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大学生レポーター 地域団体インタビューVOL.1

私たち、クロスアクションは、栃木県那須烏山市内で活動する団体に対して、学生さんによるヒアリングと記事作成を行ってきました。

その成果第一弾をアップします。

#やってみた大賞


『一般社団法人里山大木須を愛する会』インタビュー


宿泊所 ほたるの里の古民家 おおぎす


那須烏山市大木須地区では、「地域の絆を深め人に優しく住みよい大木須」、「豊かな自然環境を誇れる大木須」、「交流が盛んで行ってみたい大木須」、「一集落一農場の実現」、「大木須ブランドの創生」を目指す姿を描き、地域活動と里山保全活動を行ってきました。
 また、一般社団法人を設立して、宿泊体験施設「ほたるの里の古民家 おおぎす」を運営しています。また、行政の支援はもとより、宇都宮大学雑草管理教育研究センターと連携協定を締結し相互交流が図られていること、また、宿泊客との交流など、外部との関わりが盛んなことも特徴の一つです。
今回は『一般社団法人里山大木須を愛する会』の理事と事務局長を務める大貫いさ子さんにお話しを伺いました。


大貫いさ子さんのプロフィール


栃木県職員時代に、農村の現場でむらづくりや担い手育成、組織づくりの仕事に携わってきました。その後、宇都宮大学里山科学センターの特任研究員として大学における地域貢献機能の充実を目指したプロジェクトに参画し、これまでの経験を活かしながら大木須地区の活動に関わり、現在に至っています。



大貫さんは鹿沼市から通われているとのことですが、なぜ遠い那須烏山市大木須地区で活動をしようと考えたのですか

宇都宮大学の里山科学センターに所属していた時に、「里山の恵みを活かしたコミュニティビジネスによる地域活性化と循環型社会を担う人材の養成」というプロジェクトに関わったことがきっかけで大木須地区に入りました。
 大木須地区にはどういう地域資源があるのか、地域の人達がどのように考えながら日常生活を送っているのか関心を持ち、20歳以上の集落全員の方に聞き取り調査を行いました。集計した結果を地域住民にお返しし、それから話合いを積み重ね、いろいろなことに取り組むようになり、それらのお手伝いしていくうちに地域との関わりが深くなっていきました。
 地域が抱える課題は一回や二回関わっただけでは簡単に解決できません。こちらのプランを示すのではなく、地域の皆さんが解決策を話会っているうちにいろいろやりたいことが見えてきて、それをサポートとしながら皆で一つづつ実行に移してきました。
 はじめは大学によるプロジェクトとしてスタートしましたが、活動を継続していくうちにいつの間にか、新たな組織や法人が誕生し、課題解決活動を支援する中で、現在の役職に就いていました。10年が経過する中、余りにも深いところに入ってしまいました。

-なるほど、大学のプロジェクトがきっかけで継続されているのですね。-

私達に熱心にお話くださる大貫さん


活動するにあたっての目標はありますか。

私の目標は地域の人が目指すところに向かっていけるようお手伝いすることです。あくまで地域の人達が目標を決めていかなければいけません。どういう大木須にしたいか、地域の目指す姿は何なのかを話会ってまとめたものが、「大木須地域ビジョン」です。これまでは、これを指針に頑張って活動してきました。
 しかし、10年も経過すると、高齢化の進展やコロナ禍など、地域や周囲の状況もだいぶ変化していますので、やり方も変わざるを得ない状況になってきています。次のゴールをどう目指していくか、地域の人達と話し合い、新たな課題に挑戦しているところです。

-住民の方の意志を中心として活動されているのですね。-

活動に関わる中でやりがいを感じた瞬間はありましたか

私個人としては、必要とされることがやりがいですね。それから、常に与えられる課題に私なりに答えを見つけながら、地域の人と向き合って共有していくこともやりがいになっている気がします。実際は、調整役として日々闘っているイメージですね。課題がどんどん出てきて常にぶつかっている状態ですから、気がぬけないのですが、そういう活動に意義を見いだしているから続けられるのだと思います。自転車は漕いでいるうちは走るけど、漕ぐのをやめると倒れるじゃないですか。漕ぎつつけることも大切だし、漕ぐエネルギーや方法を考えることも大切です。皆でやっていくことなのでこれは大変なことですよ。

集落での協議


常に課題に直面しているということですが、具体的にどのようなことがありますか

新型コロナウイルス感染症の影響で古民家の宿泊事業ができなかったので、養蜂事業を始めましたがその販売先の問題もあったり、耕作放棄地対策や里山資源のビジネス創出など様々なの課題があります。
 最大の課題は高齢化に対してどうするかです。日本全国で若い人が少なくなっている中で特に里山は生産年齢人口が減っています。次代を担う若い人達がどうしたら参加できるようになるのかを考えることも簡単なことではありません。でも、待っていて解決できることはありませんので、一つひとつ行動に移していかなければならないと考えています。

一方で成果と感じていることはありますか

うーん、それは難しいですね。何をもって成果とするかによりますが、一過性のものならあるかもしれません。宿泊客数やホタル見学数は簡単に出すことは出来ますが、例えば、25年間も盛大に開催してきた地域ぐるみで行っていた「新そば祭り」イベントは1日1000人ものお客様が訪れ、多くの売上げもあります。それを開催するまでには大変な労力がかかっていますので、高齢化によってその運営が立ちゆかなくなってしまったというのはどのように評価すれば良いのでしょうか。内部評価と外部評価では成果のとらえ方に違いがあると思いますし、簡単に成果を語ることは出来ません。
 しかし、コロナ禍で老舗旅館が倒れている中、このような里山であの手この手で宿泊施設の運営が続けられ、生き残っているだけで素晴らしいことで、成果なのかもしれません。
 それは、大木須は面白い、暖かい、大好きと言って下さるお客様や宇都宮大学の皆様のお陰だと思います。このようなお客様との交流を心の支えにして皆さんが頑張っていること自体が成果といえるのかもしれません。
 

古民家に来るのはどのような方が多いですか

何といっても子供連れのファミリーグループの方が多いですね。簡易宿所なのでいろいろなグループの方がご利用されます。愛好会やスポーツ少年団、大学生、ほたる見学者など、様々ですが都会の方が多く来て下さいます。リピーターのお客様が多いのが特徴で、営業を始めたころから毎年のように来て下さったり、年に何回も利用される方もいます。
 とりわけ都会から来るお客様は何気ない里山の自然にふれてとても感動して下さいます。古民家周辺の野山や川で遊んだり、流しそうめんやバーべーキューも大人気です。大木須にきて喜んでいただいたり、感動する様子を見るのはとてもうれしいです。

バーベキューを行っている様子


それでは、最後に今後のビジョンを伺いたいです

古民家を利用しながら地域資源をどう活かすかというテーマとこれからも向き合っていきたいと考えています。当面は身の丈に合ったやり方でやっていくのが良いと思います。
 このような小さな里山ではなかなか大きな収益を求めることは難しいのですが、地域の皆さんが楽しく交流しながら地域の課題解決に役立つ、新たなコミュニティビジネスの方策を見いだしていきたいと、日々検討を重ねているところです。
 持続可能な里山を目指すことは大変難しいことです。主要メンバーが年々高齢化していきますし、課題はつきませんが、外部の知恵や支援も受けながら常に改善策を考えて進んでいきたいと思っています。従来のやり方や仕組みに拘らず、柔軟に考えながら楽しくやっていければと考えています。

インタビューの様子

インタビューを行って

お話から、法人では地域の人達の意志を中心として活動しようとする想いがあると強く感じました。特に活動の目的を大貫さん自身で決めず住民の方の考えを第一にしている点に、一歩引いて地域の考えを尊重する姿勢が見えました。
また、課題が常にあり、解決や成功は一筋縄ではいかないと気づかされました。中でも新型コロナウイルスや高齢化は里山にとって深刻な問題です。しかし、行政や大学、宿泊客など外部の人々に支えられながら日々問題に向き合い、一つひとつ熱心に取り組む様子がお話の中で随所から感じられました。
 貴重なお話しをありがとうございました。

大貫さん、インタビューありがとうございました

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