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eスポーツと銘打たれていても、そこに好きなゲームが入っていないとき

弊誌も自戒しつつであるが、近頃痛切に感じるのは「eスポーツ」と大々的に銘打たれたイベントや大会を目にしたとき、そこに自分の好きな、熱中している、本気で取り組んでいるゲームタイトルがない場合が多いこと。

プレイ&観戦で何度も楽しい

僕自身は観戦するタイトルは多々あるものの、自分が寝る間も惜しんでプレイする対戦ゲームとはなかなか相見えず、それがどうにももどかしいというか、趣味であれ仕事であれ本気でゲームに向き合えている人たちが羨ましかった。

『Overwatch』にハマって以降、『R6S』や『Fortnite』などをプレイしつつもいまいち波に乗りきれず、でも一昨年末に『クラロワ』と出会えて自分にもやっと打ち込めるゲームができた。今年はそこに『オートチェス オリジン』が加わった(『TFT』はのちほど……)。

熱を上げてプレイできるゲームがあれば、観戦オンリーとはまた違った楽しみをそのゲームに見出せるようになる。つまり、プレイへの情熱が大会を観戦したりイベントに参加したりするモチベーションにも転換されうるということだ。だから、自分が全力を注ぎ込んでいるゲームがあるなら、楽しさはプレイする以外のところにもどんどん波及していくことになる。

プレイしているゲームが多いと人生は2倍3倍無限大に楽しくなるわけだが、残念なことに、人類は少数の対象にしか愛情を捧げられない。時間も気力も有限だ。必然的に、本気で/夢中でプレイできるゲームは多くて2、3つに限定されてしまうだろう。プロゲーマーしかり、たった1つの対戦ゲームしかプレイしていない人も多いはず。

それでも自分がプレイしているゲームは紛れもなくeスポーツなので、「eスポーツ」と名のつくイベントや大会が発表されたら気になってしまう。特定のイベント・大会名を指すわけではないが、「eスポーツフェス」「eスポーツパーティ」「eスポーツ国際戦」などなど、さまざまある。

で、プレイヤーとしてはどのゲームが採用されたのかを知りたくなる。もし自分がプレイしているゲームだったら――淡い期待は砕けがちだ。そして、自分の好きなゲームがないと「なーんだ、関係ないや」となってしまう。

自分が好きな対戦ゲームとは関係ないeスポーツ

弊誌もそうだが、これまで「eスポーツ」を冠する名称は多々生み出されてきて、今後も生み出されていくだろう。流行語で受けがいいらしいから主催者がこの言葉を使いたがる理由はよく分かるし、議論の際やキーワードとしては便利だから使うほうがいいし、でも、使いすぎるのもよくないなと思う。

自分が好きなゲームもeスポーツなのに、自分が好きなゲームとは全然関係ないところでeスポーツが舞い踊っている。なんとも不思議な状態だが、そこには見て見ぬ振りをしてはいけない問題がある気がする。

このミスマッチの際に生じる感情の落ち込みが、eスポーツに対する負の感情として立ち上がってくる可能性は?

すでに僕たちは実際にそれを経験している。JeSUのライセンス認定タイトルの話だ。その中に自分が好きなゲームが入っている人は幸いだが、そうではない人はどうか? そうではない人はどんな反応を示したか? あのときほどeスポーツシーン全体に負の感情が渦巻いたときはないかもしれない。

別にこれはJeSUが悪いだとか、仕組みが悪いだとか、ゲーム会社が悪いだとか、そういう次元の話ではない。eスポーツという言葉を使う以上は避けられないし、そもそも全タイトルを網羅できるはずもない。なにより、JeSU自体は「eスポーツ」を使うべきだった。

けれど、だからこそ少しでも「自分の好きなゲームが入っていない」というプレイヤーにとってあまりにもやるせない感情を和らげる工夫はできただろう。そしてそれは、「eスポーツ」という言葉を使って何かしようとする全員が意識しなければならないことではないだろうか。

いつ「eスポーツ」を使うべきか

ちょっと脱線して弊誌について書くと、happy esportsの記事では「個別のゲーム名をまったく出さず抽象的にする」「複数本のゲームを出して相対化する」「1本だけに特化する」という方針で、読み手にとってなるべく分かりやすく書いてきたつもりだ。

ある特定のゲームの話を書いているのに、タイトルで「eスポーツ」と謳ったことはない……と思う。逆に例えば、「プロゲーマーがチャリティ! eスポーツの未来は明るい」というタイトルの記事で、本文には『○○』というゲームのプロゲーマー1人だけが寄付をしたと書かれていたとしたら、タイトル詐欺だと言われてもしょうがない。まったくeスポーツ全般のことではないからだ。

「eスポーツフェス」的な名称のイベント・大会はこれに近しいと思う。多様なゲームを包含するeスポーツという言葉を使いつつ、実際には2、3本のゲームあるいは1本のゲームでしか大会を行なわない……はたしてeスポーツという言葉を使うべきなのか?

先にも書いたように、たった1種類のゲームの大会であっても、このご時世なら「eスポーツ」という言葉を使いたくなるのは理解できる。でも、結局それは「eスポーツ」を使わなかったことで集客できなかったとなるのが怖いからだ。独自性のある名称を使うと誰にも関心を持たれないかもしれない……それならせめて……。

タイトルの採用理由を知りたい

翻って、最初から「eスポーツ」に頼らず独自性に挑戦したCyberZのRAGEは非常に挑戦的だったと言える。特にサードパーティ主催のイベント・大会はどこもかしこも「eスポーツ」に溢れる中で、RAGEは名前だけですでに異彩を放っている。

RAGEでの採用タイトルが発表されるとき、そのゲームのプレイヤーでないとしたら多少は残念かもしれないが、「今回はこれか」とRAGEという枠組みゆえに納得はできる希望がある。しかし、もし名称に「eスポーツ」が含まれていたら、また違った感情が芽生えるのではないだろうか。

ほかにも、『モンスト』の一大決戦が行なわれるXFLAG PARKは、eスポーツをやっているにもかかわらずそれを名称としては採用していない。そこには総合エンターテインメントとユーザー同士のコミュニケーションという哲学があり、eスポーツはそれを実現する手段の1つだという信念があるからだ。わざわざeスポーツと謳う必要もない。

もちろん、とある毛色のイベント・大会の名称で「eスポーツ」が使われやすいのは明々白々だが、それはさておき、「eスポーツと言いながら特定のタイトルしか……」と言われたらもうおしまいだ。ゲームタイトルの選定やライセンス交渉はたしかに難しいが、そんなところで負の感情を生ませても意味がない。

「eスポーツ」を使わないほうがいいということでもない。使うとしたらなぜ使うのかを明示すべきだし、特定のゲームしか採用しない場合にも採用理由を付してほしいのだ(どうして『オートチェス オリジン』は採用されないんですか?)。それもなくただ「このゲームでやります」と書かれてあるだけなら、納得のないがっかり感が募るばかりだ。

こうした状況の一方で、「eスポーツ」を使いたがらない人たちもかなりいる。ゲーム会社が主催する大会は当然ゲーム名が使われるが、独自名称は(1種類のゲームだけであっても)特に草の根、コミュニティベースのイベント・大会で多い。使いたい側と使いたくない側の鮮烈な線引きがなされているのはけっこう面白い。

どこかで興味と繋がっている

eスポーツが大好きな皆さんもきっと、「eスポーツ」と銘打たれたイベントや大会で自分の好きなゲームが入っていないという悲しみを背負った経験があるだろう。そのミスマッチには主催側にも事情があることを知っておいてもらいたいし、だからこそ自分の関心とマッチするイベントや大会には積極的に関与(視聴、参加、手伝いetc.)してほしいなと思う。

あるいは、自分には興味がない大会でも、どこかで自分の好きなゲームの大会と繋がっているかもしれない。運営会社やスポンサーが同じとか。好きなゲームが入ってなかったからとがっかりするより、そんなうっすらとした繋がりを大事していきたいね。


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🍖ミ
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ようこそ、eスポーツブランド研究家です。主に日本のeスポーツ業界のあれこれをマーケティングの観点から考察・分析しています。 eスポーツに関心がある方はぜひマガジン「happy esports」をフォローください。

コメント5件

僕もずっとボルテをやってるので同じ感覚は分かりますが(QMAもちょっとやったことあります)、店舗減、筐体減、人口減はアーケードゲームの宿命・潮流ということで避けられないと思います。KONAMIとしてはどちらもeスポーツ化させたい感がありつつ、そういった状況があったりプレイヤーが望んでなかったりするのなら必要ないでしょう。
僕も別に自分が音ゲーのeスポーツ化は(実現できるなら嬉しいけど)それほど望んではなく、あの筐体でボルテをプレイできればそれでいいので、とにかくできるだけゲーセンに足を運ぶことを目標にしてます。リフレクの二の舞にならないよう、筐体が減らされないようにと。

eスポーツというのはとにかくゲーム自体の盛り上がりと人口があってこそのものなので、そこを醸成していくのが先決でeスポーツ化以前の施策・対策が不可欠です。なのでKONAMIの方針が必ずしも正しいとは思いませんが、とはいえゲーセンが置かれた状況はどうしようもなく。なので、プレイヤーとしては好きなゲームがサービス終了にならないように行動するしかないでしょうね~。
返信ありがとうございます。私はQMAを10年やっていますが、格ゲーや音ゲーとはまた違ったe-sportsとしての問題があると思っています。
これはコナミのe-sports推進室長もおっしゃっていることですが、
https://www.inside-games.jp/article/2017/06/06/107658.html
いかんせん「答えを覚えている」というのが見ている人にとってあまりよくないイメージなんですね。こちらからすれば格ゲーのコマンドを覚えたり、音ゲーの譜面をおぼえたっりするのと同じだと思うんですが、なぜかクイズだけ「答えを覚えるのはずるい」みたいな風潮になっているんですよね。
ちなみにおととし、「新規とベテランを同じ地表に持っていく」という試みの元、オンラインで行われるイベントの「全国大会」でまったく新しい問題のみ出題するというのがあったんですが、上位層はみんなあっという間に覚えてしまい、寧ろ既存の問題よりも早く回答するようになった、という笑えない話がありました。
このインタビューの時点では猿楽さんはeスポーツについてほとんど何も知らない状態で話しているので、その点では気にしなくていいと思います。
QMAはクイズ王の文脈なので、eスポーツ的な演出をするならそれに沿った見せ方をすればいいのではないでしょうか。答えを覚えているからずるいというのは正直意味不明です……見ている人にとってもいまいちというのもよく分かりません。クイズ王にしても早く回答するところに妙があるはずですし。誰が言ってるんですかね?
「答え」をおぼえているというよる「質問」をおぼえているというのが微妙なのでは?
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