退屈をアイデア1つで楽しくしてしまう映画『イエスマン』に学ぶ、人生をちょっと面白くする方法
有名な映画なので知っている人も多いと思いますが、ジム・キャリー主演の『イエスマン』を観ていたときにめちゃくちゃ面白かったシーンに出くわしたので紹介します(8/3現在、Netflixなどで配信中)。
サブタイトルは「"YES"は人生のパスワード」。消極的で否定的で、どんな誘いにもまず「ノー」と答えて、堅実で安全である代わりに同じことの繰り返しで単調な刺激のない人生を生きてきた銀行員の主人公・カールが、とあるきっかけで自己啓発セミナーに参加し、「何にでもイエスと言う」ことを約束してしまうところから物語が加速していきます。
あらゆる誘いやお願いに「イエス」と答えるなんて考えるだけで搾取され利用されそうで恐ろしいですが、カールは我慢強く実践します。「イエス」と言った瞬間は損したり嫌なことが起きたりするんですが(見知らぬホームレスに有り金全部あげるなど)、のちのちに嬉しい形で見返りを得るという因果応報が心地よく描かれます。
この「イエス」の実践過程でカールはアリソンという女性に出会い、いい関係になっていきます。僕がとても感銘を受けたのは、カールとアリソンが「とりあえず次の航空便に乗ってみる」という行き当たりばったりの旅行に出かけたときのシーンです。
ネブラスカ州のリンカーンに降り立った2人は、空港に広告ポスターが貼ってあった電話博物館を訪れます。一軒家ほどの小規模な建物で、歴代の電話とその説明書きが並んでいるだけの……極めて退屈でつまらなそうな博物館です。
僕ならポスターを見かけても行こうと思わないでしょう。実際、博物館の中ではアリソンが退屈そうに説明を読んでいます。
ですが、そこでカールが「これ見て」とアリソンに声をかけます。「世界初の電話」と指差す先は、柱時計ほどもある世界初の電話……の前に座るグラハム・ベル(?)のマネキン……の手が持っているNOKIAの携帯電話。
「受話器を見て。意外と小さかったんだなぁ」と言うや、カールが「ブルってる」と自分の携帯電話を取り出す……と思ったら本物の世界初の電話の受話器(でかい)を出して「ハロー」。
電話博物館のシーンはほんの20秒ほどです。でも、僕は本作のエッセンスがほかのどのシーンよりもこの20秒に詰め込まれていると感じました。
カール自身も電話博物館をつまらないと思ったはずですが、一緒にいるアリソンとその状況をどう楽しめばいいのかを考えて、世界初の電話というノリで当時(2008年公開)の最先端技術であるNOKIAの携帯電話を展示してみたわけです(もちろんカールの持ち物ですね)。これをやられたら僕も笑ってしまうでしょう。
たった1つのアイデアでアリソンは笑顔になり、この旅行での2人のちょっとした思い出になりました。もしそのアイデアがなかったら、リンカーンの電話博物館は忘却に葬り去られて退屈の代名詞として思い起こされるだけだったかもしれません。
これこそ、僕が常日頃から考えて実践しようとしている、人生を面白くするための方法です。つまり、受動的に口を開けて餌を待っているだけだと人生は楽しくならないから、自分で能動的に面白いことを作っていかないといけない、ということです。
誰しもいろんな状況で「自分には退屈でしょうがない」「なんか面白くならないかな」と考えることがあると思います。振り返ってみてほしいんですが、そういうとき、自分から動いて面白く・楽しくしようとしていたでしょうか。
もしかしたら「そうではなかった」と思い当たる人もいるかもしれません。僕自身、人生を振り返るとそういう状況が多々あり、しかし自分は棒立ちで何か面白いことが起こること、誰かが楽しませてくれること、あるいは誰かに話しかけられることを期待して待っているだけでした。
そんな都合のいいことはめったに起こりません。自分が楽しめていない、面白くないと感じているのはその場やそこにいる人たちのせいではなく、ましてやその人たちが面白くない存在なのではなく、面白くないのは自分自身なんです。
『イエスマン』は改めてそのことを教えてくれました。何にでも「イエス」と答えるのは、やはり怖いのでほどほどにしたいところですが、少なくとも自分の人生に肯定的に、能動的になるのはいい方向に転ぶことが多いのではないでしょうか。
その感覚を他人にまで広げていければ、人生の面白さはもっと増していくと思います。僕はまだまだそこに至れていない道半ばですが、退屈やつまらなさは他人のせいではなく自分のせいであるとは心がけています。
こうした教訓を読み取らずとも、映画としてたいへん面白くできているので、よかったらお暇を取って『イエスマン』をご鑑賞あれ。
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