耐える 明ける
某月某日
仕事で頑張りどきが続いている。新しく始まった案件を軌道に乗せる期間で、予定外のタスクに対応することも多い。
緊張が抜けない。身体も強ばっている。なんとも嫌な感じがした。頭もこころも疲れもリセットしたくて、銭湯に向かう。
からだ一つで、タオルだけもって浴場へのドアを開ける瞬間が好きだ。湯気で世界がぼんやりとしか見えないのも、ここでは全員が身一つなのも、日常であって非日常。熱い湯に浸かっていると、さっきまでの「嫌な感じ」はすっと消える。頭に乗せたタオルで顔に浮かぶ汗を拭いた。
明日にはまた色々あるのかもしれないけど、銭湯帰りのこの一瞬だけでも穏やかで楽観的にいられたのなら、今日もよい一日だったんじゃないかなと思える。
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某月某日
久しぶりに同郷の友人と電話した。気まぐれにかけた電話だったけど通じて、1時間半くらい話していた。
「そろそろ連絡しようかと思っていたんだよー」「いつも電話するときは久しぶりなんだけどさー、そんな感じしないんだよね、不思議だね」
そんな風に言っていた。自然とことばを交わしあえるのがとても嬉しい。
本当に何気ない話をして、またねって言ってくれる彼女と話すたび、彼女のことが好きになる。
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某月某日
窓を開けたら空気が気持ちよかった。昨日と変わらず暑いし、これでもかというほど晴れているのだけど「涼しい」瞬間が確実に紛れている。肌に風が触れるたび、こころが動き出す。
休日にしては早い時間に散歩してみる。時折だけど「涼しさ」はやっぱりあって、足どりも軽やかになっていく。木陰で一段と大きく聞こえるセミの声も、雰囲気を盛り上げてくれているようだ。
梅雨が明けた。新しい季節がやってくる。その瞬間に立ち合えたようだ。
20230723 Written by NARUKURU
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