一期学舎をはじめます その1
少しずつ準備を進めてきた自主学習支援事業、春から動き出すぞ!
…と思った矢先のコロナ禍。
最前線に祈りを捧げつつ、今は自分ができることを積み上げていくしかない。
とうわけで、今までぐるぐると考えてきたことを自分の整理がてらアウトプットします。
あ、ちなみに、自主学習支援事業の名前は
一期学舎(いちごがくしゃ)
を予定していますが、命名の由来はまた追い追い。
ベースはまなび場プロジェクト
まず、ベースになるのは2005年にまなび場プロジェクトという名前で立ち上げて数年間やっていた自主学習支援の活動。
先生が生徒に向かって授業を行う塾ではなく、中学生が将来を見据えて今自分がやることを自分で決めて、自主学習する場。
わからないところは見守り役の大人に聞いたり参加者同士で学びあったり
将来の夢と言われても現実味を感じない場合には、いろんな大人の「こんな生き方もある」話を聞いてイメージを膨らませたり
そんな場を設けていました。
こちらに断片的な記録が残っています。
内発的動機づけを引き出す場
まなび場プロジェクトの基本的な考え方は『人を伸ばす力 内発と自律のすすめ』が元になっています。私が下川町に移住した1999年に出会った本です。
まなび場は、この本で言う「内発的動機づけ」を引き出す場になれればと思って運営していました。
「内発的動機づけ」とは何か。少し長いですが本文から引用します。
ここから著者は仮説の設定と検証へと向かいます。
そして「一連の実験研究によって、動機づけの方法として報酬を用いるとマイナスの効果が生じること」(39頁)を明らかにし、さらに内発的動機づけの源へと研究を深めていきます。
その結果たどり着いた境地については「訳者あとがき」にこうあります。
まなび場プロジェクトの時は、この自律的でありたいという気持ちに寄り添って、自分の将来の夢を自分で描き実現するお手伝いとしての自主学習支援が柱でした。
なので、将来の夢や目標を「内発的動機づけ」の起点として位置づけていました。
夢や目標は「内発的動機づけ」の起点になりうるのか
さて、あれから十数年が経過し、あらためて「内発的動機づけ」を引き出すような場をリスタートしようとしたときに
夢や目標は「内発的動機づけ」の起点になりうるのか
という問いと向き合うことになりました。
この問いが生まれた背景には、大ベストセラーになったこの本の存在があります。
この本を読む限り、アドラー心理学では、夢や目標に向かう生き方を
と一蹴します。
さらに
とも言い切り
といった具合に、前出のヘンリが絵を描くことを引き合いに出したのと同じような指摘をしています。
一方で
と説き、人が自由を選ぼうとして道に迷ったときの大きな指針、「導きの星」として他者貢献を掲げます。
そして、この他者貢献にあたっては
と。
うん、わかる。今の自分なら。知った当時は衝撃を受けたけど、だいぶ馴染んできました。
ただ、自主学習支援事業でボリュームゾーンとしている中学生に響くかというと、人を選ぶというか人が選ぶというか。
自分がそうだったように、夢や目標に向かう生き方を当たり前のこととして受け止めてきた保護者・子どもが大半だろうし、それはいろんな場面で日々強化されているように感じるので、ハードルが高そう。
「内発的動機づけ」の起点を夢や目標にしないのなら他に何があるのか。
「死」はどうか。
最後の日を意識するアプローチはどうか
毎朝、鏡に映る自分に「もし今日が最後の日だとしても、今からやろうとしていたことをするだろうか」と問いかけていた…スティーブ・ジョブズのエピソードを思い出します。
また、自己啓発系で有名な『7つの習慣』にも
第2の習慣に「終わりを思い描くことから始める」があり、自分の葬儀で家族や友人にどんな弔辞を述べて欲しいのかを考えるワークがあります。
夢や目標に向かう生き方は、その実現のために「いま、ここ」を犠牲にするという側面があるのに比べ
最後の日を意識する生き方は、それこそ今日死ぬとわかっているのなら「いま、ここ」を犠牲にしようと思うはずもなく、最も大切なことを優先して時間を使うでしょう。
また、夢や目標を持つことは、人によりイメージできる強度が違い、具体的にイメージできない人もいるし、AIを始めとするテクノロジーの発展により今ある職業がこれから先どうなるかわからない時代なのでリスクもあり、万人向けとは言えません。
一方で、死は誰にとっても切実で回避不可能な出来事なので、万人向けと言えるでしょう。
ただ、最後の日を意識するアプローチは、臨終の間際に「後悔しないため」という目標を設定し、そこから後ろ向きの発想で「いま、ここ」を捉えているので、今を生きる躍動感が薄れてしまう気がします。
思春期真っ只中の中学生には、死の切実さよりも生の躍動感を伝えたい。
自主学習支援事業の一環で最後の日を意識するようなワークにも取り組みたいと思いますが、活動の軸にはならないかな……。
実は、活動の軸にする考え方はほぼ決まっていて、あと少しで腑に落ちるような気がしていてこんな思考をめぐらしてきました。
学習する組織のディシプリン
それは『学習する組織 システム思考で未来を創造する』に出てくる5つのディシプリン。
その中でも特に自己マスタリーを軸に内発的動機づけを引き出すアプローチを試したい。
最後の課題は「ビジョン」をどう定義するか……
長くなったし、ここからまた長くなりそうなので、続きは次回に。
▼追記:その2はこちら▼
バーカウンターで「あちらのお客様からです」ってあこがれます。