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駒込倉庫(東京都北区・駒込駅)

駒込駅の東口、商店街の近くにあるのが駒込倉庫というギャラリー。現代アートを中心とした展示を行なっている。

今回は「(((((,」と題した展覧会を行なっている。6人のアーティストによる展示で、この変わったタイトルは「カッコを閉じない=開かれた、結論を出さない」という意味を持っており、そういったアプローチに即した作品を展示している。

2階建てになっており、1階ではパク・サンヒョン、大橋鉄郎、檜皮一彦の作品、2階は倉敷安耶、うらあやか、アリウェンの作品がそれぞれ展示されている。

入口で迎えるのはパク・サンヒョンによるインスタレーション。韓国出身であり自身がクィア当事者である彼の中で目を引いたのは双子噴水と名付けられた作品。片方は吹き上がり、片方はつんのめっている。組み立て図が貼られており、複雑なものでも分解され他の場所へ直ぐに移動できるものである、と解釈できそう。韓国出身の異邦人でありクィア当事者である作者のアイデンティティに立ち返ったものだと感じる。

大橋鉄郎の作品は女性をモデルにした絵画。写真と絵画の中間のような絶妙なリアルさを醸したタッチでインクジェットプリントで描かれている。キャンバスではなくてキャンバス大の安物の紙に描かれている。絵の前には化粧品が並べられているが、これはすべてプリンターで印刷したペーパークラフト。本物と見紛うような作品に皮肉を感じ取る。

さらに奥には檜皮一彦によるインスタレーション。車椅子や人形、などを配している。自身の身体欠損とそれに伴う車椅子の生活が背景にあることは想像に難くない。映像では上半身のみの映像と下半身のみの映像を一つのモニターの中で繋げ、その違和感(胴体が無いように見える)を植え付けることに成功している。

2階へ上がるとまずはアリウェンの作品。チリ出身のノンバイナリーのトランス女性で、「にきょうくん」という少年を被写体にして撮られた73枚の写真をプロジェクションして投射しながら、そこに自身の詩を織り交ぜている。この作品のみ被写体を配慮して撮影はできない。

モニターが2台ならべられている作品は、うらあやかによるもの。1台のモニターでは犬の動きを追いかけている。もう1台ではその犬の動きを追いかけている人物を更に後ろから追いかけており、他者の行為に対してのミラーリングとして捉えられる作品。生と死に関して本人の思想を盛り込んだドローイングもある。

最後は倉敷安耶による鏡を使った印象的なインスタレーションで、合わせ鏡の中に幽霊のような人物像を描き、その中に映りこむことで無限に続く回廊に存在する確定する自己と曖昧な生命の投射を行なっている。また「私たちは家族」と名付けられた作品は三面鏡の前に食卓を置き、そこに座ると大量の自分が映り込むことで「家族」を意識させる興味深い作品。

平日というのもあって見学者はゼロだったが、いずれも面白い作品。こちらはトイレは無し。


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