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📘 六インチの差。【サービスを超える瞬間】読書感想

頭の中にはなんとなくサービスレベルの想定があります。あなたの頭の中にある「あたりまえ」がそれです。それを下回るとイライラします。レジの待ち時間、レジ袋への入れ方、おつりの渡し方でさえイライラします。

逆に想定を超えた場合は「感動」します。ファンになることもあります。そんなサービスを超える方法論が学べるのが【リッツカールトンが大切にするサービスを超える瞬間】です。

・どうすればお客様に感動を与えられるのか
・従業員が誇りと喜びを持てる職場環境とは何か
・お客様が言葉にされない願望を先読みして満たすためのチームワークとはどういうものか

豪華な建物と完璧なサービスマニュアルがあっても、こうした企業の熱いパッションが根底に流れていなければ、ホテルが宿泊産業の域を超えることはない。企業の「心」と「魂」が従業員を通してお客様に伝わって、初めてホテルは、ひとつのブランドへと昇華されるのです。

高野登. リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間. かんき出版. 2005, 219p

「クレドカード」が有名です。クレド(信条)という言葉が流行ったと記憶しています。今では「Value(バリュー)」や行動規範と云われているものに近いと思います。余談ですがクレドと言えばジョンソン・エンド・ジョンソンの「我が信条(Our Credo)」です。一読をおすすめします。

本書はクレドを重要視しています。クレドやバリューの重要性は頭ではわかると思いますが、行動や習慣となるのは難しいことです。利益より重要視することは、とても難しいです。クレドはある程度優れた価値観をもつ企業のものだとも感じます。転職活動でも経営理念さえ形骸化している企業が多いと感じました。

しかし私が本書で特に感銘を受けたものはクレドでは無く、バーテンダーのエピソードです。

彼のスタイルはとてもユニークでフレンドリー。カクテルやロング・ドリンクを作り終えると、
「どうだい、スティーブ、あなたのために最高のマティーニを作ったぜ!」
「ジェーン、見てごらん、このアレクサンダーの出来を……」
などと言いながら、お客様の前にグラスを置きます。
そしてノーマンはそのドリンクをさらに六インチ、お客様のほうに、すうっとずらして進めながら、満面の笑みを浮かべて一言、
「エンジョイ!」
と声をかけるのです。

高野登. リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間. かんき出版. 2005, p.52~p.53

著者は「サービスとホスピタリティ、この二つのあいだには、じつは”六インチ”の差がある(p.52)」と言います。六インチ(約15cm)。

この六インチが「できる/できない」が、とてつもなく大きな差です。いくらかっこいいクレドやMVV、経営理念を作ろうが、この六インチができなければ型なしです。

この「六インチ」はやろうと思えば簡単にできるものです。しかし難しい。相手のことを考える余裕があって、相手に何か示したいと思わないとできません。
この「六インチ」を組織のいろいろなところで生み出したい。親切な社内通知、親切な受付台の高さ、親切な案内板、親切な規定……。

それはたぶん組織に波及し、いい影響を与えると感じています。

他にもさまざまなエピソードが満載です。ホテル業界以外でも参考になります。サービスを超える方法を本書で学んではいかがでしょうか。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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