起業家は破天荒でいいのか~後輩の起業を喜べない理由~

後輩が起業した。ごく一部であるがネット上でも話題になっている。

しかし、僕はこの後輩(ここではAとしよう。)の起業を喜べない。この後輩は非常に素行が悪い。元ヤンキーとかではなく、パチンコの代打ちのアルバイトをSNSで募集したり、ビジネスと関係のない場所で副業を斡旋を紹介したり、サラリーマン時代に素行不良で始末書を書いていたりと、少なくとも僕の目から見るとヤバい奴だった。ちなみに今は更生したかと言われると全くその気配はなく、上記の悪行も悪いと思っていない節がある。

以前に僕はこういった素行の悪い奴には何をやろうとも賛同しかねると別の後輩(ここではBとする)に言ったところ、「でも先輩は起業も何もしていないじゃないですか、Aさんはいろいろと事業をしていて(当時サラリーマンで副業禁止だったが裏で色々やっていたらしい)何かを起こそうとしている分、Aさんの方が偉いですよ。」と言われた。当時、後輩からこう言われてもどうも釈然としなかった。

しかし、そのあと考えてみると、Bの言っていた背景に「偉大な起業家だってワルかったじゃないか。」という暗黙の認識があるような気がしてきた。代表的なのはスティーブ・ジョブス氏である。彼のwikipediaを見るとさまざまな「悪事」について書いてある。傍から見ている分には素晴らしい人物だが、自分の上司だったらと思うとゾッとするようなエピソードも書いてある。

これを肯定的に捉えると、イノベーションを興す人物なのだから破天荒でも仕方がないと思われるだろう。しかし、ベンチャー企業の経営者の中にはそんな器でもないのに、破天荒さだけを真似して部下から冷笑されている人もいるに違いない。

ついでに言っておくと、経営学者のヘンリー・ミンツバーグ氏は戦略サファリの中で戦略の定義を5Pとして計画(Plan)、パターン(Pattern)、ポジション(Position)、パースペクティブ(Perspective)、策略(Ploy)にまとめている。確かにこれに基づけば策略的であれというのは分からなくないのだけれど、その策略にどう人を参画させていくのかがポイントだと思う。

先述の起業家Aはこの後、起業家として成功していくのか、はたまた被害者の会が発足して訴えられるのかは分からないが、この記事を読んで頂いた方へのメッセージとしてお伝えできることがあるとすれば「味方を作れるかどうか」ということである。

スティーブ・ジョブス氏のwikipediaの行間を読むと相当なジジ殺しではないかと推察する。要するにお金を持っている人、権力のある人を自分の壮大な計画に心酔させてそのジジの力を借りる力である。ただし、ジジには好き嫌いがある。ライブドアと楽天の球団経営参入の話が分かりやすい。球界のジジに気に入られることで成否が分かれている。また、ジジは自分の名声を傷つけられたくないから邪な奴とは関わらない。特に今の世の中ならすぐさま文春砲の餌食になるだろうから、少しでも危なさそうな人には近づかないように思う。

こういったジジ殺しはゴマすりだとか批判もあるだろうし、社内政治としてやるのは僕もどうかと思う。しかし、何か事を成したいのなら社外人脈でのジジ殺しは特にお勧めしたい。特に大学OB会組織などは有効だ。しかし、短期間だけスケベ心満載で行くとジジに嫌われるので長期的なお付き合いの中でほんのちょっとだけ力を借りるつもりの方が良い。

いずれにしても、力のある人に協力を得るためには身は清廉であるべしという話だ。特に技術的イノベーションではなく、社会的イノベーションを志すなら尚更だ。

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