川柳20句『信号の鈍角に』

湯気上げるスフィンクスだけ超えてゆけ

どうしても盃だけに入れない

みだらな鳥ならば反重力

金庫から安達が原に舞い降りろ

勝率を削り取ってもまだ寒い

電子レンジのプライベートは

半神になるため眼鏡を作った

目覚めたら黒い蜘蛛から喰べなさい

再現度の高い夜話に楯の会

事典から飛び出す蛙は剥きやすい

車窓からストイコビッチのある風土

ジーコからタイムセールを照らし出す

筆洗い笠井潔を変えた夏

地球儀もつかこうへいに到達す

ギザギザな島田荘司を庭に干す

死に山に錯視を刺した森博嗣

氷柱まで阿部和重と束になる

餅をつくガルシア＝マルケスを信じた

五のマスを乙一だけは夢想する

信号の鈍角をみる芦田愛菜