不妊治療とは

私たちは、健康に見える体のなかに不安定な心を内包しています。

検査や治療の結果に一喜一憂し、自分より後に結婚して先に赤ちゃんを授かった友達に嫉妬し、会社の先輩が産休に入るのを何度か見送り。通勤電車で見かける妊婦さんが羨ましく。

日常のあちこちで苦しくて、醜い感情が絶え間なく溢れてくる中でも懸命にその黒い感情を押さえ込もうとしています。

「赤ちゃんそろそろ?」と訊かれる度に曖昧に笑って…「授かりものだから」と言葉を濁します。

「赤ちゃんは親を選んで生まれてくる」なんてのを聞くたびに、「わたしは選んでもらえないのか」と涙が滲みます。

「不妊治療なんて不自然だ」と言われ、自らも悩み、迷いながら、それでも子どもが欲しい気持ちが止まらず治療を続けています。

買いたいお洋服の代わりに薬代を払い、減っていく預金残高を眺めます。お酒を飲みたくても治療のために我慢をして。15分の診察のために待合室で何時間も費やしています。時には職場のトイレで自己注射をすることもあります。

それでも結果が伴うとは限らない。妊娠というスタートラインにすら立てない。努力が実るのかも、わからない。みんなが自然に出来ることを、不自然な方法ですら出来ない、欠陥品。

幸せな未来を夢見て不幸せな現在を過ごす。

不妊治療は日常の合間に暗い影のように忍び込んできます。つらい。いたい。くるしい。いつまで。やめたい。

だからどうか。

この記事を読んでくださったあなたは

もし私たちを見かけたら、そっとしておいてください。批判やアドバイス、慰めはもう山ほどいただきました。他人からも自分の心からも。距離を置いていただいても構いません。自分勝手は重々承知ですが、これ以上刺激をしないで。

もし、あなたがとても優しくて何かをしてあげたいと思ってくださるなら、頑張っていることを認めてくださったら。少しだけ心が軽くなります。

こんなわたしが母になれるのか、なっていいのかもわからない。でも、わたしは好きな人との子どもを腕に抱きたい。それだけなのです。

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