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上司「ふきのとう探しに行けば?暖かいし」



今日の午後、パソコンに向かってしかめ面で仕事をしていると、
そんなことを言われた。
え、なにこの会社…こわ…。

先輩によると
「ここら辺の河川敷を5分探せば見つかる」ということらしいので、
自転車に乗って、ふきのとうを探しに行った。
河川敷を自転車を漕いで進む。

今日は本当に暖かい。

手袋を外し、トレンチコートを脱ぐ。額に汗にじむ。

喉が渇いて、水筒にいつも入れている白湯を飲んだ。
冷たい水を入れてきたら良かったと後悔した。

土手に自転車を止めて、川に近づく。
さらさらと流れていく川を横目に、
河川敷の枯れ草をガサガサと探った。

見つからない。

おおいぬのふぐり、たんぽぽの葉っぱ、
しろつめくさがあった。

でも、ふきのとうはない。

道行く人に聞いてみた。

「このあたりで、ふきのとうはありますか?」
「いや、見ないねえ…もっと山のほうずら」

だれ?5分とかで見つかるとか言った人。
それでも諦め切れなくて、およそ1時間、
河川敷を歩き回った。

河川敷には、平日だと言うのに色んな人がいる。
走っている人、ベビーカーを押している人、
橋の下にゴザを敷いてピクニックをしているカップル。
とてものどかな景色だ。

そんな中、私はというと、
一人で河川敷をうろうろし、
下を向いて必至の形相で、汗をたらして、
ひたすら、ふきのとうを探し続けている。

それでも、やっぱり見つからない。

というか、よく考えたら、見つけたらどうするのだろうか。
拾って、食べるのだろうか。

落ちているものを拾って食べるなんて、
やっぱり長野県の人はたくましい。
草(山菜)も食べるし、川から魚も釣る、虫だって食べる。
もし世界がゾンビだらけになったら、
最後に生き残るのは、きっと長野県民だろう。

そんなことを考えているうちに、
そろそろ会社に戻る時間になった。
本来なら、そのまま会社へ帰ってもよかったのだが…

こんなにふきのとうを探すと、
今日の晩御飯はなんだかふきのとうを食べたくなってくる。

仕方ないので、贔屓にしている八百屋さんに行った。

「ごめんください。ふきのとうをください。」
「そこにあるずら~!地物のものだからね~おいしいで」
「ありがとうございます。あ、たけのこも出てるんですね。」
「静岡産だけどねェ。まだ高いし。
長野産は4月下旬に出るからね。」

いいことを聞いた。
ここの八百屋さんはたけのこを茹でてくれているから
非常にありがたい。
たけのことサバ缶を味噌汁に入れた信州の郷土料理は、
全国にもっと知られて欲しいくらい美味しい。

無事にふきのとうが10個ほど入った袋を持って、
会社に帰る。

今夜はふき味噌か、ふきのとうの天ぷらを作ろうと思う。

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