生涯専用娼婦

『メゾン ある娼館の記録』というフランス映画を観ている。わたしは、生涯恋人専用の娼婦で在れたらいいなと思う。あらゆることを大胆に験し、心ゆくまで樂しませ、尽くしたい。いつか小さく皺々になって枯れ果てるまで、忠実な娼婦で在りたい。
人生には素晴らしい時間がたくさんあるけれど、恋人がわたしの中で果てて少しずつ波動が静かになってゆくのを下腹部で感じながら、言いようのない母性が胸に迫り上げてきて唇から溢れるから顔中にキスをするくらい幸せな時間は、ちょっと他にはないと思っている。もちろん、両掌はずっと髪を撫でている。

眠っている時、突然わたしの背中に顔を擦りつけてくるという、まるでわたしの母性を溢れさせる術を熟知しているかのような行動を、度々恋人は取る。寝返りを打ち、今度は顔が胸に埋まるようにしてあげると、捨てられた子供のような顔で静かに胸に収まる。「わたしが守ってあげる」と伝える。

2017年9月18日

懲りないね…。明日も早くから仕事だが遅くまで恋人の店のカウンターでワインを飲んで、帰り道、公園の愛するアングルの場所に立ち寄り、橋のイルミネーションの、本物の光よりむしろ水面に映る架空の光に注目しながら、
恋人を好きになれたこと
恋人に好きになってもらえたこと
恋人のキスがこの上なく素晴らしいこと
恋人がわたしの好きな人たちを全肯定してくれること
恋人がその愛おしい声でわたしの発言に爆笑してくれること
等の
今死んでも大丈夫かも知れないくらい気に入っている事柄に、思いを馳せている。


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