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現代川柳(2023.01〜12)

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2023年1月から12月までに作った現代川柳をここにまとめてます
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記事一覧

川柳大晦日108句チャレンジ

川柳大晦日108句チャレンジ

爆ぜてゆく手前向こうの海月から

一舟の洗剤屋だけ川下る

垣根からスノーバウンドの香りよ

首吊りのセンターコードが足りない

木挽町のSSサイズの哀惜

饅頭に死者と怒れる孔雀に

銃弾の対話をずらすコモンセンス

原罪の吠える犬こそ捻り込め

北壁の鎖鎌なら光らない

落とす影と朝御飯にインキュバス

見知らぬ顔のビッグ・フィッシュと

ピアノから地球儀出づる傷を抱く

飴かじり膨らんでゆく

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川柳20句『信号の鈍角に』

川柳20句『信号の鈍角に』

湯気上げるスフィンクスだけ超えてゆけ

どうしても盃だけに入れない

みだらな鳥ならば反重力

金庫から安達が原に舞い降りろ

勝率を削り取ってもまだ寒い

電子レンジのプライベートは

半神になるため眼鏡を作った

目覚めたら黒い蜘蛛から喰べなさい

再現度の高い夜話に楯の会

事典から飛び出す蛙は剥きやすい

車窓からストイコビッチのある風土

ジーコからタイムセールを照らし出す

筆洗い笠井

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川柳連作8句『楽園』

川柳連作8句『楽園』

楽園のイヤリングから逃げ出せよ

カレンダーから楽園のサボタージュ

楽園に駆け出す驢馬の脚を知れ

選択できる楽園に立ち向かう

知恵の輪に触れた時から楽園よ

総集編に楽園を上書きす

踵から楽園のみを消してゆけ

主人公ほど楽園を振りかざす

川柳連作7句『こまつさん』

川柳連作7句『こまつさん』

こまつながひとみごくうなこまつさん

まないたでみぎうでおろすこまつさん

つみきならこまつさんしかくずせない

さめはだにぬくもりもとむこまつさん

きのうからこまつさんだけくしゃみする

ようかんのなかにはこまつさんかしら

うどんまでねじにみたてるこまつさん

川柳20句『木の枝にまた』

川柳20句『木の枝にまた』

駒鳥のナチ体制下のうたうたい

相棒に鰐を選んで奔走す

屋敷には丸呑みされた田舎だけ

心霊と造語を合わせ定番化

提灯を託す先には理屈のみ

住職と儀式行ない消す基盤

仏教を増殖しても窪んでる

自生したパワーワードを配りゆく

空想のお城に生きる世界たち

過去の出来事を狙撃します

隧道は南北朝の味がした

明け方に味醂垂らした団精二

鮎川哲也から鳴る音を

吉田戦車と同じ口蓋

自習

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川柳20句『汽車はゆく』

川柳20句『汽車はゆく』

湿原で人型の家系さかのぼる

不良からオカルト知った盆踊り

養子との要素を避けたハナムグリ

憑きものと眠り続けた金庫番

生簀まで魔女狩り巡る観光地

クレージーキャッツの審議はループする

遊郭のコントローラーを置いてけ

賽を投げヘラクレスとの鬼ごっこ

目を隠し区別をつける全体主義

理由から身代金を問い詰める

導線が語り始める遊園地

細長い人形探す不老不死

お絵描きで足場を崩す山

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川柳20句『模倣なら』

川柳20句『模倣なら』

白線が世界線へと変わる頃

落ち目から自己増殖を拒絶した

位相する破滅追いかけ稼ぎ出す

同性の圧力鍋を繋ぎ合う

それが欠けたら翼はもげる

時代からプロパンガスは兜脱ぐ

文通を伝言ゲームに置換され

闇市の消費期限を散りばめる

接触し解剖される大ベテラン

特徴と二つ名だけで巡る旅

家禄なら新幹線に聞いてくれ

カエサルの断片摘み織り込んだ

映画史のヒヨコを見つけ透かし見る

プロパ

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川柳20句『電球外し』

川柳20句『電球外し』

美しき総合的な鱗たち

免れた川の流れを弄ぶ

歪みつつフォーカスされた海援隊

祭り上げ懸賞金の絵を描く

丹念に絵の具を拭い殺される

生物の顛末さえも穴が空く

細胞を神聖視する左前

金色の爪を揃えたモザイク画

エンジンと血液だけが知っていた

真正のトカゲを掴む眼は四つ

ムササビのソリティアだから見逃した

ぼかしつつヒッチコックの聖痕を

トランプの判型ならば仕方ない

お隣さん坩

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川柳20句『鼻行類から』

川柳20句『鼻行類から』

転がって明度を下げたハンモック

シームレスまで下がってください

色褪せた指先鳴った四年前

源泉で不老不死へとなる権利

鉱物を蒐集できず建立す

企業から舞妓と芸妓の腕相撲

双生児の国家元首のいた島

ゲリラ戦をパズル化したアーキペラゴ

胞子飛び天使の恥部に逃げ込んだ

鉄槌を販売せよとテレビ通

伯母を踏み空中戦を抜いていく

階段の隅を作ったラ・フランス

穏健なるガイドブックを透視

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川柳20句『線にサカナ』

川柳20句『線にサカナ』

人のいない地下トンネルで猪鹿蝶

さり気なく抱え込み式を受け取る

球場に所狭しと心太

情熱の試験管から暗黒譜

不確かな香りを嗅いでエスケープ

グラスから全細胞の呪い方

招かれざる客の足首燕尾服

人外の百貨店まで逃げ回る

号令を見つめる先にいる狸

眼球譚の卒塔婆を折った涅槃像

昨日からトッポギだけが生えてくる

鉄塔で納豆ほぐし立ち上がる

棟梁を打ちつけてもう春が来る

材木座の

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川柳20句『カップから河』

川柳20句『カップから河』

動詞じゃなくてあなたがいいの

パーソナルデータを擦り続けます

バラバラの地図を眺めてパーキング

ドラムロールが頬に刺さった

黄金の共犯関係を埋める

偽物のオーロラを作る救世主

拳しか国家元首は出てこない

フィルターまで浮かんで消える私小説

戦前の都合の悪い読書論

ラーメンを啜りきれない占い師

ブレーキの真髄探す精神史

乱数を掬って笑う大動脈

ヒーローが奈落の底に逃亡す

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川柳20句『描いた魔法』

川柳20句『描いた魔法』

幸福論をサイコロ状に

教室に人だったものを干してる

平穏な待ち時間から消えてゆく

宦官のフェスティバルから黒くなる

ピカチュウの裂けた顔からこんにちは

そばかすを作って撒いたシン・ゴジラ

脱獄を計画すれば踊り出す

汎用型翻訳者で目を回す

白黒の商店街を切り取った

アナーキー到着までお待ちください

束見本の探究者を待っていろ

ヘリウムのハラスメントで合格す

近未来型入浴はタッ

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川柳20句『ワークに犬笛』

川柳20句『ワークに犬笛』

昭和から水平移動させた指

暗闇に三枚の爪が浮き上がる

光源を盗み損ねて焦げたパン

湯たんぽの中に詰まった聖飢魔II

カポーンカポーン最終戦争に浮かぶ柚子

のっけてね海辺の村にチョコレート

食べかけのパフェで書かれた月の手記

色を塗る列外へ列外へ列外へ

中空のドアから人も出てきます

殻だけのボトルを除き宇宙食む

抵抗に背中を預け眠り込む

知られざる傑作の音は遠ざかる

側溝にま

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川柳連作7句『Influenza』

川柳連作7句『Influenza』

魂を鼻グリグリで引きずり出す

剣山の上で行なう袈裟固め

「痛みは生きてる証拠」←往復ビンタ

瞬きの回数はまだ解かれない

あまいみずでしたみずいとてもあま

句読点が消えて気付く二日間

座布団だってひき肉です!