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泉屋博古館(東京都港区・六本木一丁目駅 板谷波山展)

住友グループ関連の美術館である泉屋博古館。関西を拠点にしている住友が建てている京都の泉屋博古館が東京における美術館として展開しているのが泉屋博古館東京で、こちらでは国内でも有数の陶芸家である板谷波山の作品を一堂に介した企画展を開催している。生誕150周年の節目となった2022年には各地で板谷波山の特集が組まれている。

経験上、陶芸に関する企画展が行われると割とご年配の方が訪れていることが多い。今回の展覧会もその例に漏れず、見学者の年齢層は割と高め、しかも順路をきちんと守って参加される方が多く、人によって鑑賞するペースが異なるため展示品によっては順番待ちが生じているものもある。自分はせっかちな性格なので順番通りではなく空いているものをその都度に見て行く形式で今回は見学。

紋様から彩色まで全てが鮮やか

最初の展示室では板谷波山が陶芸家として成り立つまでの道のりを若い頃から後年までのそれぞれの特徴を見せる作品を展示しながら紹介している。東京美術学校(現在の東京藝術大学)に入学した波山はもともと彫刻家として岡倉天心や高村光雲らに師事して作品を手がけており、学生時代につくった『元禄美人』がここでは紹介されている。陶芸家として志すようになったのは卒業して石川県の工業学校に教諭として赴任してから。彫刻科が廃止され陶磁科となったことによって陶芸を教えると同時に自身も打ち込み、陶芸で身を立てて行こうと思うようになる。

作品が認められるまで苦労の連続だった

現在の東京都北区に引っ越してから粗末な家と窯場を作って借金苦に喘ぎながらも決して自身の作品に妥協せず、そのために妻のまる夫人は相当な苦労をしたという。その日の食事にも事欠く有様だったにも関わらず納得できない作品は割ってしまうので金に換えることもできず、展示室ではその大量の陶片の一部が残されている。まる夫人もかつては日本画を描いており、まるが絵付をした波山の作品も紹介されている。

板谷波山の代表的な作風に葆光彩磁と呼ばれる技法がある。陶磁器の表面を絵付をしたあとに釉薬をかけて艶消しをし、表面が淡い発色をするようにつくられたもので、板谷波山が発明した独自の技法。一色を塗るたびに素焼きして顔料を焼き付けるという非常に手間のかかるこの作風により一躍スターダムへと駆け上がった波山。多くの人が惚れ込み、住友家や出光家がコレクションしたという。収蔵品として重要文化財に指定されている『葆光彩磁珍果文花瓶』も展示されている。

左のものが『葆光彩磁珍果文花瓶』

四つある展示室には大きな花瓶の他に晩年に手掛けた茶器などもあり、一つの作風に固執せずにいろいろな変化を求めた板谷波山の作品を味わうのにとっておきの展覧会といえる。トイレはウォシュレット式。

その技巧にひたすら舌を巻くのです


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