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平櫛田中彫刻美術館(東京都小平市・一橋学園駅)

平櫛田中。たなかではなくでんちゅう、でお馴染みの平櫛田中の美術館が小平市にある。生活圏からはかけ離れておりなかなか遠い場所である。当然ながら初めて降りる駅でもある。駅から歩いて15分くらい離れた、玉川上水沿いに静かに佇んでいる。

彫刻家として国立劇場にある『鏡獅子』が代表作として知られる平櫛田中が晩年、亡くなるまでの10年間を過ごした地である小平。邸宅の敷地に建てられた美術館は地上2階、地下1階の割と大きな美術館になっている。個人の美術館としてはかなり大きな部類に入るのではないだろうか。今回は「宗教美術の世界」として、道教や仏教に関連した作品が多く展示されている。

入口から既に『転生』という仏像がお目見え。口から人の形をした火焔らしきものを吐いていて、巨大な像であるとともにその雰囲気に圧倒される。1階の第一展示室では張果仙人、釣隠など中国を扱った作品が多く並んでいる。隣の第二展示室へ行けば今度は如意輪観音像、良寛上人など仏教に関連する人物を中心とした展示になっている。鏡獅子もここに紹介されている。

階段を上がって2階、第三展示室へ行けばここでは一転して掛け軸を中心とした書画を展示している。彫刻家というイメージの強かった平櫛田中だけれど、揮毫を残すほどの腕前だった。ここでは本人が愛用していた香炉や旅行用のお守りなどの他、工芸家による仏具なども合わせて展示されている。隣接する第四展示室では師匠にあたる岡倉天心像や、南無観世音菩薩像が展示されている。

階段を降りて地下階へ。地下展示室では平櫛田中の制作の技法を知ることができる。興味深いのが作品はまず粘土で原型を作り、石膏で型取りしてそこから星取り法という、各ポイントごとに点を穿ってそれを参考にして木彫りを行うという方法をとっていること。星取り機という器具も残されているほか、石膏にはポイントがたくさんついているのが面白い。『烏有先生』といった田中の代表作も展示されている他、『鏡獅子』の試作や、その型取りの経緯も紹介されている。

今年で生誕150周年になるという平櫛田中。そんな昔の人だったのかと思ったら亡くなったのが107歳だと知ってさらに驚き(当時の長寿日本一)。美術館に隣接している邸宅の庭には新たな制作のために入手した材木が残されている。こちらの邸宅は九十八叟院という名前で、98歳で作られたもの。まだまだここから制作をして行こうとしていたという。107歳の死の直前までまだまだ生きようとしていたというのだからそのバイタリティたるや、という感じである。トイレは洋式。

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