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クラロワの非公式大会で協賛者が50名以上、賞金は100万円以上に! 何がすごいのかを詳しく説明する

ものすごいことが起きている。

僕はその熱狂に浮かされたままこの記事を書いているので多少言葉が滑るところがあるかもしれないが、どうか許してもらいたい。それくらいに、ものすごいことが起きているのだ。

いったいどんなものすごいことが起きているというのか。

ゲーム『クラッシュ・ロワイヤル』の非公式大会に賞金を提供したいという協賛者が50名以上集まり、総額が100万円を超えてしまったのだ(2020年1月11日時点。最終的に244万円に)。

『クラロワ』の歴史上、おそらく日本のeスポーツの歴史上でも初めての出来事だろう。協賛者のほとんどは個人であり、しかも『クラロワ』以外のゲームのプレイヤーやインフルエンサーも含まれる。

彼らの熱が集い、いま、これまでに類を見ないような「祭」が生まれつつある。

今回はeスポーツに関心がある人はもちろんのこと、弊誌の声が届きうるできるだけ多くの人に、この祭の「ものすごさ」について説明したい。

※より『クラロワ』の文脈に沿った詳しい説明は下記の記事と動画を参照のこと。

事の発端はYouTuberのドズルにあり

中心にいるのは、『クラッシュ・オブ・クラン』でYouTuberデビューを果たし、『クラロワ』で確固たる地位を築いて、さらに自身の活動名と同名の会社も設立してしまったドズルという1人の男

このドズルが、『クラロワ』のトッププレイヤーが死力を尽くす試合を見たい、そして真の最強プレイヤーを決めたいと考えてしまったことから事態が動き出した。

Twitterでそういう主旨の大会を開催してみたいとツイートしたところ、日本のトッププレイヤーたちが次々に賛同。結果、世界で約170人しかいないトロフィー8000以上のプレイヤーのうちの日本人ほぼ全員となる23人が参加することになった(+1人は外国人とのこと)。

かくして「#8000最強決定戦」が本格的に始動した。

「トロフィー8000以上」のやばさを例えると、スポーツなら日本代表レベル、『鬼滅の刃』なら柱に相当する。とにかくやばい。『クラロワ』は国内だけでも何万何十万人もプレイヤーがいるが、その中の文句なしのトップ・オブ・トップが集結するのだ。この時点で相当とんでもない大会になること必然である。

祭に火をつけたのはプロゲーマーのけんつめし

だが、大会の開催がドズルから発表され、出場者が増えて「やばさ」が高まりつつある中でも、協賛者はまだ1人もいなかった。賞金はドズルのポケットマネーの3万円だけだった。

そこに火をつけたのは、『クラロワ』のプロゲーマーで、あのRed Bullと契約しているけんつめしだ。彼が協賛の意を表したことで、ほかのYouTuberやプロゲーマーも次々に手を挙げ、あれよと賞金総額が10万円を超え、20万円を超えた。

燃え盛る炎に薪をくべることはたやすい。だからこそ、けんつめしによる最初の火付けがいかに称賛に値するかは、どれだけ強調しすぎても足りない。傍観者効果と呼ばれる集団心理があるが、この8000最強決定戦には当初から誰でも協賛してお金を出すことができたのに、誰もそれをやろうとしないために誰も手を挙げなかったのだから。

その静観を打ち破ったのがけんつめしだというのは、『クラロワ』のシーンをよく知っている人なら胸を打たれるものがある。僕もそのうちの1人。だから、ここで皆さんにも共有したい。

けんつめしのヒーローとしての自覚と行動

僕が2017年に『クラロワ』をプレイし始めたとき、とても心動かされた動画に出会った。それが、けんつめしがかつてアジア大会に出場したときのドキュメンタリーだった。そのときの衝撃は以下の記事にまとめてある。

このとき、けんつめしは国内大会で圧勝したにもかかわらず、アジアの壁に阻まれ無念にも敗北した。とてつもない悔しさがその心身を切り裂いたことだろう。彼はこのままシーンを去ってもおかしくなかったが、そうはしなかった。けんつめしは研鑽を積み、のちに国内で始まった公式プロリーグに参戦した。

だが、結果が伴わず、辛い時期が長く続いた。ファンや視聴者から心ない言葉も飛び交った。所属するチーム「FAV gaming」も低迷し、世界大会の出場には遠く及ばなかった。それでもけんつめしは折れなかった。むしろ奮起した。

けんつめしは自身の動画で、しばしば「自分が『クラロワ』のシーンを引っ張っていく」という発言をしている。その過剰な自意識に反発する人もいた。だが、その実現のための行動は彼の中に「ヒーローとしての自覚」として根を張り、確実に彼を変えていった。けんつめしは2019年、ついにRed Bull Athleteになるという栄誉を得た。

その後の彼の活躍は、わざわざ語る必要もない。もちろん、彼自身に本当にヒーローとしての自覚があるのかは知らない。僕が彼の言動を見てきて、いまそう感じているだけだ。だって、けんつめしは自分がトロフィー8000に到達できなかったにもかかわらず協賛を名乗り出たのだから。

プロシーンを去ったカリスマと目覚めたヒーロー

『クラロワ』シーンにおけるカリスマを挙げるとすれば、おそらくほとんどの人がみかん坊やの名前を口にするだろう。最強と謳われた彼もまたプロゲーマーとなり、そして1月2日に引退を表明した。今後はYouTuberとしてシーンを盛り上げたいとのことだった。

日本最強プレイヤーの一角にして誰もが認めるカリスマ。彼が2018年の世界大会で起こした奇跡の一瞬に興奮しなかった『クラロワ』ファンはいない。プロをやめるからといって、彼の存在感がいくらかでも弱まるわけではない、むしろプロシーンを支える太い柱が生まれたと言っていい。

だがそれでも、僕にはみかん坊やがプロシーンを去ることの喪失感は耐えがたかった。僕は彼の引退について何もツイートしなかったし、記事にもしなかった。この穴ははたして埋まるのだろうか? そのことを考えていた。そして数日が経ち、ドズルが今回の8000最強決定戦を始動させたのだった。

けんつめしが最初に協賛に乗り出したと知ったとき、僕ははたと思い出した。そうだった、プロシーンにはヒーローがいるじゃないかと。ヒーローは傍観者ではなく、いつも人々を導いていく存在でなければならない。けんつめしの行動は、まさにヒーローのそれだった。

熱狂が内側から溢れ出て飛び火

ドズルがその人望によってトロフィー8000以上のプレイヤーを集結させたことで、『クラロワ』のシーンに祭の火種が生まれた。そこにけんつめしが協賛という火をつけた。すると、あっという間にシーンに熱狂が生じ、内側に溜まっていった。熱狂が外側へ溢れ出すのは時間の問題だった。

この構図は、なぜeスポーツにおいてコミュニティが大事なのかと連呼され豪語されるのかを端的に説明している。そう、熱狂はコミュニティの内側からしか生まれないのだ。誰か、シーンを盛り上げたいアウトサイダーが薪をくべて火をつけようとしても、シーンは絶対に燃え出さない。

そうして8000最強決定戦の熱狂は外へと溢れ出した。『クラロワ』のプレイヤーだけでなく、『Fortnite』、『荒野行動』、『クラッシュ・オブ・クラン』等々のゲームのプレイヤーやクラン、YouTuber、インフルエンサーが手を挙げた。卓球のトッププレイヤーである水谷隼、カヤックが運営するLobi Tournament、話題を呼んだeスポーツ施設のREDEE……挙げればキリがない。

いったい何なんだこれは。「eスポーツ」でゲームコミュニティ同士の繋がりが生まれているじゃないか。「なんか面白そうだから協賛する」──信じがたい光景だった。

プレイヤーに寄り添ってくれる『クラロワ』公式アカウントも煽る。

ドズルの人望の正体

紹介したドズルのツイートにあったように、僕もこの波に乗らせてもらった。『クラロワ』をプレイしているし、ドズルのファンでもあるからだ(とはいえ、ほかの人が何人も協賛していて面白くなりそうだったからというのが最も大きな理由)。

では、彼は何者なのか? 先ほどプロフィールは簡単に説明したが、今度は彼がなぜこんな熱狂を生み出せたのかを考察したい。

一言で言えば、彼に人を動かす人望があったからだ。それはSNSやYouTubeのフォロワーが大勢いるという意味でもあるし、彼がいろんな人と会い続けてきたという意味でもある。

ただ、今回は特に後者の影響こそ重要だ。実体験を紹介しよう。

僕は長らくドズルの動画を観てきたが実際に会ったことはなかったし、認識されているとも思っていなかった。ところが、昨年とある小規模のイベントにお呼ばれして参加したとき、同じく参加していたドズルに突然声をかけられたのだ。

共通の知り合いを通してだったが、noteでああだこうだ言っているだけの僕を知ってくれていただけなくわざわざあいさつをしてくれるとは、なんてすごい人なんだと素直に感動した。これが「成しうる人」のありようなのだと。

動画や生放送でたまに語られるように、ドズルはYouTuberとして、社長として、またプロリーグのキャスターとして、あるいは別の顔でさまざまなイベントや会合に出席しているそうだ。誰しもそうであるように、顔を合わせてあいさつを交わすと、SNSで知っているだけの人よりずっと強い印象を残せる。僕がその魔法にかけられてしまったように。

繋がりを増やすための足を使った地道な活動──この簡単そうだが非常にめんどくさく困難な振る舞いこそが、ドズルの人望の正体だ。だから、誰かが今回の8000最強決定戦と同じことをしようとしても簡単には真似できない。ドズルのようにコミュニティの内外を問わず人に会い続けていなければ、たとえコミュニティの内側には熱狂を作れても、その外側へと熱狂を燃え移らせるのは難しい。

そしてたぶん、不特定多数に賞金を募るクラウドファンディングでは今回の熱狂は生まれなかったかもしれない。ドズルはけっして進んで賞金を募りはしなかった。けんつめしを起点に自然と「協賛したい」という波が起きたのだ。

その波はまた、SNSでみずから言及すること/言及されること(リツイート含めた自分事化)の楽しさがあったからこそ、そして当の熱狂がドズルを中心に可視化されていたからこそ起きたのだろう。

本当の祭は1月16日(木)から

誤解なきよう、この記事を公開した時点でまだ8000最強決定戦は始まってすらいない。大会は1月16日(木)から予選が開始され、1月26日(日)の22時から決勝戦が予定されている(続報はドズルのTwitterをチェック!)。

協賛金は全額賞金に使われるとのことだが、優勝者が総取りするかどうかは検討中の模様。早とちりして「優勝者のみ」と誤解したツイートをしてしまって申し訳ないが、僕はやっぱり優勝者の総取りにしてもらいたいと強く思う。

優勝の価値はそれほど重いし、そもそも大会は一番強いプレイヤーを決めるためのものであって、栄誉のすべてはそのプレイヤーが受けるべきだからだ。観戦する立場からしても、「勝てば100万、負ければ0」の試合と例えば「勝てば70万、負ければ30万」の試合、どちらを観たいかは言うまでもないだろう。

ともかく、16日に向けて準備は進められている。ドズル始め主催関係者の作業量もまた「ものすごい」と思われるが、成功を祈りつつひたすら敬意を表したい。

大会を視聴するのも楽しいだろうし、誰が優勝するか予想するのも楽しい。大会のことをシェアしたり、わくわくを記事にしてもいい。協賛するのもありだ。よければ、皆さんなりの楽しみ方を見出して、参加してほしい。

さて、それじゃあ祭を楽しもう。

出場選手の経歴・プロフィールは↓の記事より。推しの選手を見つけるべし。
ドズルの最も近くにいるpontaがまとめた大会の面白ポイント↓
『クラロワ』の試合自体をどう楽しめばいいのかはKS連合の記事をどうぞ。


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