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LJLがみんなの夢見たeSportsの未来を運んできてくれた

2000人がネクサスを見つめていた。一方は目を輝かせ、一方は絶望の色で。

次の瞬間、会場に歓声と拍手と雷音が爆発する。

eyesのシャウトが炸裂し、Rampageの選手が満面の笑みで飛び上がる。

トロフィーが高々と掲げられ、花吹雪が散った。

夢でも見ているのかと思った。勝者が舞台をあとにするまで、唇を締めて呆然と見つめていた。

その日、LJL 2017 Spring Split Finalの会場に足を運んだ僕を出迎えてくれたのは、すでに人で埋め尽くされた観戦席と、巨大な5つのスクリーンと、そしてこれからの激闘を予感させる演奏。意匠に富んだ数々のファンアートと選手たちへ送られたいくつもの応援メッセージが会場を彩っていた。

一瞬で、呑み込まれた。

これがあのLJL……?

3年前、鳴り物入りで始まりながら低空飛行を続け、それでも儚い希望にすがっていた頃。パブリックビューイングとして開放されていたe-sports SQUAREは毎週閑散としていた。100人ほどの来場者であふれる開幕戦と最終戦だけが心の鎮痛剤だった。

e-sports SQUARE、東京ゲームショウ、ニコニコ超会議/闘会議、ベルサール秋葉原、代々木競技場第二体育館、グランドプリンスホテル新高輪 飛天の間、そして2017年4月1日――東京ビッグサイト。

覇権の道筋を、LJLは快進撃でのし上がっていった。日本に上陸を果たしたライアットゲームズが2016年から本格的にリーグの舵取りをするようになった。試合は週1から週2、そして週3へ。Twitchの同時視聴者数はあっという間に1万人を超え、いまや2万人も珍しくない。

そして覇者を決する今回のFinalは、いまや日本人なら誰もが知る日清食品と大塚食品がスポンサードする一大イベントとなった。チケットは販売即売り切れ、SNSでキャンセルの譲渡を望む声まであったという。100人200人の規模ではない――2000人だ!

そこには頭がくらくらするような光景が広がっていた。ゲームのイベント? スポーツの大会? いや、そんな言葉では表現しきれない。もはや新しいカルチャーと言ってもいい。

そう、それは2014年に僕たちが夢見たeSportsの未来だった。

Finalが開幕し、花道を歩む10人の選手にかけられる洪水のようなエールと熱視線。LoLのプレイヤーも、ノンプレイヤーでLJLファンの人も、あるいはたまたま連れて来られただけの人も、一緒になって選手を最後の闘いに送り出した。

ファーストブラッドはサンダースティックの轟音を呼び覚ました。スキルが決まるたび、スキルを避けるたび、歓声と悲鳴が飛び交った。eyesが冷静にシャウトする横でRevolが熱狂的にプレイの機微を解き明かすのは、もはや代えがたい一対の鋏のようだった。

Spring Splitの10ラウンドを1位で終えたDetonatioN FocusMeが玉座を奪還するか、それともRampageが2連覇を遂げるか。観戦者の勝利予想は両チームを行ったり来たり。

終わってみればRampageが3連勝で優勝を決めた。けれどそこには、「3試合」という一言では語り尽くせない物語が詰め込まれていた。開幕戦から一度もロースターを変えなかったRampageで、弱点とささやかれていたあのRamuneがキープレイヤーになると誰が考えていた?

MizuRussianとAotakaが見たこともないような笑顔で舞台を見上げている姿。もしその視線の先にMeronがいたら……なんて思わないほうがいいのかもしれない、でも。

椅子から立ち上がれないZerostの横顔には、この闘いにかける1人の選手の魂が見えた。がっくりとうなだれるviviDの肩にはどんな想いが乗っていたのか。それでも、チームを率いるCerosはなんとか冷静に振る舞おうとしていた、最も冷静でいられなかったはずなのに。

Rampageが手を振りながら堂々たる風格で舞台を去る……いや、それはしばらく叶わなかった。数百人のファンが舞台に殺到していた。

会場のチームブースでは、Rampage、DetonatioN FocusMe、Unsold Stuff Gaming、Rascal Jester、7th Heaven、SCARZの選手がファンと交流していた。握手、サイン、いくつかの言葉のやり取り。

みんながグッズを買い求める光景に、思わず頬が緩む。2014年のあのとき、チームユニフォームのレプリカなんてほしがる人はいない、と誰もが思っていた。それがどうだ!

試合終了後のブースには、DetonatioN FocusMeの姿もあった。屈辱的な大敗を喫してなおファンを第一に考えるその姿勢にこそ、強さの秘訣を見い出せる気がした。のちにCerosはツイートでファンへの感謝を綴っていた。成長、そんなお手軽な言葉では片づけられなかった。

LJLが、日本にeSportsの未来を運んできてくれた。

さて、ここからだ。

※画像はTwitchのRiotGamesJPから。

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