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【読書レビュー】古畑任三郎1

黒い背景に、黒いスーツで立つあの男。そして流れるあの音楽。

【基本情報】

著者 三谷幸喜氏
ジャンル ミステリー
発行日 1996年3月30日
1990年代に放映していたドラマ「古畑任三郎」から5話選んで、短編集として発行されたもの。

【魅力①古畑任三郎】

過去にドラマを見ていたので、古畑任三郎の独特なしゃべり方が、頭の中で再現された。古畑任三郎が犯人のボロを探しながら少しずつ追い詰めていく。田村正和演じるあの雰囲気は、わすれられない。知らない人は、youtubeにて検索してみてほしい。何作かは見れそうだ。

このシリーズの魅力といえば、あの人があげられる。今泉慎太郎だ。本編では、名前が出てくることはなく、一か所だけ「頭の禿げあがった、若いのか年寄りなのかわからない刑事」という描写がある。まぎれもなく今泉であろう。著者あとがきにて小説では必要性がなくなってしまったとの記述あり。残念。youtubeにて今泉慎太郎が主人公の動画もあるのでよかったら。

【魅力②倒叙ミステリー】

このシリーズは全編倒叙ミステリー(犯人の立場で物語が進む)。スタートの時点で殺人が起こり、犯人もわかっている状態。犯人がいかに古畑任三郎に追い詰められていくのかを楽しむ話である。ミステリー小説でもそういったパターンのものがある。
例)秋吉理香子著 聖母 芦沢央著 悪いものが来ませんように 殊能将之著 ハサミ男 など
読者としては犯人の気持ちに入り込み、捕まりそうになるとドキドキしてしまう。普通のミステリーとは違った印象。

【魅力③ストーリー】

水戸黄門ばりに構成パターンが決まっている。
パターンは下の通り。
パターンが決まっていたら面白くないような気がする人がいるかもしれないが、設定や状況が様々なので、見ていて飽きない。
ドラマでも1話完結で見やすい。

◆パターン◆
犯人が必死に偽装工作するシーン 
 (犯人は完璧だと思っている)
⇒ 古畑が何気なく登場するシーン
 (ここで古畑は犯人だと見抜いていることが多い) 
⇒ 犯人が古畑に対して事情を答えるシーン
⇒ 古畑が犯人を追い詰めるシーン
 (犯人がどこでボロを出したかがここでわかる)
⇒ 犯人が観念して、捕まる

特に一話目の「おめでとう、アリ先生」のボロが印象的。まさかあんなところに……。

【まとめ】

1990年代~2000年代に連続ドラマ化していたシリーズ。この小説は、このドラマの元ネタではなく、ドラマ後にタイトルを選んで小説化したもの。
内容はドラマと同じ。
ファンはドラマを見ているはずでこの小説は誰が買うのだろうと素朴な疑問。きっとファンはドラマも見て小説も買ったのだろう。
私もこのシリーズにはまって、TUTAYAでビデオかDVDを借りまくった記憶がある。
ミステリーファンには、お薦め。残念ながら本書は絶版なので、youtubeやその他動画サイトなどでドラマを見てほしい。
そして、この記事を古畑任三郎のドラマを見ながら書いている。