(17)「形」と「勢」の関係 戦力充実の「静」と「動」-竹簡孫子 形篇第四
形篇第四からようやく実際に軍事力を衝突させる戦い方に入っていきます。著者の孫武という軍事思想家は、周到な準備をどこまでも積み上げていきます。
計篇では、彼我の戦力を調査分析し、日々の努力で優位性を築こうとします。作戦篇では、戦場での軍隊の戦力だけでなく、それを支える国家経済や国民家計の裏付けを大切にします。謀攻篇では、戦わずに勝つ謀略を仕掛けます。
そして形篇では、自軍の戦力を集め維持することを述べます。
そこでまず「孫子」における「形」とは何か、形勢逆転という言葉があるように対となる「勢」の存在と関連性を述べたいと思います。
まず最初にはっきりさせなければならないことは、「形」を軍隊の形、陣形突を解釈すると「孫子」の兵法理論も、「勢」との関連性もわからなくなります。
「形」とは、戦力が充実した姿、様子です。
もう少し詳細に説明をすると、動きを止め静かに身構えて力を蓄える姿です。反対に「勢」は、動き出して発動するエネルギーです。
「形」は「陰」であり「静」です。「勢」は「陽」であり「動」です。「形」と「勢」はエネルギーの止まった姿と動き出した姿の関係です。
「陰陽」では、「静」は「陰」、「動」は「陽」です。
物体は「陰」であり、非物体は「陽」であります。
このように孫子の中で述べられる様々な概念は、「陰陽」の原理と合致する訳です。
ですから「形」と「勢」の関係は、「静」と「動」の関係です。
「形」は、陣形、形ではないということを前提に形篇第四を読み進めていきましょう。