど、相棒さんにも初めてだと思えるようこのイベントを楽しんで欲しい。
相棒さんがゲームの中での出来事を随分と後悔している様子を、この2年ほど私は見てきた。なにか手助けができたならと、ずっと考えてきた。
以前の相手から逆恨みの如くSNSで誹謗中傷された時は尚更だった。
時には無力感に苛まれた。
エターナルバンドをしておけば、そんな好き勝手に言わせておくこともないのではと以前は安易に考えていた。
でも今は、少し違う。
過ぎた出来事は変えられないけれど、自ら環境を変える選択をしたことで新たに仲間を得て、そこに必要とされる自分がいることを相棒さんには知って欲しかった。そこから逃げ出したのではなく、改善しようと試みたことに自信を持って欲しかった。
その為にも、フレンドのみんなで集まってお祝いできるイベントをしたいと思い立った。
ふたりでなくてはできないイベントを。
余談だけれど、一度目は同性キャラクター同士の内輪での挙式で、その様子を嘲笑されつつ済ませたと聞いた。思うところあって行うイベントを面白がられて笑われるのは、あまり気持ちの良いものではない。
奇しくも、今回も同性キャラクター同士のセレモニーになるが、これは過去の残念な出来事を上書きする機会にできないかと考えた。
思うほど簡単に整理できるような気持ちじゃないことは、十分承知の上で。
私が主導して来たのではなく、これまでのふたりの選択があってこそだと言うことを再認識したかった。
一度目のエタバンの時の様な寂しい気持ちに私はさせないぞと、大聖堂で朝陽を浴びてはしゃぐふたりの笑顔を見ながら、密かに誓う私だった。
…後は予約がすんなり取れますようにと願いながら。
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