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日記  3

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短かすぎる毎日を短歌と短文で記録しました。 2018年2月から2018年4月まで。
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記事一覧

ポラロイドフィルムの期限が切れていて撮るものすべて夕焼けのなか

2/1
ひさしぶりにSX-70というポラロイドを取り出して撮影してみたけど、フィルムがダメになっていてうまく写らなかった。フィルムはすでに生産が終わっていたはずなので、もうこのカメラで撮ることはできないのだろう。

くり返し脳裏に響くひたすらにポップなリズムのローンCM

2/2
職場の人たちと4人で西新の「バクロ」という焼肉店へ。暗い話題も必要ならば仕方ない。

遠景はそれでしかなく無駄のない営みなんてあったでしょうか

2/3
ブリキ製の湯たんぽに穴が開いた。前の冬のあと、水を抜かずに放置したことの報いだ。

流水に指先くんとひいらぐも降る立春に飛び込むばかり

2/4
湯たんぽがなく、朝、いつもより寒いなか目覚めると、外は積雪で真っ白だった。部屋がいつもより明るい。その後、雪は数時間も経たずに溶けてしまった。

路地裏に点滅灯を走らせて人間というテーマパークは

2/5
自転車の前のライトを点滅させていたらパトカーから「点滅ではなく点灯にしなさい」と注意されたことがある。ちなみに後ろのライトは点滅でもいいとのこと。

べっぴんさんべっぴんさんひとつ飛ばして白い息吐く煙突のわれ

2/6
なぜ吐く息が白くなるのか、実は科学的に解明されていない。なんてことはなくて、つまらないなあと思う。

オフィスグリコ下から開ける空き巣的華麗な手口を注意されたい

2/7
強く自制し続けないと、かなりの数を食べてしまう。

​コーヒーを飲み過ぎたって眠たいし、前ゆく女の手首やわらか

2/8
周りでインフルエンザが大流行していて、毎日ひとが減っていく。津村記久子の『職場の作法』みたいに自分が取り残されたら嫌だな。

犬として生きるからにはきみが読む歌集のことも気になるふりを

2/9
犬は本の糊の部分を何度も嗅ぎに来る。

食べ尽くす貰いものとか思想とか潜水艦の発展史とか

2/10
生きていくことに少し前向きになって、新しいジャンルの本を読み始めた。

交差点信号待ちの先頭で死ねないときに刻む半歩だ

2/11
一輪挿し用に花を買った。ラナンキュラスの固い蕾で、これは何色なんだろう。

宇宙には雪がないから浮遊するごみを〈糸雪〉 そう呼んでいる

2/12
かなり雪が降った。といっても「福岡にしては」という程度で、ニュースなどで見る福井や東京に比べれば大したことはないのだけど。

温まらない膝を抱える浴槽で氷山としてなにを運べる

2/13
ひとり暮らしの狭いバスタブだとなかなかお湯を張ることがない。シャワーに当たっていればすぐに温まる気がしていたのだけど、不意に口で触った膝が冷たいままだった。

交点を持たないふたりの直線はひとつの面に存在したって

2/14
同僚が「バレンタインデーはいつも虚しい」と言った。