マガジンのカバー画像

新解釈 竹簡孫子の兵法

62
世界最古の兵法書「孫子の兵法」。その孫子の兵法の中でも最も古い「竹簡孫子」を研究しているマガジンです。孫子の兵法理論である「正奇」や「虚実」「形勢」などの追概念は「陰陽理論」が適…
運営しているクリエイター

2022年1月の記事一覧

目次/はじめに(本書の立ち位置)

目次/はじめに(本書の立ち位置)

※新しい記事を追加するごとに付け足します。

【書き下し文一覧】
計篇 第一 (現代訳/書き下し文)
作戦篇 第二 (現代訳/書き下し文)
謀攻篇 第三(現代訳/書き下し文)
形篇 第四(現代訳/書き下し文)
勢篇 第五(現代訳/書き下し文)
虚実 第六(現代訳/書き下し文)
軍争篇 第七(現代訳/書き下し文)
九変篇 第八(現代訳/書き下し文)
行軍篇 第九(現代訳/書き下し文)
地形篇 第十

もっとみる
火攻篇 第十三(新解釈/竹簡孫子)

火攻篇 第十三(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。およそ火を使った攻撃には次の五種類が存在すると。「一つ目は、人を焼く「火人」、二つ目は、物資を焼く「火積」、三つ目は、敵の輸送部隊を焼く「火輜」、四つ目は、倉庫を焼く「火庫」、五つ目は、桟道や橋を焼く「火隧(つい)」である」と。

火攻めを成功させるためには、まず相応の要因を整えておく必要があります。その要因は、予め準備しておかなければなりません。
火を放つには丁度良い時節

もっとみる
用間篇 第十二(新解釈/竹簡孫子)

用間篇 第十二(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「およそ十万人規模の軍隊を編成し、千里の彼方に派兵するとなれば、国民の家計や政府の財政は、一日に千金もの戦費を負担しなければならず、国民は国内外で慌ただしく働き、物資の輸送に駆り出されて疲弊し、耕作に専念できない農家の数が七〇万戸にもなってしまう。このように戦争とは、大変な戦時生活を何年にもおよんで継続して、たった一日の決戦で勝敗を争うのである。そうであるのに間諜に爵禄や百

もっとみる
九地篇 第十一(新解釈/竹簡孫子)

九地篇 第十一(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「地形とは、軍事行動において危機を好機に変えるための助けになる、と。だから用兵方法には、「散地」、「軽地」、「争地」、「交地」、「衢(く)地」、「重地」、「泛地(はんち)」、「囲地」、「死地」の九種類の地形がある」と。

諸侯が自分の領土内で戦う場所を「散地」とし、
敵国の領土に侵入しても奥深くでない場所を「軽地」とし、
占拠すれば自軍にも敵軍にも利益がある場所を「争地」と

もっとみる
行軍篇 第九(新解釈/竹簡孫子)

行軍篇 第九(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「おおよそ行軍中の移動経路や野営する場所、敵情を偵察する方法において、山岳を越えるには谷沿いに進み、有利な地点を見つけて高所を占拠する。戦う時は、高地より攻め降りるようにして、自軍より高地にいる敵に攻め上がってはいけない。これは山岳地帯における行軍法である」と。
「河川を渡る場合は、河川を渡り終えたら必ずその河川から遠ざかり、敵軍が河川を渡ってきたら、その中に入って迎撃せず

もっとみる
軍争篇 第七(新解釈/竹簡孫子)

軍争篇 第七(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「およそ用兵において、将軍が君主より出撃命令を受けてから、軍隊を編成し兵士を招集してから、敵軍と対陣して宿営するまでの間で、いかに相手よりも早く戦場に到達するという「軍争」(主導権争い)ほど難しいことはない」と。

「軍争」(主導権争い)の難しさは、遠回りの道を直線に、つまり最短経路に変えて、憂いごとを利益に転ずることにあります。だから一見すると遠回りを選択しながら、敵軍を

もっとみる
虚実篇 第六(新解釈/竹簡孫子)

虚実篇 第六(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「敵よりも早く戦場に到着して敵を待ち構える者は元気であるが、後から戦場に到着して戦闘に向かう者は疲弊する」と。そういう訳では上手に戦う者は、相手を自分の思うように動かすことができるが、反対に相手に動かされることがありません。

例えば、敵軍に来て欲しい所に自ら進んで来させることができるのは、その地に来ることによって利益が得られるように仕向けるからです。逆に敵軍が我が方に来な

もっとみる
勢篇 第五(新解釈/竹簡孫子)

勢篇 第五(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「大人数を少人数のように統率するのは、「部隊編成の術」が巧みだからであり。さらに大人数を少人数のように自由自在に動かして戦えるのは、「用兵術や布陣の術」が巧みだからである」と。「そして全軍が、何度も敵の攻撃を受けて敗北することがないのは、「奇正の術」が巧みだからであり、兵力を戦場に投下して、石で卵を潰すように敵を撃破するのは、「虚実の術」が巧みだからである」と。

およそ戦

もっとみる
形篇 第四(新解釈/竹簡孫子)

形篇 第四(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「昔の戦上手の者は、まずこちらが負けない体勢を作り上げてから、敵が体勢を崩して容易に撃破できる状況になるのを待った」と。
 負けない体勢は自己の範疇ですが、敵を撃破することは相手の範疇です。
 したがって戦上手の者は、自軍が絶対に負けない体勢を作り上げることはできても、絶対に勝てる状況を自己の努力で作り出すことができないとするのです。それゆえに昔から「勝利の理屈はわかっても

もっとみる
謀攻篇 第三(新解釈/竹簡孫子)

謀攻篇 第三(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
 孫子は言う。「おおよそ用兵の原則は、敵国を傷つけることなく降伏させるのが最上の手段であり、敵国を滅亡させるのは次善の手段であると。同じように敵の「軍」(一万二千五百人)を傷つけることなく降伏させるのがより良い手段であり、敵の「軍」を撃破するのは次善の手段であると。同じように敵の「旅」(五百人)を傷つけることなく降伏させることはより良い手段であり、敵の「旅」を撃破するのは次善の手段であ

もっとみる
作戦篇 第二(新解釈/竹簡孫子)

作戦篇 第二(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「用兵の原則として、戦車千台、輜重(しちょう)車千台、武装した兵士十万人を編成して、千里の彼方にまで遠征し、食糧を運搬しようとすれば、国内外の経費、外交上の経費、漆(うるし)や膠(にかわ)などの武器や装備の材料、兵士に支給した戦車や装備など、一日に千金を費やして、はじめて十万の軍隊を動かすことができるのである」と。

だから戦争ともなれば、たとえ勝利を収めても長期戦によって

もっとみる
計篇 第一(新解釈/竹簡孫子)

計篇 第一(新解釈/竹簡孫子)

【現代訳】
孫子は言う。「軍事は国の命運を分ける重大事である」と。
彼我の「死地と生地」を決し、国家の「存続と滅亡」を司る根本であるから、十分に明察しなければならない。
そこで自国と敵国の「存亡」を見極めて整えるのに「五事」(根本事項)を使い、彼我の「死生」を作り出すために「七計」(比較・検討事項)を使い、その優劣や実情を求めるのです。

「五事」とは、「道」、「天」、「地」、「将」、「法」の五つ

もっとみる