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柿食えど暑さはひかぬ長月か

夕食の後で奥さんが柿をむきはじめた。
暑さはひかないがもう柿の季節なのである。
年中見かけるものではない。秋の味覚である。
しかしながらクーラーを効かせた部屋で柿食うというのも、何だか妙な塩梅だ。
そのうちかき氷に柿が乗るようになったりして、などと考えてしまう。

こどもの頃は柿は苦手な食べ物だった。
固いのか柔らかいのかわからない食感と独特な甘味がどうもいけなかったのだ。
特に食感である。リンゴやナシのようにシャキッとしてほしい。一部ヌルッがあるのがいかん。
そんな風に思っていたので、それこそ30代くらいまであまり食べることがなかった。
今ではその食感も柿の個性として楽しめるようになってはいる。

スーパーでも柿を見かけるようになった

渋柿をかじったことはそれこそ渋い思い出である。
家の畑になった柿をそうとは知らずに調子に乗ってかじったところ、口一杯に渋みが広がった。
後で両親に聞いてみると、それは渋柿の品種で干し柿にするものらしかった。
そういえば冬になるとよく軒先に干し柿が吊るしてあったが、あれはあの柿を使っていたのか。

桐生の実家では柿はむいて食べるとだけの果物だったが、東京生まれの奥さんは柿を色々な料理に使う。
サラダはもとより春菊と白あえにしたりして、なかなか美味しい。
この年齢になって柿という食べ物の奥深さを知った、というところか。

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