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慶應義塾大学慶應義塾史展示館〜ミュージアムコモンズ(東京都港区・三田駅)

・慶應義塾大学慶應義塾史展示館

福沢諭吉が設立した慶應義塾大学。以前に訪れた早稲田大学と並ぶ、私立大学で最も歴史のある大学である。3番目に歴史のある國學院大学と明治大学も攻略済なので、やはりここは押さえておかなくてはと訪問。他の大学とは違いここは平日のみの開館となっているため訪問には注意が必要。

場所的には東門から行くのが最も近い。ただ、慶應義塾=三田といえばラーメン二郎の三田本店である。空腹では無かったので店に入るつもりは無かったものの、これは挨拶しておかなくてはという固い意志の元、正門へと足を運ぶ。すると、なんと行列がないという信じられない状態。ちょうど夜の営業前だったのもあるのかもしれないけれど、なんということだろう。これなら腹を空かせておけばよかった。タイミングを間違えた。

気をとりなおして訪れるのは正門からだとだいぶ奥の方にある図書館旧館。ここは現在では慶應義塾史展示館として創立者の福澤諭吉に関する事項を展示している。なんといっても設立から100年以上の歴史を持つ大学である。戦争の影響もあり当時の建物がほとんど消失する中で、ほぼ唯一この図書館旧館は建築当時の姿を同じ場所で残している建物である。

正面を入ると重厚な内部に息を飲まれる。正面のステンドグラスがすでに美しい光彩を放っている。ラテン語で「ペンは剣よりも強し」との文字も刻まれており、武士の時代を生きぬいてきた福澤諭吉の精神性を体現しているかのようである。

展示室は2階にある。1フロアのみで漢字の回の字のような構成になっている。順路通りに進むことで福澤諭吉の生涯をたどりながら慶應義塾設立に至るまでの歴史がわかる。福澤諭吉が生きたのはまさに明治維新の真っ只中。海外に3回ほど渡航したことで勉学の必要性を痛感して塾を開いたことが転機となった。

慶應義塾は早稲田大学とともに日本における最初の私立大学だけれど、その前身として蘭学塾がルーツになっており、塾生、と呼ぶのはその頃からの名残り。今の三田に転居したのは明治4年、今から150年くらい前のこと。そこから教育は発展し全国津々浦々、色々な場所に福澤の薫陶を受けた学校がある。

塾訓としては「独立自尊」である、まさにラーメン二郎のごとくである。言い得て妙である。うんうん。

有名な出身者は数多あるけれど、中でも注目すべきは北里柴三郎だろう。日本近代医学の父であり、新紙幣に肖像が採用された人物。森鴎外らの間違った意見が支配的だった脚気の原因を真に突き止めたゆえに当時の医学界から嫌われた当時、それを手助けして研究所を設立して支援したのが福澤諭吉だった。そのおかげて多くの医学の発展に寄与したのである。慶應に関わりのある人物がこれで二人、紙幣になったわけである。こうなると早稲田の大隈重信も、と行きたいところだが一昔前ならともかく、昨今の政治家不信の中で政治家である大隈重信を紙幣にするのは難しいかもしれない。おそらく次は岩崎弥太郎と踏んでいる。いや、そもそも電子マネーが増える中で紙幣の需要は確実に減っているだろうし、はたして次の紙幣なんていつになることやら。


・ミュージアムコモンズ

もう一つのミュージアムであるミュージアムコモンズは、展示館を出て左、いわゆる東館を出て三田通り沿いにある。普通に歩いていたら見逃すかもしれない、これといった特徴のない、ちょっとしたオシャレなオフィス、といった風情の建物である。

今回は寅年というのもあって「虎の棲む空き地」と称した企画展を開催。所蔵品の中から虎に関係するものを集めて展示している。エレベータ上がって3階が展示室。中に入るとガラスケースの中に大きな銅鏡が目に飛び込んでくる。四神十二支文鏡という唐時代の鏡である。丁寧に「ここに虎!」みたいな矢印がしてある。十二支が順序で並んでいないので確かに一見するとどれが虎だか区別がつかない。緑釉尊という後漢時代の陶器も、実際どこに虎がいるのかわからなかったりする。暇そうにしていたスタッフの方(おそらく学生)に尋ねてみるが、詳しくはわからない様子。ふむ。

個人的に声を上げてしまったのは、土方巽による舞踏譜スクリプトシートというもの。暗黒舞踏の名手・土方巽の舞踏に関するスクリプトがある、というのが驚いた。全て即興、あるいは頭の中に構図があるものだと思っていたのが、しっかりとした構成を組み立てた上で舞踏をしている、ということに、自分の勉強不足を恥じるのであった。それにしてもこの資料を知ることができただけでもここにきた甲斐があったというもの。数人のスタッフの接遇レベルにやや辟易していた今回だったものの、これだけで充分なお釣りがくる展覧会であった。

大学令で最初に認可された私立大学で都内に博物館のある大学は残すところ日本大学、法政大学のみとなった。もちろん他にも魅力的な大学ミュージアムは多くあるので機会を持って攻略したい。


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