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新しい文化の出現に立ち会うこと -劇団ノーミーツによるオンライン演劇-

ものすごいものを、観ました。

このすごい体験を、どうしたら「すごい」ではない言葉にして語ればいいのか、1日考えてしまいました。

今日は、5月24日(日)21:00~配信された、劇団ノーミーツによる「門外不出モラトリアム」というオンライン演劇について書いてみます。
(再演は決まっていませんが、今後再演しても楽しめるよう、ネタバレなしで書いていきます)

劇団ノーミーツとは

私が劇団ノーミーツを知ったのは、この動画でした。

ついつい他の動画も見てしまう…笑

こちらを演じているメンバーの皆さんが、劇団ノーミーツです。
2020年4月9日という、「緊急事態宣言」や「外出自粛」などの言葉が飛び交い始めた時期に旗揚げした劇団です。

演劇という一見「対面で演じてこそ」を大事にする(と思われる)領域で、「今やれること、やりたいことをやろう」とするまなざしや、「no meetsを守りながら、NO密で濃密なひとときを。」というキャッチコピー、ロゴデザインに心惹かれました。

オンライン演劇とは

その名の通り、オンラインを活用した演劇です。
外出自粛によりいろいろな公演が中止となる中、いくつかの劇団がオンラインで演劇(リアルタイム/録画撮影問わず)を配信し始めています。
ツールとしては、zoomがよく使われている印象です。

私がそれに近しいものに初めて出会ったのは、三谷幸喜さんの「12人の優しい日本人」読み合わせ会でした。

カメラワークや画面の切り替えタイミングなど、とにかく驚きの連続で、「会議/ワークショップツールだと思っていたzoomに、こんな使い方の可能性があったのか…!」と、素直に衝撃を受けました。

「門外不出モラトリアム」は、何がそんなに「すごい」のか


そんな劇団ノーミーツさんがオンライン演劇を公演するとのことで、WEBサイトをチェック。

もしもこの生活が
あと4年続いたら―

こんな問いから始まる、「門外不出モラトリアム」。
さっそくチケットを買って、観覧しました。

YouTubeで見ていた動画から勝手に想像し、「門外不出モラトリアムって、ライトな内容なのかな」と想像していたのですが、いい意味で裏切られて。

すごい、すごい!…すごい。

その、「すごい」と思った3つの点を、書き出してみます。


①「スクショ・SNSアップOK」から、共創と新たな関係性が生まれる

スクリーンショットがすべてOK、さらにはSNSに載せるのもOK。
通常の演劇ならば、「スマホは電源OFFで…」となるところ、その真逆を行っています。

最後に主宰の方が”SNSの情報も見ながら、劇をブラッシュアップさせていった”という旨のコメントがありましたが、観覧者と劇団で「共に演劇を創っていく」という可能性を感じました。

投稿したツイートは、役者さんご本人が返信してくださることも。

無題

観覧者と役者さんとの関係づくりにも、変化の兆しを感じました。


②友人たちと、解釈や感情を重ね合わせなら観劇できる

私は友人たちと一緒(もちろんリモート)に、同じ回の公演を観ました。
iPadで劇を観つつ、スマホで友人たちと、互いの注目ポイントをチャットに書き込みながら観劇。

すごい熱量でチャットしていました

自分が観ていなかった視点も共有でき、より楽しむことができました。


③内容が今、とても共感できる

zoom機能を上手く使うことや、練りに練られた演出(芸が細かい…!)も素晴らしかったのですが、とにかく内容がとても共感できるものでした。

みんなが家から出なくなって4年。
入学からフルリモートの
キャンパスライフを送った私は、
実感の湧かない卒業を間近に控えていた。

もし、もう一度、
家から出られなくなったあの日からやり直せたら、
あのささやかな恋も、実ったのだろうか。
あいつがいなくなることも、なかったのだろうか。
たとえバーチャルでも、これが私たちの青春。
だから、何度でも繰り返す。
何年この時代に生きることになっても。
この部屋から、未来を変える。

収束しない事態と、
収束する運命に逆らう物語。  -公式サイトより引用


今だから、書かれた物語。
今だから、私たちに響く物語。

もはや観てるのか、この世界を一緒に体験してるのか、境界線がない状態でした。


私たちは、新しい文化の出現に立ち会っている

観終わった後、友人たちと「これはイノベーションだわ…」と話をしました。

外出自粛・公演中止により演劇は厳しい状況にあるけれど、この状況をアイデアの制約として捉え、新しいものを生み出していく。

zoom/オンラインという特性を鑑み、演劇をデジタルでアップデートしていく。

「この状況下でもエンターテイメントを届けたい」という熱量と、今の環境に適応しながら変化していっている様を見て、「私たちは、新しい文化の出現に立ち会っているのでは…」と思わざるを得ませんでした。

そうしてもう一つの注目は観覧者数。
4回の公演で、のべ約3200人。
自分がよく通っていた渋谷のBunkamuraシアターコクーンでさえ、747席。
席、足りません…。

おそらくこの中に、「初めて演劇を観た」という人もいたんじゃないかと思います。すそ野が広がって、演劇って面白いと思ってくれる人が増えたら、元演劇部の自分としても、とても嬉しいです。

最後に

役者の皆さんの言葉一つ一つが意味深く、心がキュッと切なくなる、それでいて明日も頑張ろうと思える作品でした。

一回もお会いしたことないし、全部バーチャルだけれど、この演劇が楽しかったと思ったことは本当。

友人たちとチャットしながら作った思い出は、バーチャルじゃない。

未来はみんなの行動の集積によって決定されるから、私は今日もnoteを書いています。

納得のいく明日が、選べますように。

次回作も、楽しみにしています。

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