SNSの誹謗中傷は、ゴミのポイ捨てに似ている。

まえがき

この記事は、音声による別記事「語る夫婦『SNSの誹謗中傷とは何なのか』」の文字起こしです。会話形式&話し言葉が多いのはそのためです。

声と文字とでは若干ニュアンスが異なります。また、文字にする必要をあまり感じなかった部分は割愛しているので、もし会話の全体に興味を持っていただいて、かつ音声で聴くのが不快でなければ元の音源を聴いてみてください。たかだか15分程度なので、読むより聴いたほうが早いという方も多いかもしれません。

私たち夫婦についてはこちらの記事も併せてどうぞ。


1.はじめに ー前提のすり合わせー

旦那:今、SNSのハラスメントについていろいろ言われているじゃないですか。それについては、僕もWebを生業にしている者として考える部分があるので、ちょっと大げさかもしれないけど、言っておきたいなと思うんですね。
その前に2つほどお断りを入れておくと、まずは誹謗中傷とかハラスメントとか非難とかいろんな言い方をされていますけど、その言葉自体はどうでもよくて。「非難と誹謗中傷は違う」とか「誹謗はいいけど中傷はダメ」とかいう謎のコメントがちょこちょこ見受けられるけど、そういうことじゃなくて、SNS上で人を傷つけるということが問題だと思うので。そういうのをひっくるめてここではハラスメントと言うことにしますね。
あともうひとつは、木村花さんの死の原因は、はっきりと公表されていない。人の死にはいろんな要因があるから、SNSのハラスメントが直接的な原因だったとは限らない。ただ、要因のひとつであった可能性は高いと僕も思うし、それで僕はいろいろ考えるようになったわけで。

妻:今回、私たちがこの話をすることにしたきっかけは、どうしようもなく花さんの死ではあるんだけれど、ここで要因が何だという話をする気はなくて。何にせよ彼女に対して、とてもつらい言葉が投げかけられていた事実は事実だし、私たちはSNSという身近すぎるツールで簡単にそれができてしまう、ということを改めて話すべきなのかな、とは思います。


2.技術を悪用しないでほしい。

旦那:Webエンジニアとしては、今ってメッセージの送受信がものすごく簡単に行えるんですよね。それこそ昔は手旗信号であったりモールス信号であったり、遠く離れた人にどうやってメッセージを伝えるかというのは、本当に技術者たちが頑張って考えてきて、電話とかも経て、今ではSNSというかたちで、すごく気軽にメッセージを送り、受け取れるようになったんです。その技術を、悪用しないでほしいなと、端くれですけどWebエンジニアとしては感じていまして。そういうことをするために頑張って作ったんじゃないから。

妻:そんなことのために作ったんじゃねーんだぞ! と。いや、本当にそうだと思いますよ。

旦那:電話を使ってオレオレ詐欺とか、あとは自動車を使って煽り運転とかもそうだけど、そういう技術じゃないんだぞ、っていうのは技術屋としては言いたいかな、というのがね、あるんですよ。

妻:そこって、特にSNS系のニュースでは見失いがちだよね。誹謗中傷が悪いのは、そりゃあもちろんなんだけど、SNS、もっと根本的になるならばWebの使い方そのものから振り返ったほうがいい気がします。

旦那:Webに限らず、技術だよね。誰かが頑張って考えた技術を、そういうふうに使ってほしくないな、っていう。ちょっと不謹慎かもしれないけど、日本は原爆を落とされたじゃないですか。原子力爆弾ってそれの最たる例というか。核エネルギーを開発したのってすごいことなんですよ。新たなエネルギーですから。ただ、人を傷つける爆弾に使うっていうのは。だから落とされた日本という国は、技術の悪用って人一倍意識しているはずなのに、悪用をしちゃう人がいるのは残念に思いますね。


3.Webにおけるリアル感覚のギャップ

妻:立派な悪用なはずなのに、怖いのは、ことSNSでは悪用だとは思われていない節がある気がするの。「消せばいい」みたいな。いや、消してもダメでしょ。

旦那:そうだね。ちょっとこれも僕思ってるんですけど、インターネットとかWebって、どこかリアルじゃないというか、現実ではないという風潮がある気がして。

妻:ありますね。

旦那:僕はもう立派なリアルだと思っているんですよ。それこそ、このコロナの影響でテレワークとかビデオ通話が推奨されているじゃないですか。

妻:それでもちゃんとできるじゃんってことに多くの人が気づいただろうし、もっと言うと、技術を持っている人たちの中ではその認識(インターネットは立派なリアルという認識)は当たり前だと思うんだよね。で、私のような一般ユーザーたちも、ここで例に挙げていいのかはちょっと難しいというか、あんまり精通していない上で出しますけど、VTuberっているじゃないですか。VTuberがなぜ人気かって、「そのキャラクターの向こう側に人間がいることが分かるから面白いんだ」っていう話を聞いたことがあるんですよね。それってすごく、ウェブをリアルに捉えた感覚じゃない? そういうことを感じられる人が増えてきているはずなのに、どうして生身の人間のSNSは分からないんだろう? 芸能人というだけで「アイドル=偶像」みたいな、「私たちとは違う次元のものとして見ていい」みたいな風潮があるのかな。逆に言うと、VTuberは私たち一般ユーザーに近いところから出てきているから、みたいな変な区別/フィルターがあるのかなと今ふと思った。

旦那:人によっては、まだそういうのがあるのかもしれないね。


4.法で整備はムリ。限界がある。

旦那:政府も動いているらしいじゃないですか。すごく難しい問題だと思うんですよ。まず法律で整備っていうのはちょっと限界があるかな。というのも、やっぱり表現の自由、言論の自由というのがあるから、そこをブロックしてしまうのは問題じゃないですか。だから法で取り締まるのは無理だと思います。
あと、政府は「SNS上のもの」を取り締まろうと動いているみたいだけど、これって別にSNS上っていうか、さっきも言った通りオンラインかオフラインかに関わらない話だから。セクハラにパワハラ、いじめ問題もそうかな、と同列だと思うんですよ。実際、今はLINEでいじめとかもあるらしいじゃないですか。それと同格だと思うから、SNS上だけじゃないだろう、と。なのでなおさら法律でとなると難しいかなと思います。

妻:法で整備というよりかは、これは理想の話ではあるけれど、使う人のモラルの向上のほうが必要じゃないですか。

旦那:結局そうですね、モラルですね。

妻:モラルを向上させるために先に法を整備しなくてはならない、という考えなら分かるけど。

旦那:僕は、法律の上にモラルがあると思っているから、ちょっと法律でどうこうという話ではないかなと思う。


5.ポイ捨て気分で人を刺しにくるSNS

旦那:正直、SNSでハラスメントを投稿する行為が、僕個人的にはゴミのポイ捨てとか、車とかバイクで爆音で走行するとかと同じようなものかなと思ってはいます。たぶん、悪いっていう気持ちはあると思うんですよ。だって、ヤバイと思って消すんでしょ? ってことは、やましいことだと思っている人は多いと思うんですよ。だから、分かっていてやってるから、また難しいんですよね……。

妻:ポイ捨てで例えるなら、「捨てちゃダメだよ!」って言われて「あー、すいません」って、ゴミ箱に捨てる気持ちで(ツイートなり発言なりを)消してるわけだよね?

旦那:そうだね。ただ、ゴミを捨てたという事実はあるので。だから、これからそういうことを、事件化って言うと大げさだけど、逐一報道を続けていくことが大事なのかなと思いますね。

妻:結局セクハラだって、今までいろいろな事例が積み重なってだんだん社会に定着してきたわけだから、それと同じだろうし、事件化もそうだけど、私はもっと単純に「誹謗中傷はダメですよ」って呼びかけないとダメじゃないかと思う。

旦那:そうだね。日頃からメディアが、たとえば誹謗中傷とかハラスメント的な投稿を定期的に、具体的に取り上げていく。ニュースにコーナーを設けるとかして。

妻:うちはけっこう夕方はNHKニュースを見ているけど、「ストップ詐欺被害 私は騙されない」っていうコーナーがあるじゃない。

旦那:特殊詐欺の具体例を伝えるコーナーだね。それと同じように、繰り返し繰り返しやっていく。そうやって意識を高めていく。

妻:「ダメなんだな」ということを社会的にも定着させる。

旦那:そうだね。今は、セクハラとかパワハラの認識が広がって、まあ少なくなっているとは思うんですよ。でもひと昔前は、「そんなの当たり前だった」みたいな、「OKだった」とまで言う人もいるから。でもそれが今では、社会的にもNGっていうものになってきているから。

妻:そうだし、ひと昔前だってOKだったわけじゃねーだろと思うんだよね。

旦那:そうだね。本来、ハラスメントは古来からダメなんですよ。っていう(笑)。

妻:人を傷つけちゃダメですから!

旦那:これは古来から未来までずっと同じ原理だからさ。でも、それに気づかせていくっていうかさ。そういう啓蒙活動は大事だと思いますね。


あとがき

木村響子さんのツイートを見かけると、本当に胸が張り裂けそうになります。子どもに先立たれるなんて、考えるだけでもつらすぎて。響子さんに声をかけたくても、どんな言葉をかければいいのか、私はリプライできませんでしたが、たくさんのリプライが付いていて、そこには彼女を傷つけるような内容もあります。信じたくない事実です。

でも、果敢に声をかける人には、一定の敬意もあります。考えに考え抜いたリプライが、相手を元気づけることだってあるから。実際、自分も元気をもらったことがあります。SNSはそれができる、すごいツールなはずなんです。

何度か試合を観戦する機会がありました。木村花さんのご冥福をお祈り申し上げます。

妻です! https://twitter.com/nase1204
旦那です。 https://smilemonster.site/


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