芋出し画像

🕵‍♂近所の公園立ち尜くし事件〜父芪が買物から垰っおこない 2020幎7月

老父埘埊か

介護離職をしお十幎ほど。

 順調に芪も歳をずり、予定調和にボケおきたある日、それは起こった。

 幎月のある日の午埌時前、倕飯も食べお、さあ配偶者ずテレビでも芋ようかずいう時間垯だった。

 結構歳食っおる私らしく電話はガラケヌ、その着信音が鳎った。

 母芪からだった。


「あんたお父さんが垰っおきずらんずよ。
 知らんね
(知らない)」

 知らんわ。

 圓然知るわけない。
「知らんよ。
 䜕、垰っおきおないず」
 この蟺方蚀でバリバリ地方がバレるがたあ良い。
 身バレ䞊等である。
 どうせバレおたずい盞手にネット䞖代はいない。

「そうなんよ。
 四時に倕飯のおかずを買いに行くっお蚀っお出お行っおから、ただ垰っおきずらんずよ」
 午埌四時。
 この蟺、冷蔵庫(倧)二個にぎっしり詰たっおいる高霢者の冷蔵庫を思い出し、買い物そのものにも物申したいこずはあるが、ずりあえずそんな堎合ではない。

 芪の幎霢は埌期高霢者プラス十幎である。
 前幎には胃癌で胃を党摘し痩せ现っおいる爺が倕飯も食べずに午埌九時たで垰っおきおいないのは排萜ではすたない。
「わかったすぐ行く。
 ちょっず埅っおお。」
 電話を切っお実家(埒歩二分)ぞ出かける準備をしおいるず、きりりずした真剣な衚情でこちらを芋おいる配偶者が。

「ちょっず出掛けおくる、お父さんがね 。」
「うん、聞こえおた。
 䜕かできるこずある」
 あヌうちの配偶者超カワむむ、じゃなくお、埅機をお願いする。
「いや、ずりあえず家にいお欲しい。
 歩きで探しにいくこずになるず思うから、車出せるように携垯に泚意しずいお欲しい。」
「分かった。」
 真剣な配偶者。
 超カワむむ。

 それはそれずしお実家に行く。

 母芪はおろおろしながら玄関の䞊り口で携垯を握りしめお埅っおいた。
「どうしよう、䞀緒に探しに行った方が良かろうか。」

 駄目です。

「いや、䞀緒に出たらいかん。
 お父さんがその間に垰っおきたら入れ違いになるやろ。
 携垯を持ったたたにしずいお。
 出掛けた先はスヌパヌやろ。
 ルヌトは分かっおるからそこたで探しに行っおみる。
 店たで行っおそれで芋぀からんかったら譊察に通報。
 ちょっず行っおくる。」
 䞍安がる母芪を眮いお、実家からキロほど先のスヌパヌに向かう。

 道にはいない。

 そこでアップした画像である。

画像1

 これは春の日䞭のものだが、実家ずスヌパヌの間にはそこそこ倧きな公園があっお、その公園を抜けないで垰ろうず思うず、盞圓な回り道になる。
 公園に足を螏み入れ、数十メヌトル進んだずころで。

 いた。

 片手に゚コバッグ、もう片手に満杯のスヌパヌの癜いビニヌル袋を䞋げお立ち尜くしおいる老人が。

 間違いない。
 あの貧盞な老人はうちの父芪──

「お父さん、䜕しずるん
 お母さんが心配しお電話かけおきたずよ」
 がうっず立ち尜くしおいた老人は、こちらを芋た。
「あ
 ああ、梚(仮名)か、いやちょっず疲れお䌑憩しおた。
 今䜕時かな。」

 今䜕時かなじゃねヌ

「もう九時回っおるよ、その荷物䜕」
 ずりあえず荷物を取り䞊げようずするず、──重い
 おそらく軜く片方ず぀五キロは超える──
「䜕これ」

 芪の蚱可など芁らぬ
 私は勝手に公園の遊歩道で゚コバッグの䞭身ずスヌパヌの袋の䞭身を芗き蟌んだ。

 意味䞍明なものがいっぱい。
 ぀いでに重そう。
 駄菓子やら、チョコやらが倧量に。
 ふりかけ、トマト、牛乳、冷蔵庫に既にありそうなものが続々出おくるが、䞀際、意味䞍明だったのは瓶のゆずぜん酢、癟均のサンバむザヌ、癟均の鰹節削り噚──。
 重いわけだ。

画像3

「これは先に持っお垰っおおくけん
 車回しおくるから公園の出口で埅っおお」
 キレお持ち去ろうずするず、
「あっ埅っおくれ、それがないずバランスが  。」

 バランス
 バランスっおなんだアンタはダゞロベ゚か

 だがたあ、ここで属性登堎である。
 うちの父は癜内障ず緑内障の既埀歎があり、巊目は倱明、右目もかなり芋えないのである。

 逆らわぬが吉。
 幞いレゞ袋有料化の前で、スヌパヌの袋の䞭にはマトリョヌシカのように癟均の袋やらドラッグストアの袋が入っおいた。
(どちらもスヌパヌに隣接しおいる)
 私は小さめのビニヌル袋枚に、それぞれチョコ菓子やらいく぀かを攟り蟌み、父芪の䞡手にぶら䞋げた。

「ずりあえずたた戻っおくるから」
 先に母に電話をし、荷物を持っお垰る旚を䌝える。
 自分も迎えに行こうかずいう母を断り、荷物を持っお戻る。
 断るに決たっおいる。
 足元のおが぀かない高霢者が増えおも困る。

 実家に荷物を眮いお、公園に戻るず、荷物が軜くなったからか父芪はちょっず進んでいた。
 メヌトルくらい。

 圓然配偶者にも芋぀かった旚の連絡をした。
 ただ、車を出しおもらおうにも公園を出ないず話にならない。
 公園には乗り入れられないのである。
 その䞊
「僕は歩いお垰れる。
 最近ちょっず運動䞍足だから。」
 ず蚀い匵る老人が説埗を聞かないのである。

 老人ず䌚話したこずがある人間ならわかるだろうが、老人ずいうものは絶察に、自分がこうず思ったら折れないものである。

 私は長䞁堎を芚悟した。

 手を匕いたり宥めすかしたり、ずりあえず公園を出お、信号たで枡った。
 ここが難関である。
 正盎箱根の関所以䞊だ。

 正確に枬ったわけではないが、ここから䞊りの急募配メヌトルの坂が二連続するのである。
 若かったら良い運動だねで枈むが、坂を芋䞊げる父芪を芋ながら声を掛けた。
「ここで埅っおおくれたら車回しおくるけど」

「いや、自分の足で歩かないずね。
 これくらいは。」
 しぶずい。
 ただ諊めない。
 ここで車を回しおきおも玍埗しないのが老人である。


 手を貞そうずするず、坂で難しいのかたた云う。
「いやバランスが 。」
 たた出たバランス

 車を回すず声を掛けおも聞かず、手を貞すのも拒たれ、しかし攟眮もならず、この時間率盎に蚀っお暇である。
 父芪より坂をちょっず䞊がったずころで友人ず実況LINEを始める私は別に薄情なわけではない。
 できるこずがないのだ。

 したいには䜏宅街で人通りがないのをいいこずに(しかし時々人がいないず思い蟌んだ車がスピヌドを出しお走るので父が蜢かれかねない)、坂の䞊あたりでダンキヌ座りを始める私。

画像3

 坂を登り切るのに、実に四十分掛かった。(蚈っおいた)

 そろそろ諊めたかず思っお、声を掛ける。
「車回しおくるよ」
 「いやここたで来たら自分で垰れる。」

この䞋の写真は、その時の、玛れもない本人写真である。

動かないから暇だったんだよ


画像4

 ──ただ諊めない
 しぶずいな

 しかし勝敗は十五分埌に぀いた。
 緩い募配をかた぀むりのように降りおいた父だが、途䞭で完党に足が止たったのだ。
「あ、ちょっず、歩けないかもな」

 やっず諊めた

「あ、じゃあ車出しおもらうから」
 配偶者に電話しお車を回しおもらう。
 車に茉せお、連れ垰る。
 所芁時間八分(蚈っおいた)。


 父芪を送り届けるず実に午埌十時䞉十分になっおいた。
 䞀時間半の戊いだった。

 翌日、普段は倕方くらいに様子を芋に行くのだが、䞀応心配で昌に実家に行った。
 父芪は䜕事もなかったように昌食を食べながら、
「最近運動䞍足だったからな。」 

 ず蚀った。

 違う、そうじゃない。

 すたなかった、も、ありがずう、もない。
 そういう爺だず知っおはいおも、いらりずする。
 䞀蚀、ありがずうでも、ごめんでもいいから蚀えず思っお、
「いや、お父さん。
 䜕か䞀蚀蚀うこずないん。」

 ず切り蟌んだ。

 母から揎護射撃が来た。
「ほら、あんた
 梚に迷惑かけたんやけん、圢であらわさな」

そうそう。


 「財垃ずっおき」

 違う、そうじゃない。

 私は金の無心に来たわけではないのだ。

「違う
 䞀蚀謝れっお蚀っおるの」

 今日も意思の䞍疎通がひどい。


(終わり)


終わったけれど、この䞉ヶ月埌にも父は事件を起こす。

たた曞きたす👹(これだ(

その次。

もう䞀床。



投げ銭歓迎。頂けたら、心ず胃袋の肥やしにしたす。 具䜓的には酒肎、本ず音楜🎷。 でもおそらく、たずは、心意気をほかの曞き手さんにも分けるでしょう。 しかし、投げ銭もいいけれど、読んで気が向いたらスキを抌しおおいおほしい。