見出し画像

感情と服薬

今回精神科領域の服薬に触れる内容となっています。
自分の考えを書いていますが、服薬を否定するつもりは毛頭ありません。
自分の服薬に対する意見は「きちんと指示を守ろう」の一言に尽きます。
医療や医師の意見、服薬は重要です。指示は守ろう。感じていることはきちんと伝えて相談しようね。

現在支援している方の中に、職場で暴言を吐いてしまう方がいらっしゃいます。
企業の方から状況を聞くと、やんわりとした注意を受けた時、衝動的に出てしまったようだとのことでした。
これは1回のことではなく、ほぼ毎月、大小の暴言がみられるとのこと。
「うるさい」とか、「お前に言われたくない」とか、「馬鹿じゃねえの」とか、そういう類の言葉。
普段のその方からは想像しにくい言葉であるために、周りは怒りよりも驚きが勝るようで、言い合いになることはこれまでなかったのだとか。
だとしても個人的にはそういった言葉が出ても雇い続けていることに驚いているのだけれども。

そういった暴言がみられる度に会社からは個別の時間を設けて注意をして、本人も反省を述べ、直接相手に謝るなどしてきましたが、この1年で改善がみられず、今後続くとなると、問題が生じると会社は考えました。

そして今回会社から出された提案として、医療にかかることが挙げられました。

うちからこれまでの経過と方針を家族にも伝え、検討してもらいたいと依頼を受けたのが最近のことです。

こういった一見衝動的な行動に対して医療にかかることは必ずしもダメ、というわけではないと考えます。
一方で、思い出されるある言葉があります。

前述の方とはまた違う方で、随分前に関わった方の言葉です。
その方も衝動性や強い不安から、それらを軽減する薬を服用していました。
ある時ふと、その方は「自分の本当の感情がわからなくなる」とこぼされていました。

曰く、薬を飲むことで気持ちが落ち着くけれど、そこで感じているものは果たして自分の本当の気持ちなのだろうかと感じることがあったようです。薬で作られた感情なのではないかなと。
なるほどな、と感じた次第で。

薬を飲むことで気分が落ち着く。それはいいことなのでしょうけれど、やはりコントロールされた感情なのかもしれません。それに違和感を持つことはおかしいことではないと思う。
けれど、恐らく過剰に分泌されている脳内物質があるとかして過敏になっている状態を軽減するのが薬の役割なので、本来感じる度合いの感情を感じるようになっているのだと言われれば、それもまたそうなのだろうか(そんなにうまく薬が局所的に働くかも謎ですが)。

やっぱり感情に紐づくのが人格だとも思うし、それが薬という外部からの刺激で変わるというのは気持ちのいいものではないのかもしれない。

そういった薬を飲んだことがないのでよくわからない。
ある意味アルコールもそんなもののひとつか?私は幾分陽気になります。

感情から行動に繋がる。その行動が不適切だと言われる。そして自分も自覚があるけれど止められず、困っている。
そうであれば、行動の根っこにある感情が問題で、それを解決するひとつの手段として薬がある。

わかるのだけど、可能な限り安易に薬、とならないといいなとも思う。
現実的には自分も服薬は手段のひとつだと提示するし、薬がないとどうしようもない状態もある。何より本人が希望することもある。

今回も企業からの依頼を受けて、経過も踏まえて私は納得をして、本人と家族に伝えている。後はその提案から本人と家族が選択すること。無責任な物言いだけれども。

今回のケースに関して言えば、この衝動性は障害から来る影響もあるだろうし、誤学習もあるかもしれない。成育歴からの影響もあるかもしれない。
周囲の働きかけを変えることも企業側はおこなってくれることになっているけれど、それよりも本人の衝動性の影響が強いように思うなぁ。

企業側、もしくは本人側が雇用契約中の改善が辛いとなったなら、訓練もひとつだろうけれど、その時はきっちり駄目なものは駄目、と言ってくれて、振り返ってくれる機関に繋がないといけない(あるかな)。
移行の2年間で改善するだろうか。もっと長い目も必要かもしれない。加齢によって落ち着くこともあるかもしれないし。

あーでもやっぱり、衝動性って難しいものだよなぁ。

企業側は本人のいいところもみてくれている。指導員に障害特性にかかる研修をおこなってくれるとも言ってくれているし、何より今回の提案は雇用を続けるための前向きなもの。

何とか雇用が続きながら、状況が改善していくといいと思う。
服薬に関して考えることはあるけれど、それは私個人のもの。
押し付けることはせず、選べるものを提示し、それに対する本人や家族の考えをお聞きし、企業の希望と秤にかけてもらい、本人と家族が納得、もしくは譲歩できる点を探していくことになると思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?