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RAGEのプロデューサーにesportsに対する本音を訊いたら、ガチで全力だった【CyberZ 大友真吾インタビュー】

esports業界で働きたいという人が増えているように感じる。とすると、働き方の参考になる人がいると、自分がどんなふうに働きたいのか、働けるのか、イメージが湧きやすい。

いま最前線で働き、業界を牽引しているのは、例えばDeToNatorの江尻勝さん、DetonatioN Gamingの梅崎伸幸さん、グルーブシンク(Red Bull 5Gのアドバイザー)の松井悠さん、JCGの松本順一さんといった、人生と情熱のすべてをesportsに捧げているような人たちだ。

しかし、高校生や大学生が彼らの生き方・働き方を唯一のロールモデルにするのはちょっと厳しい。簡単に真似できるものではないし、社会に出るやいなや未成熟なesports業界に人生をオールインするのはためらってしまうだろう。

かといって別のロールモデルがあるかといえば、なかなか見当たらない。多くの人にとって、esports業界での働き方やキャリアはいまいち分かりづらい。それどころか、実際に働いている人がどのようにesportsと向き合っているのか見えにくいというのが現状なのだ。

生涯を賭してesportsを盛り上げるべくカリスマ的に仕事をこなす以外の働き方とは? それはどんな働き方で、どんな人がそういう働き方をしているのか? そしてそういう働き方をしている人はesportsをどう思っているのか?

僕には、そちら側のロールモデルが積極的に提示されていかないと、esportsを盛り上げてくれる人が増えていかないのではないかという懸念がある。「とりあえず飛び込め」とか「仕事にしたいなら人生オールインしろ」なんて口が裂けても言えない。

誰か、参考にできる人はいないのか。実はその1人が、言わずと知れたesports大会・RAGEを主催し、動画配信プラットフォームのOPENREC.tvを運営するCyberZにいる。大友真吾さんだ。

RAGEの総合プロデューサーである大友さんは、昔からesportsに関わってきたり深い造詣があったりするわけではなく、CyberZがesports事業に乗り出す際(2015年)に参画した(直近はOPENREC.tvの事業に携わっていたが、その前は広告事業の営業部門)。

つまり、本当に何も知らない状態からesportsの仕事に関わることになった人だ。しかしいまでは、RAGEを業界でもトップクラスの大会へと成長させた。

そんな大友さんはesportsに対してどんな思いを持ち、どんな気持ちで向き合ってきたのか。何が仕事のモチベーションなのか。いったいどんな目標を持って仕事をしているのか。

大友さんの働き方やesportsへの関わり方は、これからesports業界で働きたい人、あるいは突然esports業界で働くことになってしまった人にとって、おおいに参考になるはずだ。

ということで、実際に大友さんに話を聞いてきた。

ある日突然、esportsの仕事をすることになった

――インタビューなどで拝見してのイメージでしかないんですが、大友さんって「昔からいままでずっとめちゃくちゃゲームが好き」なタイプではないですよね?

大友:
そうですね、人生をかけてやり込んできたとは言えません。ただ、いまesports業界の最前線にいるような方に比べたらレベルは低いんですが、小学生の頃から友達と遊ぶときはたいていゲームをしてました。

僕は体育会系で、長らくバスケをやってました。でも、学生だからお金がないので、部活が終わったあとは友達の家でゲームをするんです。一番遊んだのはニンテンドー64の『スマブラ』や『ゴールデンアイ』で、対戦ゲームはかなりやってたんですよ。友達の家に泊まり込んで夜通し遊ぶこともありました。下手でしたけどね(笑)。

『ファイナルファンタジーVII』などのRPGもやってましたし、大学生のときも『龍が如く』や『ウイイレ』をプレイしてました。社会人になってからはほとんどやらないようになりましたね。

――そういう背景でRAGEの立ち上げと運営に携わることになったんですよね。いきなりですか?

大友:
いきなりでした。僕はずっと広告畑にいて、CyberZの設立後も広告部門の営業統括というポジションが長かったんですが、それが変わったのが2015年です。OPENREC.tvの事業責任者になったんですよ。

esportsという言葉自体を知ったのもその頃です。初めて生で観たesports大会は、ベルサール秋葉原で2015年8月に開催されたLJL 2015 Grand Championshipでした。RAMPAGEが2-0でストレート勝ちするかと思ったら、DetonatioN FocusMeが逆転した劇的な試合だったのを覚えてます。

正直、esports大会といってもゲーム大会なので、ゲームセンターで行なわれるような雑多な感じかと思ってました。当然、世界で盛り上がってて大規模な大会があることも知ってましたが、日本ではまだまだなんだろうと高を括ってたんですよ。

そのため、LJL会場での歓声の上がり方や演出には衝撃を受けました。スポーツ観戦とまったく一緒だと。当時はLoLのルールもおぼつかないくらいで、最初はぽかんと観てたんですが、何時間も観戦している中で徐々に盛り上がるポイントも分かってきて、最後には普通に楽しんでました。

――LJL自体は2014年に始まりましたが、2015年と比べると規模が全然違いました。ベルサール秋葉原どころか、e-sports SQUAREに観客を入れることも難しかったんです。もちろん開幕戦と最終戦は大勢の人が来場しましたが、シーズン中のパブリックビューイングはほぼ誰も店に来ない状況でしたから。

それが、1年でベルサール秋葉原を満員(約600人)にできるまでに成長しました。そして2017年春には来場者数だけで約2500人です。大友さんが観戦に来られたタイミングはよかったかもしれませんね。

自分の仕事が誰かの人生を変えられると信じてる

――2015年当時の社内では、esportsに対してどんな印象が共有されてたんですか?

大友:
LJLはOPENREC.tvでも試合の配信をしてましたし、弊社はもともとゲーム会社と近いので海外のesports情報を聞いてました。なので、「いよいよ日本でも……!」という雰囲気はありましたね。

ただ、やはりあのベルサール秋葉原での経験は大きかったんです。経営陣も新しくesports事業を始めるにはいましかないと判断して、投資することがものすごいスピードで決まりました。そしてRAGEの開催発表をしたのが2015年11月です。

当時の僕の使命はOPENREC.tvを成長させることだったので、LJLの配信権を購入したり番組を企画したり、いろいろと画策はしました。ただ、視聴者数は悲しい感じで、このままだと永遠にダメだなと焦燥感があったんです。

LJLを会場で観戦したのはそんなときで、まだRAGEの開催が決まってなかったものの、esportsはOPENREC.tvとして注力すべきコンテンツの一つだと確信しましたね。

加えて、自社で大会を開催して独占配信したいとも考えて、RAGEを立ち上げました。つまり、RAGEはOPENREC.tvのためにスタートした大会だったんです。

――esportsにどれくらい可能性があると感じました?

大友:
会場に足を運んだことで感じられた熱気は、海外とそれほど差はないと思いました。遅かれ早かれ、必ず日本でも「来る」と直感しましたよ。それと同時に、世界的なビッグタイトルが日本からもっとたくさん生まれるのではという期待感もありました。

実は2015年に「2019年にはさいたまスーパーアリーナでRAGEの決勝大会をやる」という目標を設定したんです。そして収益化も早々に達成する計画を立てました。これまでRAGEは着実に規模を拡大し、さいたまスーパーアリーナに至る道が見えつつあると感じてます。でも、収益化に関してはもう少しかかるだろうと計画を改めました。

もちろん、esportsが興行として成り立ち、事業として成立する規模になるよう投資を続けたいと思ってます。いまのRAGEの目標としては、来場者数と視聴者数をもっと増やして裾野を広げ、さらに地盤を固めることですね。

――大友さんご自身の目標ってあるんですか?

大友:
先ほどバスケをやってたと言いましたが、けっこうガチだったんですよ。それこそ全国大会にも出場しましたし、大学もそういう道に行こうというくらい。でも、当時は大学の先のキャリアがなくて、そのあとどうしようかと不安がありました。それで、バスケの道は諦め、普通の大学生として就職しました。

タイミングってあるんだなと思ったんですが、僕がesports事業に関わり始めて1年後、2016年の秋にバスケのプロリーグであるB.LEAGUEが発足しました。もし僕が高校生のときにB.LEAGUEがあれば、自分のキャリアや夢の持ち方も変わってただろうと思うんですよ。

じゃあesportsの世界はどうか。かつてのバスケと同じで、いまはまだ確固たるプロシーンがあるとは言えません。でも、esportsがほかのプロスポーツのように、多くの中高生の夢見るキャリアの1つになれば素敵じゃないですか。

だから、僕は誰もが自信をもって取り組めるプロスポーツとしてesportsを定着させて、「友達と楽しく遊ぶゲームの先には、プロというキャリアもある」という世界を作りたいんです。いまの僕の仕事は、いつか誰かの人生を変えられる仕事になると信じてます

――なるほど……そんなふうにご自身の体験をもって目標を語ってもらえるなんて思ってもおらず、聞きながら胸を打たれました。

大友:
やるからには大きなチャレンジをしないとダメですよね。会社としても出し惜しみせずに本気で勝負してますから。限られた予算でやりくりして小さな実績を作るよりは、とにかく最速で目標を実現できるように、いまできることを一生懸命やってます。

土日もいとわず働くesports業界人がはまる沼

――大友さんは普段どういうモチベーションで仕事に取り組んでるんですか?

大友:
イベント運営や制作って肉体的にも精神的にもめちゃくちゃハードですよね。1日あるいは一瞬の本番のために何か月も費やすので、なかなか気が気じゃない仕事だなと思うこともあります。でも、大会をやり遂げたあとの充実感や達成感はすさまじくて、それを味わいたいがために日々の仕事をしてます

――そのesports沼にはまった人、けっこういますよね(笑)。

大友:
運営や制作をしている人って鉄人みたいな人が多いですけど、皆さんそうなんでしょうね(笑)。

――いま業界で働いている人はほとんど全員そうで、土日もいとわず働いてしまう人たちばっかりだと思います。僕はけっこう休みたいんですが、大友さんは土日は休めてますか?

大友:
休んでますね。当然、大会の予選が重なるときは土日が主戦場になりますが、ワーク・ライフ・バランスは取れてると思います。

――ほかの社員の方もちゃんと休んでますか?

大友:
平常時は休めてると思いますが、大会があるとなかなかそうも言ってられません。前回のRAGE vol.4はなかなかハードだったのは事実です。3タイトルの予選を回さないといけなかったので、5月は土日に稼働することがほとんどでした。平日に振休を取ってもらうなどバランスを保ってもらってましたが、次回大会は体制を強化して臨んでいるので、チーム全員で大会の質が上がるような時間の使い方をしていきます。

――それは本当にすばらしいことだと思います。休みって、めちゃくちゃ大事です。

土日の大会やイベントは、参加したり観戦したりする人からすれば「休日の楽しみ」かもしれませんが、運営側には平日フルで働いてさらに土日も働いてる人が少なくないんですよね。かく言う僕も某esports系企業に入社した最初の週の土日が丸々大会でしたから(笑)。

もちろん振休や代休があるとはいえ、それが取れないほど忙しい人もけっこういます。そもそも現実として、この業界には激務の会社が多いです。でも、だからといって運営に対して過度に配慮する必要はありません。ほんの少し、敬意や感謝の気持ちは持っておいてもらえれば。

業界志望者にとっては、esports業界で働くことは土日が仕事になるということです。ほかの業界で働く友達と休日が重ならず、一緒に遊べないことも増えるはずです。このことはあらかじめ理解しておかないとダメですね。

ゲーマーに愛される大会にしたいがため、全力でもがく

――といったところでお尋ねしたいんですが、RAGEをスタートしてからいままで、たいへんだったことや苦労したことってどんなことがありましたか?

大友:
1回目となるRAGE vol.1での不安はめちゃくちゃ大きかったですね。僕らはもともとゲーマー集団ではないので、ゲームのことをよく知らない新参者がesports業界に入っていってちゃんと受け入れられるのか心配してました。ですが、RAGEを立ち上げようとしたときには先輩方からアドバイスをいただけましたし、応援もしてもらえました。

とはいえ、プレイヤー・ファンの側からすればまた別です。特にvol.1では、僕らにはゲームの知識どころか大会やイベントの運営ノウハウもなく、本当に毎日試行錯誤してました。大会規模に比べて費用をかけすぎた感もあったんですが、コケたら終わりという気持ちをもって全力で取り組んだ結果ですね。

ゲーマーに「CyberZは分かってねーな」と思ってもらいたくなかったので、後発だったからこそ選手に最大限の配慮をし、このステージを目指したいと思ってもらえるような演出と企画にこだわりました。

あと、いまでもそうなんですが、組織作りや採用は力を入れてます。実は、vol.1の予選は本当に当時会社にいた社員だけで運営をしたんですよ。その後にゲームコミュニティの中心にいる方やesportsに通じている方を採用し、vol.1の決勝やvol.2くらいからはゲームに詳しい社員が増えてきました。

――そういう方がいると組織として違いがありますか?

大友:
やはり僕らが目の行き届かないところを指摘してもらえます。ゲーマーが気にしないところに注力しすぎてたら、「ゲーマーはこっちのほうが気にする」と教えてもらえますし、チケットの金額などもゲーマー基準で考えてくれるんですよ。限りなくユーザーに近い視点を持っているので、企画を考えるときにも助かってます。

いまのRAGEがあるのは、ゲームに詳しくない人と詳しい人の2つの視点から組み上げてきたからですね。僕自身は最速でさいたまスーパーアリーナや日本武道館で大会を開きたいと考えてるので、よりマス受けするように見せたくなることがあるんですよ。そんなとき、「それはゲーマーには喜ばれない」とぐさっと指摘されます(笑)。

かといってこじんまりしすぎても迫力がなくなるので、その時々でRAGEが達成しようとしていることに対して両者の立場から刺激を与え合ってますね。もちろん失敗もしてきましたから、ゲーマーの声に耳を傾けながら、ゲーマーに愛される大会にしようともがいてます

――僕もRAGE vol.2のアフターパーティでCyberZの方に「よかったところと悪かったところ」を訊かれたんですが、参加者の声を直に聞いて改善していくという姿勢にはいたく感激しました。そういう意味でもCyberZには注目してるんですよね。

CyberZは代表がコアゲーマー!

――ところで、OPENREC.tvやRAGEを引っ張ってる中心人物は大友さんなんですか?

大友:
事業としては代表取締役社長の山内が陣頭指揮を取ってます。昨年からはOPENREC.tvの総合プロデューサーに就任し、会社の経営をしながら自分で直接UIやサイトデザインを指示したり、番組企画を細かくチェックしたりしてます(笑)。僕はいまはRAGEのプロデューサーに専念してます。

あまり知られてないかもしれませんが、山内はけっこうなゲーマーなんです。目を充血させて出社してきたとき、どうしたのかと訊いたら「朝までゲームしてた」と(笑)。飲み会のあと深夜に帰っても当たり前のようにプレイしてますからね。FPSや『マインクラフト』もかなりやってますし、おそらく社内で誰よりもゲームが好きで、時間も割いてると思います。

――それはかなり意外ですね! これも勝手なイメージですが、山内さんはゲームやesportsには一線を引いて、あくまでビジネスとして見ている方なのかと思ってました。その認識は改めます(笑)。

とはいえ、CyberZに対して「esports愛はそれほどなくて、ビジネスライクな企業」という印象を持っている人は意外と多いかもしれません。この記事でそのイメージを払拭できると嬉しいですね。正直、僕も山内さんほどゲームはしてません(笑)。

大友:
esportsをスポーツエンターテインメント産業にするという僕らのビジョンは、ただの興行主という中途半端な向き合い方では絶対に成功するはずがないと思ってます。もちろんまだまだ勉強中ではありますが、esportsに対する愛がないのではと疑われてしまうことがないように全力を尽くしてます。

0か100かで取り組んでいる

――esports愛でいうと、大友さんもゲームやesportsへの愛情が深い人たちからいろいろと言われてきたんじゃないですか?

大友:
たしかにそういう経験はあります。ですが、僕らのような昔からゲームに関わってきたわけではない新参者が業界に参入することに疑いの目を向けるのは、むしろ当たり前のことだと思うんです。

だからこそ、それをポジティブに捉えることにしました。ビジネスやマーケティングのプロフェッショナルがゲームを好きになって盛り上げていく、というやり方もありだと。エイベックス・エンタテインメントさんと組んだのも、esports業界に新しい化学反応を生み出せればいいなと考えてのことです。

実は社内にはゲーマーが増えてるんですよ。とあるFPSの全国1位や、カードゲームのYouTuberなどもいますから、ゲーマー組織になりつつあると言ってもいいくらいじゃないでしょうか。

――そうなんですね! あんまりそれが表に出てないと思うんですが、わざと出してこなかったんですか?

大友:
エンジニアや制作スタッフといった裏方にゲーマーが多いからですかね。

――僕としては、CyberZのそういう姿をゲーマーの皆さんにもっと知ってもらいたいです。自分自身が誤解していたところもありますし。大友さんは最近ゲームをされてるんですか?

大友:
RAGEで採用したタイトルはもちろんやってますね。あまりに自分が下手すぎて気持ちが折れたのが『ストV』です。勝てなすぎて「自分ってこんなにダメなんだ……」とショックでした(笑)。それに比べれば『Shadowverse』は勝てるので、いまも毎日やってますよ。

――それもまた意外ですね。大友さんご自身、そして会社としても、本当に全力でesportsに向き合い、投資されているというのが伝わってきます。

大友:
そうですね、0か100かという思いで取り組んでます。esports市場自体が沈んでいって一緒に消えていくか、巨大な波が来たときに圧倒的な成功を収めるか、そのどちらかしかないというのが社内の共通認識です。

――ゲーマーにとって、そうしたCyberZの姿勢はとても心強いと思います。これだけ大会も配信もやってて本気じゃないというのはありえないですよね。

まずは選手のポテンシャルを信じること

――OPENREC.tvやRAGEを立ち上げたことで、ゲーマーと直接コミュニケーションすることも増えたんじゃないでしょうか。CyberZはもともとBtoB企業ですし、エンドユーザーと接する機会はほとんどなかったのではと思いますが、ゲーマーと接するようになってどうでしたか?

大友:
反応が直接返ってくるのはとても新鮮でしたね。動画のコメントに対しても、嬉しさもあり、「ごめんね」という気持ちもあり……(笑)。RAGEのおかげで人生が変わったと言ってくれるプレイヤーもいますし、RAGE vol.1に参加した選手が1年後にはDetonatioN Gamingに所属することになるなど、ゲーマーのさまざまな人生に関わり合えるのは本当に嬉しいですよね。話してても面白い人が多いですし。

――運営側の人と話すと、選手含めゲーマーのマナーの至らなさが話題に挙がることがあります。大友さんとしてはどう思われてますか?

大友:
たしかに、あいさつを返してくれなかったり、RAGEの抽選会や撮影会をめんどくさがったりしていた選手もいました。僕らとしては選手をスターにしたいからなんですが、やはり拘束時間が長いということもあって、始めから協力的に接してくれるわけではなかったんです。

ですが、実際に撮影したり大勢の前で試合をしたりすることで、みるみる選手の意識が変わっていくんです。ファンに見られる立場になると自然と成長していく姿を見てきました。

気になる部分があっても、こちらが疑えばいい関係は作れません。ですので、まずは選手を信じること。僕はゲーマーの皆さんのポテンシャルを信じてます。これは今後も追求したいと思ってますね。

根っからのゲーマーでなくても大丈夫

――それでは最後に、esporst業界に関心がある、特に若い世代に向けてメッセージをいただけますか?

大友:
自分が仕事をしていて感じるのは、esports業界で働くには肉体的にも精神的にもタフネスじゃないと厳しいということです。特に重要だと思うのがメンタル・タフネスです。

esportsは本当に産業になるのか未知の部分も多く、まだまだ立ち上げの時期です。つまり、これから市場を作らなければならず、ビジネスとしては非常に難易度が高い。そのため、普通の仕事を普通にするだけでは足りず、「ないものを作る」という高い視点から自分の120%を出せなければいけません

なので、過去に困難な環境を乗り越えた経験のある人や、まったく新しい場に身を置くことで自分をリセットし、そのうえでesportsに真剣に取り組みたいという人なら、仕事をこなしていけるんじゃないでしょうか。

根っからのゲーマーでなくても大丈夫です。感受性が豊かで柔軟性があれば問題ありません。僕みたいに、やったらのめり込める人もたくさんいると思います。好きになれる素養があれば、ぜひチャレンジしてみてください。

また、esportsに興味があってもまだどっぷりはまってないのであれば、RAGEなどガチなesports大会を観に行ってみてほしいですね。ライブ配信や記事、人に聞いた印象ではなく、実際に会場に来てもらうことで、そこにしかないリアルな熱気を感じられます。そうすれば、気持ちがもっと高まるはずです。

――ちなみにCyberZではいまも人材を募集されてますよね。興味ある人はぜひCyberZのリクルートページを見てもらいたいと思います。

あと、esporst市場に参入したいと考えている企業に向けても、よければメッセージをいただきたいです。

大友:
参入したい企業に対しては、改めてこのesports市場は僕らのようなオーガナイザーやプロチームだけでは成り立たないということを伝えたいですね。さまざまな部分でパートナーが必要なんです。

esportsをマーケティングで使ってみたいとか、PRで活用できないかと考えている企業は多いはずですから、スポンサー企業がもっと増えてほしいとも思ってます。もちろん、いきなり何千万円とお金をかけるのは難しいでしょう。でも、トライアルや少額でもいいので、esports大会やチームにスポンサードしてみてほしいです。

そうは言っても、esportsの大会やイベントで何ができるのか、まだ判然としない企業も多いかもしれません。なので、まずは観に来てもらうのがいいと思いますね。そうすると、いろんな可能性があることを知ってもらえるはずです。

当然、リーチだけならテレビやネットの広告のほうが圧倒的に効率はいいでしょう。ですが、RAGEではリーチとは違った価値を提供できる自信があります。特に「ユーザー体験」はesportsと相性がよく、ここに焦点を当てた施策はいま多くの企業で模索しているところじゃないでしょうか。

RAGEとしても、スポンサー企業がやりたいことを実現できるようになってきました。例えばRAGE vol.4では、日清食品さんのカップヌードルがフェードインしてくる映像を配信画面のスイッチングの際に流してみました。

――あれは僕も楽しい試みだと思いました。カップヌードルがくるっと回転しながらこっちに向かってくるのが面白いですよね。けっこう頻繁に流れてた印象ですが、映像自体が1秒未満とかなり短かったので、何回見ても「また広告か」という気持ちには全然なりませんでした。むしろ「また回ってる」と笑ってましたよ。

大友:
僕らは広告を売る側と広告主という線を引いた関係ではなく、パートナーとして一緒にいい大会を作っていきたいと考えてます。もちろんスポンサーだけでなくプレイヤーやファンも巻き込んで、日本のesportsをもっと盛り上げていきたいですね。

インタビューを終えて――始めは誰でも無関心から

僕が大友さんに興味を抱いたのは、2016年6月にファミ通に掲載されたミス・ユースケさんによる大友さんのインタビュー記事が心に残っていたからだ。この記事でミス・ユースケさんは、esportsの当時の状況を全然知らない大友さんに辛辣だった(文面はポジティブだが)。

端的に言うと「もっと興味を持って、いろいろ調べてほしい」。このひと言に尽きる。(同記事より)

実際、当時の大友さんはそう言われてもしょうがなかったかもしれない。僕自身、大友さんやCyberZに対してミス・ユースケさんと同じようなイメージを持っていた。だからこそ、大友さん自身の本音を訊きたかった。そしてその本音こそが、esports業界で働きたい人の役に立つのではないかと考えたのだ。

大友さんはそれまでの人生でまったく接点がなかったesportsに対して、2年弱でここまで強い思いを持つに至った。そう、誰でも最初は「ゲームを知らない人や興味を持っていない人、愛のない人(同記事より)」なのである。でも、大友さんのように思いがけないきっかけからだんだんとはまっていく人も多い。

例えば、皆さんが知るあの会社のあの人だって最初はLoLなんて知らず一切の関心もなかったのに、いまでは「LJLのあの選手は~」と何時間も語ることができるようになった。興味や愛が芽生えて育つには時間が必要だ。

なので、いまesports業界で働くことに関心がある人も、自分にesportsへの特別な興味や強烈な愛情があるかどうかで悩む必要はない。大友さんも言ってくれたように、少しずつ知り、少しずつはまっていけばいい。両足を突っ込んだら、どうせもう逃れられないのだから!

※2017年7月27日 一部「代休」を「振休」に訂正。

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大友真吾 @o6ulys_o
RAGE @esports_rage
CyberZ @CyberZ_official

取材・執筆
なぞべーむ @Nasobem_W

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