【要約・感想】哺乳類誕生乳の獲得と進化の謎(BULUE BACKS)

乳は、進化において哺乳類、鳥類のみが獲得することができた進化の不思議である。乳について、進化学の観点から書かれた本である。面白かったのでいくつか内容をピックアップした。

乳成分について


乳成分は種によって異なる:乳質最強の動物はマウスである。マウスは多産多死の生存戦略をとっている。そのため、素早い成長が必須であり、栄養価の高い乳を出す。また、ホッキョクグマやクジラなどは過酷な環境にいるため乳脂肪が30%と非常に濃厚な乳をだす。一方でヒトは、脳の発達にエネルギーを使うため乳糖が7%と高水準となっている。種によってそれぞれ最適な乳成分となっている。
乳幼児において大切な栄養素となる乳糖だが、それを分解する酵素であるラクターゼは成長すると失われる。それが乳糖不耐症の原因となり、ラクターゼを有する人が少ないアジア人に牛乳は受け入れられづらい。一方で、欧米の人々はラクターゼを有する人が多かったため受け入れられやすかったという背景がある。

乳頭の違い


ヒトとウシの乳頭は大きく異なる。乳輪の有無、硬さの違いetc…。機能的な一番の違いは一度に排出できる量である。数時間おきに授乳するヒトと違いウシは一日二回の授乳を基本としている。そのため、一度に排出する量が圧倒的に多い。そして、そのためにウシは進化で”乳腺槽”を獲得した。 ここに一時乳を保管しておくことで一回あたりの排出量をあげている。この乳頭の違いを英語では、ヒト型:nipple ウシ型:teat として区別する。ウシ型(teat)は反芻動物特有の形状である。

搾乳に関わるホルモン


乳はオキシトシンに反応して排出される(乳児や子牛が吸引しているわけではない)。オキシトシンは“幸せホルモン”とも呼ばれ、母親にとっても快感である。そのため、母は子に乳を飲ませようと必死になる。ウシは乳頭に搾乳刺激が加わるとオキシトシンが血液中に放出される。およそ1分後に最大濃度となり、7分後には有効濃度以下となる。このため、乳が出る時間は5分程度となる。以上より、搾乳(授乳)においてオキシトシンの役割は重大である。搾乳時に驚かせたり、興奮させるとアドレナリンが放出され、オキシトシンが作用できなくなる。このため、搾乳は静かな環境が大切となる。

感想

酪農関係者にぜひよんでいただきたい内容であった。なぜ牛は家畜に適した動物なのか、授乳とは何なのか、知ることができる。本来は哺乳類の進化について勉強する本であるが、学べることは多かった。

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