道とレモンと花 / 詩
いままさに
きみはぼくを選ぼうとして、
(かのじょはうまれてからただのいちども き色い帽子をかぶったことがないし
ちいさな胸にじぶんのなまえを掲げたこともないし
白いスカートをよごしたこともない
晴天のもとでみず浴びをしたこともなければ
転んで膝をすりむいたこともない
なにかを苦痛におもったこともないし
たのしいことがあっても、
けしてわらったりなどしなかった
甘いレモンをたべても、びっくりしなかった)
茶碗によそわれたごはんに
たてられたはしをぶしつけにつかむとははおやは一拍おいてそっと席をたった
あなたの見据えたわたしは
あなたの見据えたわたしであって
わたしではないと思う
(ずうっとむかしに絶えた花は
かのじょののろいをみらいにうけとる)
いままさにきみはぼくを選ぼうとして
もう十余年も離れなかった床をあとにしてあるきはじめる
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