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精神保健福祉士を目指すあなたに②~精神保健福祉士の職域~

今回は精神保健福祉士の職域について、いくつか紹介したいと思います。この資格の職域は広く、さらに広がっていっています。

その中でも代表的なもの、私が仕事で関わることのあった方がどういった分野でどんな仕事をしているのかをまとめてみます。


最初に

まず最初にそもそも「精神保健福祉士」という仕事はありません。これを理解するまでに私はかなり時間がかかりました。これは資格の名前であって仕事の名前ではないのです。医者や看護師は名前と仕事が直結しますよね。それは”業務独占”だからです。精神保健福祉士は”名称独占”の資格であって、様々な仕事をしているなかで、「精神保健福祉士」を名乗れるのです。

医者は診療科は違えどやっていることは病気の治療行為です。精神保健福祉士は同じ資格を名乗っていても全然違う仕事をしています。

代表的なものとしては

①病院などの医療現場

②福祉サービス事業

③行政サービス事業

④一般企業

といったところでしょうか。

冒頭でも書いた通り、これ以外の場所でも働かれている方はおられますが、今回は主にこの4つの領域の精神保健福祉士について書いていきます。


医療現場

大きく分けて病棟、医療連携室とデイケア施設の勤務に分けられるでしょうか。

前者はあまり関わったことがないのでイメージが多いですが、入院初期の本人のそれまでの生活の聞き取りや病識(自分は病気であるという認識)を持つための講座、家族向けの家族教室、退院後の生活環境の調整が主な業務かと思われます。後者のデイケアというのは退院後に利用するサービスです。生活リズムを身に付けたり、引き続き病気との付き合い方を整理したりすることを目的にレクリエーションや講座などのプログラムに取り組みます。精神保健福祉士はそのプログラムの内容を考え、進行するのが主な仕事です。ひとりひとりの生活上の目標に沿って必要な情報提供をおこなったり、場合によっては他機関の情報提供をおこない、面談に同行したりします。

医療機関では医師を中心に、看護師、臨床心理士(公認心理士)、作業療法士などの違う視点を持った専門職と意見交換しながら支援にあたります。やっぱり医師の意見が大きいのではないかと、関わっている精神保健福祉士をみていて感じます。また、福祉サービスについて以外と疎い人がいるようにも感じるのが正直なところです。福祉もそうですが、医療は医療で閉じた環境であることが多いのかもしれません。能動的に情報収集しないと他機関のことを知ることは難しいのかも。

福祉サービス事業

ここが一番裾野が広いように思います。数が多いのが就労系福祉サービスでしょうか。勉強されている方は移行支援、A型、B型などと言えば伝わるでしょう。つまり、毎日住まいから通ってくる作業所ですね。

移行支援事業所は本人が一般企業で就職できるように訓練する場です。本人の得意なこと、不得意なことを整理します。苦手なことは訓練して改善するか、もしくは企業側に配慮してもらいたい部分を整理します。ただ訓練や講座を進行するのではなく、本人の様子を観察したり、聞き取ったりしてそれらを整理し、支援者自身も本人理解を進めていきます。

A型事業所は働く機会を提供し、最低賃金を保障する事業です。支援者は利用者が作業しやすいように作業内容や手順を工夫して伝えたり、本人の作業能力の向上を促したりします。時には企業が運営する工場の一角へ利用者を連れていき作業する施設外就労を主導することもあるようです。

B型事業所は最低賃金以下の収入(工賃)を得ることのできる作業を提供する事業です。日中活動の場の提供という視点の方が大きいかもしれません(最近は高工賃を目指す事業所もあるので一概ではない)。相対的に障害が重い方(といっても介護をあまり必要としない人が多いでしょうか)が利用することが多いです。支援者はA型事業所と同様に作業しやすい環境や工夫を提供します。

次に生活の場。グループホームが挙がります。

グループホームは障害を持つ複数の方が共同生活を送る場です。一軒家であったり、アパートであったり、形は様々です。支援者は朝の送り出し(利用者は日中は上記の就労系サービスや職場にいきます)と、午後の帰宅以降に関わります。スムーズに出発できるようにリズム作りや声かけをする、利用者同士の折り合いをつける、食事や入浴などの必要な介護や手伝いをする、安全確認をするなどしています。土日のクラブ活動の運営や通院同行をおこなうこともあるようです。

次、相談支援に関わる事業。これは毎日通ってくるわけではなく、必要な時や制度で決められた時期に関わる事業になります。

相談支援事業所(ここでは基本相談や計画相談などをまとめて)は福祉サービスに繋がる入口。何らかの障害であることがわかった後に関わることが多いでしょうか。相談内容を定めずに、様々な相談が持ちかけられます。支援者は本人や家族のニーズ(望んでいること、希望すること)を整理し、福祉サービスやその他のサービス、または支援者自身の経験からくる助言をおこないます。時には本人が何に困っているのか整理しきれないまま相談の場に来ることもあります。解決できないようなこともあるので、聞くこと自体が目的になることもあります。ニーズを整理し、それを所定の書式に書き出し、福祉サービスが利用できるように調整することもしますし、福祉サービスの利用状況の確認をおこないます。

他には就労相談や自立相談(いわゆる困窮者向けの相談)やひきこもり相談にも精神保健福祉士がいるでしょうか。ここではそれぞれの特定のニーズに対して助言やサービス調整をおこないます。原則として相談員は直接的な支援ではなく助言をおこないますが、実際には自宅訪問や通院同行など、対象者と一緒に他機関へ出向くことも多いです。

これらは面談という限られた時間の中で支援に必要なことを引き出し、その後の道筋をつける必要があります。また支援に必要なことを引き出すことだけに集中しすぎず、本人の話したいことに耳を傾ける必要もあります(一番重要なのは信頼関係の構築です)。そして繋いだ先のサービスと円滑なチームを形成できるように、相手の言い分とこちらの言い分の折り合いをつけるバランス感覚が重要だと思います。

行政サービス事業

市役所や保健所にも精神保健福祉士はいます。多くは求人の時点で精神保健福祉士資格者を募集しているので、専門職として雇用されるでしょうか。精神保健福祉士枠というやつです。

福祉課に配属されて窓口につく場合には、相談支援事業に近い役割になるかもしれません。ただ継続して関わるというよりは、障害者手帳やサービス申請の時の断続的な関わりになることが多いのではないでしょうか。他にはサービス申請を受けた後の事務処理とかになるでしょうか。内側まで見たことはないですが、うちの相談員によく計画の内容確認などで電話がかかってきているイメージ。

保健所に行くと地域にいる精神障害者の方への訪問などをおこないます。他のサービスにつながっていない、本人よりも家族や近所の人が困っているケース、知人は医療にもつながっていない方の自宅へ訪問したこともあると言っていました。結構ハードなのかな、と思っています(直接の関わりはあまりないのです)。

一般企業

一般企業にも精神保健福祉士がいるようになってきました。これだけメンタルヘルスが言われていますからね。総務課の中で社内のメンタルヘルスを担っているイメージです。特にメンタルで休職した方や障害を持った従業員の相談先として、他には外部の機関との窓口になっていることが多い印象です。

特例子会社のような障害者を多く雇っているところでは、精神保健福祉士を持っている人が在籍型のジョブコーチとして支援しているところもあります。本人が所属する部署の所属長との間に入ったり、作業手順の確認を一緒にしたりされています。


まとめ

私が関わった、もしくは知人の話から精神保健福祉士の職域をざっとまとめてみました。個別に語りたい部分も多数です。

とにかく、精神保健福祉士の領域は広い。所属する事業の目的に沿いつつ、本人の希望する生活に近づけるような助言や情報提供をおこなう業務が精神保健福祉士の仕事です。助言というと大袈裟ですが。

資格取得を考えている方はぜひ、資格を取って何がしたいか、どんな人、何に困っている人と関わりたいか、支援したいかが明らかになると、就職先の希望も絞られてくるのではないでしょうか。

私の場合は最初に就職して今でも続いている就労相談がしっくりきているので恵まれていますね。みなさんもぜひ、これだと思える職場に出会えるといいですね。そんな仲間が増えることを期待しています(先輩風)。

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