地元愛は”強い”――いま大阪でコミュニティ大会をやる理由【oreRevo Bonanzaインタビュー】
もはや聞き飽きたかもしれないが、esportsシーンの根本を支えているのはコミュニティだ。一方で、どこのコミュニティも継続的な大会やイベントの開催に不安を抱えている。同好の士に楽しんでもらおうとしても、モチベーションの維持や多額の費用はいつも重くのしかかる。
esports事業に携わる多くの人が「コミュニティが大事」と言いつつ、現場に目が行き届いているわけではないし、実際に手を取り合っている例も多くない。その必要性や仕組みについては議論すべきとはいえ、僕自身が話に聞く限り、多くのコミュニティが企業の協力(特に機材や費用)を望んでいるようだ。
そこで弊誌では微力ながらでもコミュニティに光を当て、まずは志の高い読者諸氏に存在を知ってもらいたいという考えから、コミュニティ主催者に向けて「インタビューをさせてもらえないか」と募った。そこで最初に手を挙げてくれたのが、大阪を拠点に活動しているoreRevoのBonanzaさんだった。
Bonanzaさんはいま24歳。大阪で生まれ育ち、2016年にoreRevoを立ち上げた。esportsシーンが最も盛り上がっている東京で活動することも視野に入れていたそうだが、あえて大阪を選んだのだ。その背後にはどんな想いがあったのか? そしてコミュニティ始動から3年が経ち、大阪のシーンはどう変わったのか?
今回は大阪のesportsシーンの最前線で活躍するBonanzaさんに話を聞いていく。コミュニティ主催者が現場から発する声に、少しでも関心を持ってもらえたら嬉しい。
※インタビューは9月27日(木)に行なった(アーケード版『スト5』のロケテスト前週)。
oreRevoとは、Bonanzaとは
――Bonanzaさんが取材を申し入れてくださったのは僕のツイートがきっかけだったそうですが、そもそもどういう理由があったんでしょうか。積極的に取材を受けるというからには、そこには浅からぬ背景があるかと思います。
Bonanza:
oreRevoはもともと『スト5』、今年から『ロケットリーグ』も採用して主に2タイトルで大会を開催していて、だんだん両タイトルのプレイヤーやコミュニティの一部には知られるようになってきてます。ですが、より広く知ってもらう機会を作れておらず、発信力もまだまだという課題がありました。
やっぱり知ってもらえないと新しい参加者は増えませんし、スポンサーを呼び込むのに必要な視聴者も増えません。ですので、今回の機会を通して自分たちの活動を知ってもらえたらいいなと思ってお声がけしました。
――なるほど、僕は『ロケットリーグ』部門のスタッフである合気さんの怒涛の告知ツイートもあって、けっこうoreRevoの印象は強いんですよ。でも、その実態はあまりよく知りません。Bonanzaさんって何者なんですか?
Bonanza:
オンラインと大阪を拠点としたユーザーコミュニティであるoreRevoの代表で、2016年頃から大会を主催してます。今年の6月からCYCLOPS athlete gaming(CAG)のオーナー会社、eスポーツコネクトで企画担当として仕事を請け負っていて、いまは昼にeスポーツコネクト、夜にoreRevoの活動をしてます。
oreRevo以前は対戦ゲームとはまったく違うゲームのコミュニティで遊んでたんですが、『スト5』がリリースされたときに身内で対戦会をやろうとしてなんとなくツイートしたら、全然知らない人から協力したいと言われたんです。それがきっかけで、外向けに大会をやってみることになりました。
――『スト5』からだったんですね。
Bonanza:
『ウル4』自体はゲームセンターでプレイしてました。それこそ毎日通うくらい(笑)。ウメハラさんやsakoさんの活躍には憧れてましたし、なにやらesportsが盛り上がりつつあって、そういうコミュニティもできつつあるのは感じてました。身内以外も参加できる大会を開催したのは、そういう雰囲気が高まってきてたのもありましたね。
――当時、2016年の大阪ないし関西というと格ゲーはKSBを中心に盛り上がってたと思うんですが、それ以外のesports的なシーンはあまり目立ってなかったですよね。がっつり『スト5』をプレイしてるような知人でも、RAGEの『スト5』部門の予選が大阪で開催されることを知らなかったって言ってました(笑)。そういう状況で、大阪を拠点にゲームセンターではないコミュニティ大会を開催するのは難しそうだと感じませんでしたか?
Bonanza:
僕自身が大阪に住んでいるのもあって、地元愛は大きかったですね。東京は東京でコミュニティがあったので、だったら自分は大阪でもっと盛り上げたいという気持ちがありました。
――大阪でやることに大きな意義があったんですね。僕は大阪で生まれ育ったにもかかわらず東京でtokyo esportsをやってますが……。
Bonanza:
とはいえ、最初は全国どこからでも参加してほしいという思いがあって、オンライン中心で大会を開催してたんです。にもかかわらず協力してくれるスタッフが関西勢ばっかりで、これならオフラインでもできそうだなと不定期で開催するようになりました。
「俺たちのEVO」から始まった
――いまもその流れでオンラインとオフラインで大会や対戦会を開催されてますが、oreRevoって大きな目的としては何があるんでしょうか。
Bonanza:
当初は日本でEVOみたいな大会を開催したいと考えてました。EVOに行きたくても行けない人が多いと思うんですが、それなら自分たちで日本のEVOを作ればいいと。なので、名称もそのまま「俺たちのEVO」で活動してたんです。
EVOもいまや企業スポンサーがつくなど豪華な大会になってますが、小規模のコミュニティ大会から始まりましたよね。そういうあり方に憧れがありました。
ただ、今はEVOの真似はやめて名称も改め、oreRevoとして世界最高の大会になることを目指してます。いま3年ほど活動してきて、それなりに規模が大きくなり、成長も実感してますね。関西で最大規模の大会であるKSB 2017では、『スト5』のオーガナイザーを担当させてもらいました。
――EVOを目指していたとのことですが、2018年にEVOのほうが日本にやってきたじゃないですか。EVO Japanはどうでしたか?
Bonanza:
裏でそういう動きがあったことを全然知らなかったので、発表されたときは腰を抜かしました(笑)。僕は本家のEVOは映像で見たことしかないんですが、実際にEVO Japanに参加してみると、日本ならではのよさがあったと思います。なので、独自の形で発展していくんじゃないでしょうか。
――oreRevoはオンラインとオフラインで大会を開催してますが、それぞれの位置づけはどうなっているんでしょうか。
Bonanza:
そもそもはオンラインだけでやろうと考えてました。というのも、大阪や東京ならゲームセンターも多いですし、対戦会もありました。でも、それ以外の地域になるとオフラインで対戦する場がないに等しかったんですね。だったらオンラインの大会のほうを充実させて、誰でも対戦を楽しめるようにしていきたかったんです。
オフラインについては、お金もかかるのでたいへんですが、参加者の顔を見ることができるのが大きなモチベーションになりますね。実際に集まって対戦をするのはやっぱり楽しいですし、特に格ゲーはゲームセンターしかり、オフラインの場があるからこそ強いプレイヤーが生まれるんじゃないかと思います。そういう意味で、オンラインとオフライン、どちらも欠かせません。
目標の達成度はまだ8%
――oreRevoとして、直近ではどんな目標を掲げていますか?
Bonanza:
「oreRevoの大会なら安心して参加できる」と思ってもらえるようになることがいまの目標です。クオリティもそうですし、来れくれれば必ず楽しい気分になってもらえることが大事です。
もっと具体的な目標もあります。『スト5』の大会といえばダブルエリミネーションのトーナメントが一般的ですが、それ以外の形式も含め、プレイヤーにとってどういう大会やイベントが一番楽しいのかはっきりさせたいと考えてます。
CAGと協力してOsaka esports basement.で開催しているランキングバトルでは、毎週の対戦で獲得したポイントが多いプレイヤーが特別な大会に招待される形式なんですが、こういうことを試行錯誤してますね。
――現状の規模としてはどんな感じなんでしょうか。大会の開催数など教えてもらえますか?
Bonanza:
『スト5』部門は月1のオンライン大会を開催してきまして、いまも継続してます。『ロケットリーグ』部門も同じく月1でオンライン大会を開催してますね。で、『ロケットリーグ』部門の立ち上げの頃に僕がeスポーツコネクトの仕事をするようになり、毎週水曜日に『スト5』のランキングバトルをオフラインで開催することになりました。なので、合わせるとオンラインで月2回、オフラインで月4回の大会ないし対戦会を開催してますね。
――月6回って相当ですよね(笑)。
Bonanza:
そうですね(笑)。スタッフが10人以上に増えたので回していけてます。あと、ゲーミングごみ拾いというイベントもやってるんです。東京でOooDaさんが開催されてたのを見て始めたんですが、本当にゲーマーが集まってごみ拾いをするだけです。
でも、普段の大会や対戦会には参加しないような人、『スト5』以外のタイトルをプレイしてる人が参加してくれるんですよ。社会貢献というよりはそのあと一緒に対戦するのが目的なので、新しい繋がりを広げるのにごみ拾いって合ってるんですよね(笑)。
――社会貢献が目的じゃないというのがいいですね(笑)。大会の参加者数はどうですか?
Bonanza:
『スト5』については、以前は64人で安定してたんですが、これだと人数が多すぎて1人の試合時間が短くなってしまうんです。それよりは、1回の対戦会でより多く試合をしてもらいたいので、いまは32人に絞ってます。正直多くはないので増やしたいとは思いつつ、1人1人が楽しい時間を過ごしてもらうことが最優先なので、参加者数にこだわりすぎると危ないとも考えてます。
『ロケットリーグ』は3人+補欠1人で1チーム4人、大会では24チームが安定して参加してくれてます。国内で熱心にプレイしてる人たちがほとんどですね。Logicool G CUPで種目になったこともあり、今後はよりカジュアルにプレイする人も増えるかもしれません。
――『ロケットリーグ』で毎月100人近い参加者がいるというのはすごいですね。『スト5』の人数を絞っているのも意図があってのことなので、ぜひそのスタンスでやってほしいです。では、視聴者数はどうですか?
Bonanza:
生放送の視聴者数は『スト5』で150人ほどで、『ロケットリーグ』がそれより少し多いですね。
――『ロケットリーグ』のほうが多いんですね。やっぱり日本で大会が少ないからでしょうか。
Bonanza:
それもあって大会を企画したので、狙いは合ってました。『スト5』はまだまだ一部にしか届いてないイメージです。カプコンプロツアーやTOPANGA、RAGEなどほかの大会や番組が強すぎると思いつつ、大会を観る人自体は多いので、その人たちにどうやって知ってもらうかいつも考えてます。
しかも、『スト5』は大会を開催するコミュニティも企業も増えてて、さらに週末は海外大会も集中します。大会をやろうと思っても、ほとんど曜日や時間がかぶっちゃうんですよ。だから、視聴者も分散しがちです。
――RAGEの『スト5』大会ですら平日に放送してますよね。そういう点も考えると、コミュニティ大会が視聴者数を伸ばすのは難しいところもあるように思います。でも、参加者数が安定し、そして増えてるのなら、大会としては成長してると言えますよね。oreRevoとしては、当初の目標に比べていまどれくらい達成してるとお考えですか?
Bonanza:
8%くらいですかね(笑)。
――何が一番足りてないと思いますか?
Bonanza:
最初にお話ししたように、やっぱり発信力です。oreRevoをまだ知らない人たちに知ってもらいたいんですよ。例えば、僕が大会の告知ツイートをしたとき、リツイートしてくれる人はいつもの人たちで、参加者もいつもの人たちが多いんです。それはそれでとてもありがたい一方で、大会としてやれることを増やすためにもその外側に情報を届けていきたいですね。
――発信力は自分たちがつけるのも大事ですが、発信力のある人と繋がる、あるいはそういう人にコミュニティに入ってもらうのも大事ですよね。今回の記事が一助になれば嬉しいですが……。
新しいことを試していきたい
――ところで、最近僕はコミュニティ大会同士の提携についての記事を書いたんですが、先ほどお話に上がったCAGと共催しているランキングバトルはどういうきっかけで始まったんでしょうか。
Bonanza:
昔から僕の活動を支えてくれてたスマブラ勢のIKKIさんという方がいるんですが、実は僕をeスポーツコネクトに誘ってくれたのもIKKIさんなんです。もともとゲーム屋で働きながらoreRevoをやってたとき、本気でイベントに取り組みたいと思って相談したら、面接の段取りをつけてくれたんですね。
僕がeスポーツコネクトで仕事をするようになったからというのもありますし、もともとOsaka esports basement.を借りて大会を開催してたのもあり、『スト5』のトッププレイヤーであるどぐらさんやGO1さんがいるチームと連携するしかないと考えました。それでランキングバトルの企画を提案したんです。
――ダブルエリミネーション以外の形式を試す、そして立場を活かすというBonanzaさんの目論見がいい感じで噛み合ったと。eスポーツコネクトとの関わりがなければ実現しなかった企画ですね。
Bonanza:
本気でイベントをやるとなったとき、oreRevoは大阪を拠点にするとしても、自分自身は東京に行ったほうがいいんじゃないかとも思ったんですよ。esports系の企業は東京に集まってますし、情報も早いです。それでも大阪を選んだのは、僕の知る限り、eスポーツコネクトがどこよりもユーザーコミュニティを大切にしてくれる会社だからです。
――東京だとCyberZやWell Playedがesportsのイベントを企画運営できる人材を募集して、採用しまくってるという噂を聞きますが、Bonanzaさんのような実績と行動力がある人なら大歓迎でしょうね。
Bonanza:
実は調べてるときにCyberZは気になってたんですよね(笑)。でも、やっぱり大阪でやりたかったですし、大阪のプレイヤーが好きなんです。
――おまえが言うなって感じですが、大阪にそういう人がいるというのは嬉しいです。では、『ロケットリーグ』のほうはどうですか? これまで日本での主だった大会はRed Bull 5Gくらいで、ようやく年末から来年にかけてLogicool G CUPや全国高校eスポーツ選手権で盛り上がっていきそうですが、そういう状況ではなかった段階で大会を定期開催するようになったのはなぜなんでしょうか。
Bonanza:
大会自体は開催したいと考えてたんです。でも、oreRevoには「本気でそのゲームを愛してる人じゃないと最高の大会は作れない」というモットーがあります。メンバーの中でプレイしてる人はいても、熱心なプレイヤーに満足してもらえる大会にできるかは不安があって、長い間保留にしてました。
ですが諦めきれず、少し交流のあった合気さんに連絡を取ってみたんです。『ロケットリーグ』のコミュニティリーダーをされてる方ですね。合気さんをoreRevoに誘って、何回か断られたあと、ついに説得ができました。それで『ロケットリーグ』の大会を定期開催できるようになったんです。いまはいろんな人に手伝ってもらってますが、日本のシーンで言うとまだまだ土を用意してる段階かなと。
もしほかのジャンルやタイトルに手を出すとすると、同じように本気で入れ込んでいる人を誘う形になると思います。『Fortnite』に関してはメンバーの大和がかなりプレイしてるので可能性はありますが、とにかく情熱のある人が主催しないと成功も成長も難しいと考えてます。
大阪のいま
――Bonanzaさんの大阪に対する気持ちが強く伝わってきてややプレッシャーを感じてますが、大阪のesportsシーンってどんな感じに映ってますか?
Bonanza:
僕はなるべくesportsという言葉を使わず対戦ゲーム、ゲーム大会と言うようにしてるんですが、それは自分がesportsをどういうものか理解してないのと、まだまだ説明しないと通じにくいという理由からです。2016年と比べれば理解は広がってると思いますが、それでも東京と比べると全然ではないでしょうか。
僕の印象に残ってるのが、2016年頃にoreRevoに参加してくれてたプレイヤーの言葉です。けっこう多くの人が、「自分も東京に行ったらもっと強くなれるんかなぁ」と言ってたんですよ。スタッフですら「いまの仕事を辞めて、東京で……」と言ってました。そういう声を間近で聞いて、たしかにと思うことはありました。
実際、プレイヤーとして活躍できる環境が整ってるのは東京です。あるいはキャスターもそうかもしれません。メンバーの大和も大阪の大学に合格してたのに、それを蹴って実況者として活躍されてるアールさんに弟子入りしましたからね。それで公式大会の実況を務めるようになったのでたいしたものです。
大阪には可能性を秘めた人たちがいっぱいいるんですよ。だから、僕はそういう人たちが大阪にいることをハンデだと感じない、むしろ上達するための最高の場所だと思ってもらえるようなコミュニティを作りたいと思ってるんです。
――たしかに、いまは大阪や福岡で動きがあり、全国的にも地方協会が立ち上がってますが、まだ東京一極集中は強いですね。個人的には、ずっと大阪で活動してたsakoさんやハイタニさんまでもが東京に来たというのは衝撃でした。
Bonanza:
そうですよね、僕も「sakoさんは大阪にいてくれるやろ」と思ってて……(笑)。もちろんいまも応援してますが、彼らにとって大阪では物足りなかったというのも事実です。
oreRevoがsakoさんのようなトッププレイヤーを引き止められるほどの存在になれてるかは分かりませんが、この2、3か月、ランキングバトルを開催してて、明らかにプレイヤーが以前より急速に強くなってることは実感してます。例えば、oreRevoのメンバーでもあるtrashboxはCAPCOM Pro Tour ジャパンプレミアで7位になりましたね。
――格ゲー以外だとどうなんですかね? CAGは『Overwatch』で現状日本最強チームですし、『CoD: WWII』のプロ対抗戦に出場するなどほかのタイトルでも活躍してます。その影響はありますか?
Bonanza:
僕自身が格ゲー以外に詳しくないのもあるんですが、FPSタイトルなどのイベントはあまり聞かないですね……。今度eBASEBALL パワプロ・プロリーグが始まりますが、阪神タイガースとオリックス・バファローズが参戦するので、大阪でも盛り上がるかもしれません。
――CAGが設立されたのは2016年ですが、それ以降でシーンに何か変化ってありましたか?
Bonanza:
チームと同時に作られたOsaka esports basement.ができたのは大きかったです。毎日別タイトルで対戦会をやってて、新しい場として重宝されてると思います。いままではゲームセンターしかなくて、プレイヤーも同じ時間帯に来られるかというとそうとも限らなかったんですが、対戦会なら開催時間が決まってるんで一堂に会しやすいです。ゲームセンターでは人が集まらないゲームでも、対戦会になら人が集まって息を吹き返すこともあるんですよね。
――オフラインで対戦する場や施設ってコミュニティにとって重要だと思うんですが、足りてますか?
Bonanza:
全然足りてませんね。
――それは東京でも同じだと思うんですよね。格ゲー中心にStudio SKY、Red Bull Gaming Sphere、e-sports SQUAREなどで対戦会が行なわれてますが、格ゲー以外となるともっと少ないという印象です。大阪だとさらにですよね。『スト5』で言えばアーケード版が発売されますが、それもゲームセンターが少ないという問題があります。
Bonanza:
たしかに少なくなってきてますね。ただ、ゲームセンターは独特の場で、対戦会とは違う価値があります。プレイするときにお互いにあいさつなんてしませんし、なにより毎試合ワンクレジットを懸けて戦います。無料でいくらでもプレイできる環境とはまったく違ってて、1試合の重みがあるゲームセンターのほうを好む人は少なくないと思いますね。
ただ、『スト5』は家庭用が先にリリースされて、コミュニティもでき上がってます。そこにアーケード版が登場したとして、どれくらいの人がそっちをメインにしていくのかは未知数です。僕はゲーセン勢だったので楽しみですけどね。
――物理的に場を作るのは簡単ではないですが、プレイヤーやコミュニティから見れば必要とされてると。そういう部分に気づいて参入してくれる企業が増えればいいんですが。
Bonanza:
とはいえ、モニターとゲーム機やPC、椅子を置くだけでいいわけじゃないんです。eスポーツコネクトでもかなり気を配ってるんですが、プレイヤーが最高の環境でプレイできるようにしないといけません。わがままかもしれませんが、一定のクオリティを担保できる場が増えてほしいです。
――大阪では格ゲーが盛り上がってますが、FPSとかだとどうしたらいいですかね?
Bonanza:
実際、格ゲー人口よりFPS人口のほうがずっと多いと思うんですよ。誰でも1回くらいは何かしらのタイトルを触ったことがあるはずです。でも、そういうプレイヤーを発掘していくコミュニティがないのかもしれません。
――大学のesportsサークルはありますが、そこまで大きな動きにはまだなってないんでしょうか。FPSタイトルはいくつもプロリーグができましたし、大阪でもコミュニティが活発になる下地はあると思うんですよね。我々が知らないだけかもですが。
Bonanza:
oreRevoでやるとしたら先ほど話した『Fortnite』がありえますが、いますぐできるかは要検討ですね。
あの人に認めてもらうためにも
――コミュニティ大会として改善したいところ、協力してもらいたいところってありますか?
Bonanza:
大会を開催するための費用はいつも頭を悩ませてます。開催数や会場規模、大会や配信のクオリティに直結する部分ですからね。それに、より広く知ってもらうにもお金が必要になります。現状では僕のポケットマネーから出してて、oreRevoからの収入は一切ありません。
このままだと大会のクオリティが下がるだけでなく、そもそも開催できなくなっていきます。これはoreRevoだけでなく、ほとんどのコミュニティが抱えてる問題なんですよね。コミュニティの主催者のやる気だけで継続して、そのやる気が何かのきっかけでなくなってしまえば終わりです。多くのコミュニティがこの滅んでいく流れに乗りつつあるんです。でも、これってプレイヤーにとって、もちろんゲームにとってもよくないことです。
oreRevoではゲームに理解のあるスポンサーを探してますが、もし興味のある方がいましたら、声をかけていただきたいですね。
――oreRevoとしてはスポンサーにどういう価値を提供できますか?
Bonanza:
サイトや生放送でアピールできるのは当然として、対戦会には何十人、オンライン大会でも100人近くが参加してくれるので、情熱をもってプレイしてる人たちにアプローチできます。
あと、『スト5』ならメンバーに大会で活躍している強い若手プレイヤーがいるので、彼らにロゴやブランドを背負ってもらうことができます。ただ、彼ら自身がoreRevoの活動とは別にスポンサーを獲得する可能性もあり、その場合の両立が可能かは相談しないといけません。
選手を紹介すると、先ほど紹介したtrashboxは世界で通用していますし、ほかにもJimmyやさかがみ、ラブレンジいった台頭している若手がいます。青田買いというわけではないですが、注目してもらえると嬉しいですね。
――まずはこの記事を通して興味を持ってもらいたいですね。特に大阪を拠点にしてるということで、地域色を出すことができますし。ゲームメディアの方にも、プロ選手やプロリーグがいっぱいあるので忙しいかもしれませんが、東京以外にもこんな人がいてこんなコミュニティがあるんだということを取材してほしいです。esportsシーンを支えてるのはコミュニティですから。
Bonanza:
そういう文言は最近よく記事で見かけます(笑)。
――ここまでビジョンや胸の内を言葉にできる人も少ないですし、僕としてもBonanzaさんが大手ゲームメディアの誌面を飾る日を楽しみにしてます。では最後に、言い残したことがあればぜひお願いします。
Bonanza:
そうですね……大阪の格ゲー界隈に、お世辞抜きで厳しく評価してくれるだろうという対戦観を持っていらっしゃる大御所プレイヤーがいます。その方にoreRevoがいいコミュニティで、いい対戦会をやってると認めてもらうことが個人的な目標です。いつかそう言ってもらえるように頑張っていきます。
インタビューを終えて――いかにコミュニティに寄り添うか
冒頭で「コミュニティが知られていない」と書いたが、これには当然ながらコミュニティ側の問題もある。コミュニティ自身がどういう価値を提供できるのかを明確にして積極的にアピールしなければ、お金などのリソースを出す側も動けない。ただ「協力してほしい」と言うだけでは、どうにもならないのだ。
とはいえ、コミュニティの主催者はたいてい別で仕事をしながら大会の企画や運営を行なっているので、広報にまで時間を取れるとは限らない。結局のところ、現状では主催者のモチベーションやポケットマネーに依存せざるをえない。ここから脱却するのは簡単ではないだろう。
また、ゲームが権利物である以上、コミュニティが持続的な活動のために収益化を目指すなら、きちんと手続きに則る必要もある。ところが、ライセンスの許諾手順が複雑だったり明確化されていなかったりする場合も少なくない。それどころか、チョコブランカさんのインタビューでも語られていたように、ゲームを盛り上げたいと真摯に取り組んでいるコミュニティに対してゲーム会社が必ずしも理解を示しているとは言えない状況もある。
課題は多い。ただ、それでもやはりゲーム会社やメディア、プラットフォーマー、あるいは協賛を検討している企業がコミュニティに寄り添っていくべきだろう。熱中するプレイヤーがいなければ、esportsどころかタイトルを取り巻くシーンなどとうに消滅しているのだから。
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取材・執筆
なぞべーむ @Nasobem_W
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