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心持ちしだい

 夜の空を泳いでいると、風が首のほうにまとわりついてきて、語りかけてきた。

「どこに行くの?」

 とくに、としか答えられなくて、すなおにそう言うと、

「なーんだ」

 風は するり 首から抜けて、どこかへ行ってしまった。

 風の気持ちがよくわからなかったけれど、何となく嫌な気持ちにもなって、泳ぐのをやめる。

 逆さまの月が にっこり 笑ってきているようにも思えたけれど、何も言ってこない。

 ぼぅ、としていながら、やっぱり泳ごうと思って体を動かす。

 風には悪いけれど、とくに目的地なんてない。

 泳ぐ、泳ぎたい、ただ、それだけだから。

 それでいい。

 そんなふうに気持ちが切り替わるだけで、動ける。逆に言えば、そうならないと、その言葉がどうにもまとわりついて、何にもできなくなってしまう。

 夜の空は心地よく澄んだ空気を漂わせ、それだけで気持ちがいい。

 深呼吸、肺に新鮮な空気を送りこみ、吐き出す。

 さっきよりも晴れやかな心持ちが跳ねるようで、ただただ、無心に、自由に、当てもなく、泳いでみた。

いつも、ありがとうございます。 何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。