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【 忘れられない日 】

1995年4月28日……
この日のことは、今でも鮮明に覚えています。
29年経った今でも、記憶が薄れることはありません。
その後の私の人生に、大きな影響を与える出来事があった日なのです。

1993年の4月、私は高校に入学しました。
1学年360人が在籍する、全日制普通科の進学校でした。

その学校では部活のことを『班活』と呼びます。
中学校で吹奏楽部に所属していた私は、吹奏楽と迷った末に、合唱班に入りました。
私はそこで初めて親友と呼べる人ができました。

合唱班はニックネーム制で、学年に関係なく敬語は禁止という決まりがありました。
私のニックネームは『みちる』で、友だちは『さくら』です。
さくらとは班活が終わると、いつも一緒に帰りました。
電車通学の私を、毎日改札口で見送ってくれました。
「またね」と笑顔で手を振って別れるのが、私たちのルーティンだったのです。

4月28日の午前3時頃、私はふと目が覚めました。
横になったまま足元を見ると、制服を着ているさくらがいました。
さくらは笑顔で「バイバイ」と手を振って、スッと消えていったのです。

学校の最寄駅のバス停で、誰かの話が耳に入ってきました。
「昨日の夜、○○でバスの事故があったんだって」
続きを聞いていたところ、被害者は私と同じ高校らしいのです。
事故の起きた場所と時間から、嫌な予感がしました。

合唱班の班員は音楽室の外にある下駄箱を使っていました。
その下駄箱の前で、先輩が泣き崩れていたのです。
「やっぱりさくらだったんだ……」
頭の中が真っ白になって、しばらくそこから動けませんでした。

その日私は早退して、さくらの家に行きました。
さくらの顔を見た瞬間に涙があふれ出して、いつまでも止まりません。
「嘘であってほしい」という私の願いが、叶うことはありませんでした。

今日はさくらの命日です。
彼女がいなくなって、29年が経ちました。
今でも満面の笑顔で手を振るさくらの姿を、思い出すことがあります。
さくらは今どうしているんだろう……
さくらに会いたいよ……

4月28日は、私にとって忘れられない日。
決して忘れてはならない日です。
空を見上げて思います。
いつも見守ってくれてありがとう。
これからもよろしくね。

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