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葛餅を作ってみた

次女の小学校4年生の夏休みの自由研究のタイトルは、軽い気持ちで「葛餅を作ろう」

それで、葛とは?
いわゆる雑草で、いたるところにはびこり、つるが絡まり、藤と絡まろうものなら「葛藤」といわれるもの。

それで、葛餅はどう作るのか?
葛の根部分に含まれるデンプン質。これを取り出して加熱し餅にする、…といかにも簡単に本には書いてある。

葛の根?
葉、つるはよく見るが、根は見たことがない。
本当は不法侵入になるのかも知れないけれど、高速道路の高架の下へ。次女と一緒にフェンスを乗り越えた。
つるを辿って根元を探す。
根本を持って引っ張れば根が抜けてくるのでは、と思いきや全く抜ける様子がない。
仕方なく、持ってきた大型スコップで周りを掘るが、土も固く、根が現れない。
高速道路の下で穴を掘っている、という光景を客観的に思い浮かべると、なかなか怪しい。

少しずつ土を取り除いていくと、根のイメージとは裏腹の太い山芋様の「木」が出現。
両手で抱えるほどの大きなサイズ。
5kgはある。

苦労して掘り上げ、家に持ち帰った。さて、ここからどうするのか?

まさしく「木」なので硬く、とっつき悪く、最初から手強い感じ。
包丁で切ってみたが、全く刃が立たない。
ノコギリを持ち出して切断。
材木を切っているようだ。
いくつかに切り分ける。デンプン質を取り出すには、細かくバラバラにしなくては。
大根を下ろすおろし器を使ってみる。
根の表面が少しだけ削れるだけで大根おろしのようにはならない。
では、とスピードカッターを使ってみる。
ある程度ノコギリで細かくして投入、スイッチ・オン!
ゴガーーーッ!と悲鳴に近い音を立てて刃が回りだしたとたん、ドタンバタンとスピードカッターがのたうち回った。
葛の根を切り刻むなど、スピードカッターには史上初体験で、あわててスイッチを切ったが、そのまま続けていたら、スピードカッターが絶命していたかもしれない。

今度は庭に出て、まな板の上でふきんに包んだ葛の根をカナヅチで叩くことにした。
やはり「木」の硬さ。
ゴンゴン叩いてはそれを水の中にさらす。
水は茶色くなり、デンプンなどどこにあるのか?
ふきんは数枚穴があいて使い物にならなくなった。

全身全霊で葛の根を叩き続けた。
もはや無の境地。
どう見ても食べ物を作っているようには見えない。
さらし水は茶色が濃くなっていくばかりであの白い葛粉がとれるのかしらん?
デンプンは比重が重いので、沈殿する。
しばらく待ってから、茶色い上澄みを少し捨ててみた。
あ!底に白いものがある!
上澄みを捨てる。水を加える。
待つ。
それを何度か繰り返す。
茶色い水が次第に透明になっていき、ほぼ水とデンプンのような白い粉だけになった。
小さなお茶碗の底、ティスプーン2杯分くらいか。

デンプンかどうかを確かめるためにヨウ素を垂らすと紫色になる実験を思い出した。
ヨウ素?
もしかして、うがい薬がヨウ素かも…。
貴重な粉を少しだけ掬って、子どもと固唾を飲みながらうがい薬を垂らしてみる。
おー!紫色になった!

では、葛餅を作ってみよう。
粉に水を混ぜながら鍋で加熱。
量が少なすぎて緊張する。
ちょっとだけ砂糖を加える。
火加減が強すぎると台無しになるので、トロ火でゆっくりかき回す。
初め白っぽかった粉が、少しずつ透明に変わっていく。
粘りが出てくる。
完全に透明になったところで火を止めた。

できあがったのは、小さな小さな透明な葛餅。

まずは、いっしょにがんばった次女から試食。
彼女も餅のあまりの少なさに遠慮してちょっぴりだけスプーンで取って口に入れた。
「お!美味しい!!」
わたしも食べてみる。
「今まで食べた葛餅の中で、一番美味しい!」
葛100%!根の泥臭さなどなく、優しく新鮮な葛の風味が美味。

家族5人が試食。全員、おいしいの評価。
それにしても、それにしても、効率の悪さといったらない。
あれだけの労力をかけても、スプーン2杯では…。
もう…笑うしかない。

次女とこの工程をビー紙にまとめた。

もう2度と根っこからの葛粉とりはしたくないけれど、あの葛餅はまた食べたいなぁ!




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