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工芸の「伝統」と「ビジネス」のバランス

公認会計士の知人から9月開催のイベント登壇の依頼を年始に受けました。今回のnoteでは、登壇内容”工芸の「伝統」と「ビジネス」”というテーマの抜粋を書いてみたいと思います。

その前に、お話させていただいた団体のご紹介。

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企業のプロジェクトマネジメントに関わる方々が学んだり、情報発信する協会という理解です。かなりお堅そうな団体なので、つとまるか少し不安はありましたが何しろテーマは工芸について考え伝えて欲しいとのことでしたので、準備を進めていました。

夏前にコロナ影響で毎年開催のシンポジウムスタイルが現実的に開催できず、オンライン録画になりました。おかげで予定よりも数ヶ月早く話す内容をまとめないといけない状況となりました。

講演テーマ
工芸の「伝統」と「ビジネス」のバランス
この二者のバランスを発展にシフトチェンジするための方法を考える

詳細はこのURLの【FI-1】の時間枠です。

では、内容をメモランダムにまとめて記載します。

テーマと概要

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いろいろな視点はあるかと思いますが、工芸品製造販売はもちろんビジネスです。消費者がいて発展し、長きに渡って続いた工法、技術も使う方がいて初めて磨かれていきます。

概要は以下の通り。「現状と変化の兆し」を考えてみました。

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その前に、日本工芸株式会社が取り組んでいるECやその他のビジネス活動についてもご紹介させていただきました。その多くは以下の記事「Shopify meetupで話した5つのこと。」で記載しています。

追加内容だけ以下に。

当社が行っているサポート事業についての実例を記載しています。

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こちらは、EC化サポート事例のうちいくつか。「私が工芸の会社を興したわけ/日本工芸(株)」でもまとめましたが、工芸メーカー、工房のEC化まだまだチャンスがあると思います。

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こちらは展示会などでの取り組みについて。ECでの販売のみならず、できる限りの機会を捉えて商品が流通する仕掛けにトライしています。

小泉大臣来所のfacebook記載「昨日、新宿御苑インフォメーションセンターがようやくリニューアルオープンしました(3月末からスライド)。」


伝統的工芸品の概況

いくつかのまとまった記事から抜粋させていただきながら、自身の課題を述べました。まず、伝統的工芸品と伝統工芸などの名称の違いなどの認識を再掲。

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資料ソースは以下です。よく整理されています。
株式会社日本政策投資銀行 地域企画部 株式会社日本経済研究所 地域本部 地域伝統ものづくり産業の活性化調査 <概要版>

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よく出される数字ですが、伝統的工芸品はピーク時の5分の1。当該資料は四季の美、伝統工芸品とは?から。

参考:「四季の美」さんと2020年年頭に共催で工芸体験イベントを開催。今後何度か企画していこう!となっていましたが、コロナ課題で現時点止まっています。。早く開催したいものです。

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伝統工芸士の総数は10年以上前から漸次低下しているが、女性の職人は増加し続けている。

出典:Mitsubishi UFJ Research and Consulting
伝統的工芸品産業の自立化に 向けたガイドブック 【第2版】(平成29年2月)

これらをもとに考察をまとめました。

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特定のレイヤーの課題ではなく、長い時間かけて創り上げられた商流や商習慣で変化が難しかったのではないかと日々のビジネス活動でも感じています。


変化の兆し:point

主観的ではあるが変化の兆しをまとめてみました。全国の産地に伺ったり、お取引先様との会話から得た内容をまとめました。

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それぞれ少しづつ説明を追加してみようと思いますが、いずれにしても「新しい方法にチャレンジ」という共通点はあります。


変化の兆し:異業種コラボ

伝統工芸x○○、これらは枚挙にいとまがないです。当社も現在あるゲームとのコラボ品の提案を依頼され工芸品のどんな素材で実現可能か討議を進めています。

これらの工程からも新規ファンの取り込みや技術の進化に繋がるのだろうと感じています。

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以前、コラボで世界が注目。日本の伝統工芸品としてブログをまとめています。長いですがよかったら読んでみてください。

[ゲーム × 伝統工芸]独特の世界感を再現
[アニメ × 伝統工芸]その精巧さが共通点
[スタバ × 伝統工芸]地域限定の注目アイテム
[ファッション × 伝統工芸]あのブランドも


変化の兆し:製造工程、体験

写真は高岡市の能作さんです。新工場ができた際に、日本工芸産地協会も立ち上がりその第一回会合に行った際の写真です。このように製造工程を拝見することができ、理解を深めファンになっていくのかもしれません。

工芸品はより理解を深めたい、というユーザーと親和性が高いのだと思います。価格重視ではなく意味重視の。

その他でもあちこちで工房で製作体験できたりする場もあります。これらは旅行コンテンツとしても新規顧客開拓にも一助となっています。

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第1回 産地カンファレンス2017 in 高岡 日本工芸産地協会、能作社長の基調講演メモ→能作の取り組み”守る”伝統から”攻める”伝統へ→できない、というのではなく”できるように考える”習慣。

変化の兆し:海外への機会

包丁は欧米のレストランシェフがこぞって日本製を買い求めていますし、カラフルな南部鉄器や曲げわっぱはヨーロッパで人気が高いです。決してラッキーではなく仕掛けて取り組んだ産地・メーカーの方がいたことで現時点での新規ニーズを掘り起こせたはずです。

今後、特定の地域で日本のある工芸品が火がつくかも知れません、これらをメーカーさんとともに探っていきたいと思っています。

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変化の兆し:自社EC

SNSで集客して自社ECで販売を行う、成立条件は諸々ありますがこれが最も効率的な方法。コロナ禍でこの状況が加速したのメーカーもあったかもしれません。

お取引のあるメーカーさんはその顕著な事例でした。

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冷感グラスがバズってテレビでも特集されるほど人気がでました!年頭に社長さんからいいので来たので販売をぜひ!と言われ準備をしているところでいきなり一晩で動画が600万再生されspike。自社サイトも連続的に売り切れですごい勢いでした。

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当社も南部鉄器の数品を販売させていただいている及富さん。こちらはアマビエがツイッターでバズりそこから開発秘話や呟きが注目され続けています。ちょうど販売直前にオンラインミーティングさせいただいた際に面白いな、と思いつつ仕入れに至らなかったことを悔いていますwでも何しろ発信し続け自社にて販売する成功秘話は伺ってみたいと思っています。

SNSは工芸と親和性が高いと常々感じています。こだわりや歴史、背景、製造シーンなどどんどん発信することで、関心層が受け止め拡散してくれる素地があると思っています。


変化の兆し:地域メンバー、グループ

地域のつながりで共同イベント、展示会を実施されているユニット、グループがあります。お互いのファン同士が違う製品を知ることになるかもしれませんし、何しろ発信力は倍加していくのだと思います。

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東海地域の女性職人グループ 凛九 
京都を拠点に、伝統工芸を受け継ぐ6名の活動、「GO ON」


まとめ

以上が、現状と変化の兆しとしてお話させていただいた骨子です。

適者生存であるのは、どの産業でも変わらず、正解を初めからわかっている企業はありません。数ある方法の中で自社が取り組むことができ、”強み”が強化される方法にトライしていくのがいいのだと数々の事例を見て感じています。

H&Mを抜き、世界最大のアパレル企業にあと一歩となったファーストリテイル柳井さんも書籍で「一勝九敗」といっています。まさにトライすることの重要性を記載されています。

20代の頃、起業家講義で招聘し何度かお話を伺ったことがあります。”何しろ経営のコツはつぶさないことです”と静かに語られていたことを今でも覚えています。

工芸で生き残っているメーカーはそれをすでに成し遂げている企業でもあるわけです。そのベースにリスペクトしつつ、新しい時代の変化をご一緒させていただきたいと思っています



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